今月8日、番組で、「スマホの普及で国土地理院が発行する紙の地図の販売数が、最盛期の20分の1に激減している」というニュースを取り上げました。いまや存在意義が問われるような紙地図について、6月26日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
まずは渋谷で、紙の地図を使った経験はあるか?若者に実態調査してみました。
★街の若者は「紙の地図より、断然スマホ!」
- ●「使った事はある。地元で細かい所に行く時は、グーグルとかに逆に載ってなくて、紙の方が詳しく書いてあるので。だけど最近は携帯。」
- ●「小学生の時は車に乗ってる地図を使ってた。でも、紙の地図は更新されないが、スマホ地図は勝手に更新されて便利。」
- ●「駅の地図は見るけど、よく分からないので結局人に聞く。スマホで『西に行って』と言われても分からない。」
- ●「紙は使った事がない。なんか地図をひっくり返しても分からなくなって、全部スマホです。」
皆さんさすがに、紙の地図の存在は知っていました。ただ頼りにするのはスマホ。中には、スマホの地図でさえ見方が分からないので、ひたすら人に聞いて目的地を目指すという超アナログ人間もいました(実は私も今の仕事を始めてから紙の地図の見方を教わったのですが、最初は上手く読めず、地図をクルクル回しながらルートを追っていました…)。
★地図が売れない時代に「地図扇子」大人気!
いずれにせよ現状としては、紙地図の存在意義は危ういようです。そうした中、国土地理院の紙の地図の販売を受託する日本地図センターが、地図を身近に感じてもらおうと開発した“ある商品”が注目を集めているようです。日本地図センターの大嶋浩さんのお話です。
- 日本地図センターの大嶋浩さん
- 「本来は廃棄する地図をリサイクルして、地図の扇子を作った。例えば東京だと新宿や渋谷が入っているど真ん中の部分を使っている。今まで廃棄分はメモ用紙として販売していたが、何となく扇子を作ってみたら、あっという間に完売。例外中の例外ですね。」
日本地図センターが開発したのは、地形図をリサイクルして作った地図扇子。

穂高岳(多色刷り)の地図扇子。元が地形図なので、裏面は無地。1本756円(税込)で販売し、1週間ほどで品切れとなった大人気商品です。街で扇いでいたら、格好良いかも?!
先月、「東京西南部」「穂高岳」「蔵王」など9種類の地形図を使った扇子を1,000本販売したところ、品切れになるなど大人気だったそうなんです。地図扇子の紙の部分はドーナツを半分に切ったような形をしているため、限られた中に地図の見所が収まるように工夫されています。
★地図扇子は地図のムダ遣いではない!
また、今回の扇子の開発は、単に「紙の地図が売れないから扇子にしてしまえ!」という訳ではないようです。再び、大嶋さんのお話です。
- 日本地図センターの大嶋浩さん
- 「最新の地形を売っている組織なので、今日新しい地形図が出たら、昨日までの物は古くなり、それを売ることは出来なくなる。地図が更新されないと古い地図は出てこない訳で、古い物にたまたま良い絵があって作った。最初から良い景色だから作ろうという事じゃない。余談だが、問い合わせの中には、『どうして何々県が無いの?』と言われることもあるが、廃棄される地図が出ないとご希望に添えない。」
扇子に使われているのは「25,000分の1」の地形図なんですが、このサイズの地形図は全国で4,400面あり、月に約30は更新されるそうです。それを何とか再利用できないかと考えた上で誕生したのが、扇子だったそうなんです。

全部で4,400面ある「25,000分の1」地形図の索引図。ちなみに地形図を探したい場合は、欲しい地域の【数字】を見つけて…

対象の【数字】ファイルから、目的の一枚を見つけます

赤坂近辺の地形図。このページは多色刷りで色鮮やかです(扇子にはなっていません)
★限りある旧地形図だからいつも限定品!
地図扇子の人気を受けて、6月26日から第2弾が販売されます。本数は、やはり限定1,000本。量産の難しさや今後の展望を、大嶋さんは教えてくれました。
- 日本地図センターの大嶋浩さん
- 「本当はこれだけ売れれば数千本~数万本作ればよかったが、地形図の紙を使わないと意味がない。あの丈夫な紙で。ほぼ同じカラーコピーが出来ても紙が駄目。第3弾をいつ作るかは決定していないが、目星は付けてる。言い方は悪いが全面畑じゃ面白くない。誰もが知っている所が理想だが、どれくらい余ったかという事もある。」
地図の世界に30年以上いる大嶋さんも驚くほどの売れ行きだったそうですが、廃棄される地図の中でも選りすぐりの部分を使用するため、大量生産は出来ません。ただ、元・地形図ならではの頑丈な紙質は扇子にもぴったりなようなので、紙地図に親しんでもらうためにも、今後の展開も検討中とのことでした。

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!