先月から今月にかけて、大手の飲料メーカー各社があの手この手で自動販売機=自販機に力を入れ始めたんです。進化してきているというお話。5月18日(木)は、レポーター中矢邦子がTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で『進化する自販機』について取材報告しました。
★キンキンに冷えた飲料で若者を囲い込む!
まずは、アサヒ飲料の中島英晴さんのお話です。
- アサヒ飲料 中島英晴さん
- 「『強冷』という自販機の展開となっています。通常の自動販売機は『5℃』まで冷やせますが、強冷では『1℃』まで冷やせます。凍るギリギリの温度をご提供できたらな、ということと同じ商品でも温度の違いによって、味の感じられ方が違うことが分かったのでその新しい味を、自販機を通して提供したいという思いから自販機での展開となりました。」
アサヒ飲料では、「強冷自動販売機」をスタートしたんです。文字通り、ものすごく冷たい温度で保たれている自販機です。普通の自販機は5℃ですので、1℃って相当冷たいですよね。今年の夏は、猛暑という予報もあるので、強冷で勝負ということで新しく導入したんだそうです。
★LINEとコラボで若者を囲い込む!
続いて、もう一社!こちらはこんな方法を導入しました。キリンビバレッジバリューベンダーの葉山真人さんのお話です。
- キリンビバレッジバリューベンダー 葉山真人さん
- 「自販機で、『LINE』のインストールされたスマホを自販機にかざして飲料を購入すると、1回の購入に対して1ポイント。15ポイントで飲料と交換できるサービスを4月から始めました。その入手した特典チケットは、自分で使うこともできますし、LINEで友達に送って友達が使うことも出来ます。」
こちらは「タッチ(かざす)」して「ハピネス」になるので「Tappiness(タピネス)」という新自動販売機サービスを開始しました。自販機にスマホアプリのLINEを立ち上げたスマホをかざし、いつも通り飲み物を買うと・・・LINEのアプリ内に1ポイントが溜まる仕組みとなってます。15ポイント貯めると、次にこの自販機を利用するときに1本無料になります。この無料サービスがそのままLINEでお友達に送ることが出来るんですね。
★コンビニ派が9割!安い・近い・種類が多いが理由
・・・とあの手この手で2つのメーカーが自販機に力を入れているんですが、どうしてここまで自販機に力を入れてるのか。再び、キリンの葉山さんに伺いました。
- キリンビバレッジバリューベンダー 葉山真人さん
- 「正直10代の方は『戻る』というレベルよりは『初めて利用する』人が多いですね。なので、今まで利用してなかったけど、これからは利用してもらおうと。
そういう若者に利用していただきたくて、このようなものを開始しています。」
課題は「若い人」をどう自販機に誘導するか、ということでした。それでは、本当に10代の人たちは自販機に来ないのか、実態調査しました。みなさんに「飲み物を買うのはどこが多いか、聞きました。
- ●「自販機は使いますね。やっぱ手軽な感じがして・・・お店に入らないで買えるんで。レジとかで待ったりする必要がないので、すぐに済ませるなら自販機ですね。」
- ●「コンビニですかね。歩いててもコンビニ結構、短い距離で何軒かあったりするので。自販機は高いので、めったに買わないです・・・。」
- ●「普段は自販機使わないです。その場ですぐ飲みたいときは自動販売機ですけど、だいたいは食べ物と一緒に買うことが多いんで、スーパーとかですね。安いのが結構あるしって感じです。」
- ●「コンビニでよく買います。コンビニ見つけたら寄るみたいなのがあって。コンビニは用事がなくても入りたくなっちゃうんです。自販機は使わない、買ったことないです。コンビニの方がいろいろ安いじゃないですか。だから、コンビニ信者みたいな感じ…。」
- ●「コンビニでよく買います。大学の中にコンビニがあって、そこで買います。遠くに外出して、近くに店がないときとか、例えば『山』の近くで、コンビニがない時だったら自販機で買います。」
9割の人はコンビニ派!自販機使うは最初の1人だけでした。自販機を使わない理由は、主に「高い」とか「コンビニでおやつとかいろいろ買いたい」ですとか「コンビニが歩けばすぐあるところに存在するので、そこで買う」という声でした。実際に、昨日このインタビューをした渋谷駅周辺を回って調べたところ、駅の周辺は自販機の設置箇所が9ヶ所、コンビニなど安い飲み物が売っているドラッグストアなどは8ヶ所もあり、ほとんど自販機と同じ数でした。目の前に自販機とコンビニがあったら、若い方はコンビニを選ぶ方が多いのかもしれません。実は、私もあまり自販機は使わないで、やっぱり飲み物はコンビニ派…。コンビニ信者と言っていた方の気持ち、分かります。
★コンビニやドラッグストアなどの値下げ合戦に対抗!
・・・と、圧倒的に自販機利用者が少ないことが分かったんですが、ただ、飲み物が売れるという意味では自販機でもコンビニでも同じなのに、どうしてメーカーは自販機にこだわるんでしょうか。不思議に思ったので再び、アサヒ飲料の中島さんに聞きました。
- アサヒ飲料 中島英晴さん
- 「なにより自動販売機は『定価』で販売できるという大きな魅力があるからです。コンビニはいまキャンペーンとかで値下げがあって、主にドラッグストアとかスーパーの金額がかなり安いので、そことの競合もあります。やはり自動販売機で多くの商品を売っていきたいので新しいものを自販機で発信していきたいと思っております。」
自動販売機だと、ほぼ定価すべてメーカーの売上になるんです。消費者としては、どうしても安いものを求めていきがちですが、飲料メーカーからしてみれば、生き残るためには少しでも利益の出る自動販売機で頑張りたい、というのもわかります。そういう意味では、「LINE」や「温度設定」の各戦略がどう出るか、今後を左右する大きな分かれ目になるかもしれませんね。