収穫は秋以降ですが、5月中旬のこの時期、その新しい芽=新芽が出てくる農作物があります。それはレンコン!!例年、その新芽が、徳島県のある地域で、ミドリガメによって、かじられる被害が起きている、というのです。そこで・・・。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!今日5月17日(水)は、レポーター近堂かおりが『外来種のミドリガメとは、日光浴でもしながら気長にお付き合い。』をテーマに取材しました!
まずその被害が起きている、徳島県 JA大津松茂の前田康平さんのお話です。
★レンコンが食べられてしまうんです!
- 前田康平さん
- 「実際被害自体は、多く出てまして、大変は大変ですね。川に沿ってある水路から草とかにつかまって、レンコン田に入っていく。レンコンの新芽という出てきているところをかじられる。被害の面積が、大体5ヘクタールくらいとみている。その時は、原因がまだわからなかったんで、当初、かじられてる後があるぞってなって調査したら、亀じゃないかという話。水に浮いている亀もいるし、ひなたぼっこをしている亀もいる。ミドリガメは威嚇をしてきますね。それでよく動くんでね。爪も長いし。」
”ミドリガメ”と言われますが、正式名称は”ミシシッピアカミミガメ”と言って、もともとはペット用に輸入された外来種の亀。お祭りの時に屋台で「亀すくい」というのがありましたが、ミドリガメは小さい時は、500円玉くらいの大きさで、キレイなグリーンの可愛らしい!!でも、大きくなるとA4サイズのノートくらいの大きさになり、人を威嚇するなどよく動く。(しかも素早いみたいですよ。)2015年に緊急対策外来種に位置づけられ、国として数を減らしていく対象になっています。
★カニかごでカメを捕獲しています!!
前田さんの地域では、5ヘクタール=大体7万5千キロのレンコンがダメになった計算・・・これは大変ですよね。そこでこんな対策を打ちました。再び前田康平さんのお話です。
- 前田康平さん
- 「まず、水路に、捕獲、網状のカニカゴ=カニを取る用の籠を仕掛けて。それとあとは、各農家で90軒あるうちの5・6割は畑・田んぼにカゴを設置して頂いて、それをうちの農協で、集めて。合計で言ったら、今で平成24年から28年までで、約9千くらいは捕まえていますね。だいぶ密度は減ってきているんですけど、カメは。」
カニカゴは、実際に被害の出ている場所のレンコン農家さんのマストアイテムになっているそうで、大体1500円くらい。そこに餌を仕掛けて、カメを捕獲します。当初捕獲数2012年は、2800匹だったのが、去年は1200匹くらいに。カメの”密度”は減ってきており、レンコンの被害も小さくなってきているそうです。それにしてもまだ1000匹以上つかまるんですね、大変!この地域では、役所と農家さんが一丸となって、具体的な対策を打てていますが、ほかの地域ではどうなのでしょうか。ミドリガメは、全国的には、関東以西の平野部に多くいて、環境省の推計では、およそ790万匹野外にいる、と言われています。その全てを、かごにえさを入れて、捕獲したら回収して・・・というと、人手や費用がかかります。
★ミドリガメにもってこい!『日光浴わな』!!
そこでいま、人手や費用を省エネできる新しい捕獲方法が出てきています。どんなものか、ミドリガメの問題に取り組む、特定NPO法人生態工房の片岡友美さんにお聞きしました。
- 片岡友美さん
- 「ミドリガメが、日光浴をするという習性を利用して捕まえるワナになります。その名も『日光浴わな』です。形はシンプルなデザインでして、大体1メートル四方くらいの木の枠みたいなものを、カメがいる池や川に浮かべるだけ。その枠に金網のようなスロープをつけ、そこから上ってきます。で枠の上でひなたぼっこをしているんですが、ひょんなことから枠の内側に落っこちてしまうと、いけすのように、
網が張られていまして、1回落っこちると登れなくなって、かつ網がかかっているので外に出られないという仕組みです。
カメ待ちというか、日光浴をしてくれるカメをタダ待つだけののんびりした捕獲です。」
ずいぶんのんびりしたわなですね~!(笑)ところが、ミドリガメは、気持ちよく『日光浴わな』にはまってくれるそうです。もともとカメは、甲羅の成長に関わるビタミンD作りや、体のバイ菌消毒のために、日光浴をしますが、カメの中でもミドリガメは、無類の日光浴好き。また丁度紫外線が強くなる、4月後半から、9月頃までが日光浴のハイシーズン。そうした習性を活かして、ただ、ひなたぼっこをするステージを作ってあげるだけ。えさの経費もかからないですし、えさが沈んで周りが汚れたりしないし、掃除の必要もない。また、カメの密度が低い場合は、この日光浴ワナは、カニカゴに比べ、効率が良いそうです。在来種のニホンイシガメなどが入ることも、たまにあるそうですが、このワナの中でも、生きていられるよう配慮されているので、見周りの時に回収できる。・・・といいこと尽くめ。
★ミドリガメの駆除の課題
こんなのんびりしたカメ待ちの対策をしていますが、実は、こんなミドリガメならではの課題もあるそうです。
再び片岡友美さんのお話です。
- 片岡友美さん
- 「まだミドリガメがこれだけたくさん野外にいて、在来のカメとかにどんな影響があるのか。というのは、じわじわしか見えてこないという課題もある。大体、長生きでうまく飼ってあげると30年、40年生きると言われていまして、その地域で馴染んでしまって増えてしまうということは、既に入り込んでしまって、順応している種については、逆に減らしていくことの弊害を予測しながら、どういうペースで減らしたらいいのか。総合的に減らしていくとか、そういうことをやる必要があって、元に戻すということは、もの凄い多大な費用と時間がかかるので、野外にはペットは捨てないことが大事だと思います。」
レンコンなど農作物や、水生植物への影響は徐々にわかってきましたが、ミドリガメが他のカメや、他の動物に及ぼす影響はまだよくわかっていないそうです。そして、減らすにしても、どういうペースで減らすべきなのかも、計画などが必要になってくる。寿命の長いミドリガメと長い付き合いになりそう・・・今出来るのはペットを無闇に捨てない事。