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Channel: 現場にアタック – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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その常識は間違い!体育館の床が剥がれて大怪我のリスク

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先日バレーボールの選手が練習中に、体育館の床が剥がれて大怪我をする事故がありました。でもどうしてこんなことになってしまったのか?取材をしてみたところ、体育館の床について、私たちが大きな誤解をしていることがわかりました。6月21日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。

まずは先日の事故の詳しい状況について、改めて、スポーツ庁・競技スポーツ課・専門官の成瀬幸宏さんに聞きました。

★30針の大事故!バレーのレシーブで床が皮膚を貫通

スポーツ庁・競技スポーツ課・専門官 成瀬幸宏さん
バレーボール男子のジュニア強化合宿に参加していた選手が、ナショナルトレーニングセンター2階の共用コートでボールを滑り込んで取りに行った際に、床板が剥がれて、約25~26センチの板が太ももの皮膚の下に貫通しました。スポーツ庁では、5月29日に事故防止対策の一層の推進をお願いした矢先にこのような事故が発生し、誠に残念に思っています。再発防止に向けて関係機関と協力し、適切に対応したいと考えています。
森本毅郎スタンバイ!

バレーボールのフライングレシーブ時の負傷(「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書」より)

この方は、約30針を縫い、全治1か月の見込みということです。

今回のように体育館の床が剥がれて怪我をする事例は、ここ10年で7件報告されており、内6件がバレーボール。レシーブで床を滑った時に床板が体に刺さり、中には木片が内蔵に達した例もあるそうです。スポーツ庁では、先月末、体育館での事故防止を全国の自治体等を通じて呼び掛けたばかりで、その矢先の出来事…。

★その常識は間違い!体育館の床のお手入れの誤解

一体なぜ、体育館の床が剥がれる事故が相次ぐのか。考えられる原因について、過去の事例を調査した、消費者庁・消費者安全課・事故調査室の小田直子さんに聞きました。

消費者庁・消費者安全課・事故調査室 小田直子さん
床板の不具合を生じさせた要因としては、木製床の使用に伴う劣化、水分の影響、異物や硬いものの影響などがあります。事故が発生した体育館のうち、現地調査を行った中では、水拭き、ワックスがけが行われていた体育館もありました。水拭きやワックスがけはしない方がいい。施工会社や業界団体の方で推奨されている維持管理の方法が十分に知られていないということかと思います。
森本毅郎スタンバイ!

体育館は、水拭き・ワックスがけはNGです(写真は、事故とは無関係のものです)

例えば、過去に起きたある事故の検証結果(「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書」)には、「事故が起きた体育館では、25年間にわたって、毎年、年2回の水拭き、洗浄とワックスがけが行われていた。床板の不具合により水分が木製の床に侵入しやすい状況下で洗浄や水拭きを行うことで、床板の反りや亀裂の発生を助長したと考えられる」と書かれています。木製の床は、水分が含まれると膨張し、乾燥すれば収縮するという特徴を持つため、水拭きは厳禁ということが分かります。

★体育館のワックスがけは怪我の元?

しかし、「ワックスもダメ」というのは、意外に思われる方も多いのではないでしょうか(私も昔、学校の先生が体育館のワックスがけをしていた記憶があります)。ではなんでワックスは駄目なのか?その理由を、体育館の床の施工業者などで構成される、一般社団法人フローリング協会の会長・森隆之さんに伺いました。

一般社団法人フローリング協会・会長 森隆之さん
ワックスは家のフローリングに使うのは良いんですけど、体育館はフローリングの上にウレタンのコーティングをしていて、そのコーティング自体で通常の競技が行える仕様になっています。そこに余計なものを塗られると、性能を失ってしまう。滑りやすくなったり、滑りにくくなったり、そういうことが出てきやすいんです。体育館ではワックスを使ってほしくないということを訴えてます。

体育館の床がピカピカしているのは、ワックスではなく、ウレタンのコーティングだったんですね。その上にワックスを塗ると一時的にツヤは出ますが、滑って転びやすくなるだけで、床の傷を防ぐ効果もない。さらに繰り返しワックスをかける場合は、古いワックスを剥がしてから塗る必要がありますので、水で洗う必要も出てきます。そうなると、結局、床が痛む、ということでした。

というわけで、体育館の床にワックスはNGなのですが、消費者庁が去年、全国の体育館に対して行った調査では、全体の40%以上の体育館がワックスがけを行っているようで、まだまだ「体育館の床にワックスはダメ」という認識は広まっていないということでした。

★床事故の原因はワックスだけではない

このワックスへの誤解が、事故の背景にあるのですが、ただ、今回事故が起きた「味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)」は、オリンピック選手の練習拠点にもなっているトップレベルの施設。そこがお手入れの仕方をしらなかったのか?

これも調べて見ると、今回のバレーボール選手が怪我をした施設では、水ぶき・ワックスがけは行っていなかったということで、こちらの、原因はまだ分かっていません。JSCなどによれば、一般的な体育館では床板がはがれるのを防ぐため、10年に1回、コーティング塗装するそうで、今回のナショナルトレーニングセンターでは出来てから10年目となる来年、コーティングする予定だったそうです。

一般の方ではなく代表レベルの激しい動きだったため、経年劣化が早かったのか?それとも何らかの形で水分が含まれ劣化が進んだのか、水ぶきとワックスがけをさけただけでは、防ぎきれない要因もあるようです。

★では体育館の床のお手入れはどうしたらいいのか?

こうなってくると、体育館の床のお手入れはどうしたらいいのか?少なくとも、水拭き・ワックスがけはダメだということは分かりましたが、今後、同じような事故を防ぐためには、どう手入れすれば良いのか。フローリング協会会長・森さんに聞きました。

一般社団法人フローリング協会・会長 森隆之さん
定期的にモップをかける際に、埃だけを除去するような清掃用のモップがあるので、それで毎日のメンテナンスをして下さい。例えば、ささくれがあると引っかかって分かるので、床面も一緒に見ながら清掃して頂きたい。尖ったものがあれば、除去しなきゃいけないので専門業者に話をしてもらいたいけど、全体的に悪くなった時には全部を変えて欲しい。耐用年数として大体15~20年。15年に1度位のフローリングの張替えをお勧めしてます。

施設を利用する前後にモップで床を「乾拭き」して、埃や砂を取り除くと長持ちするそうです。体育館の管理者には、床の傷みが酷くなる前の張り替えも求められます。過去に事故が起きた体育館では、施工から25年や30年経っているものもありました。

田中ひとみ

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!

 


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