★肺炎でなくなった方も。なぜ入浴施設でレジオネラ菌が発生するのか?
広島県三原市の日帰り入浴施設「みはらし温泉」で、男女合わせて40人がレジオネラ菌に感染し、このうち50代の男性が肺炎で亡くなったというニュースがありましたが、今日はレジオネラ菌について、3月29日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
★“水温40℃”と“水しぶき”がレジオネラ菌の好物
去年も岩手県盛岡市の銭湯で男性2人が亡くなる等、入浴施設でレジオネラ菌の集団感染は度々報告されています。なぜなのか?レジオネラに詳しい、東邦大学医学部准教授・加藤尚之さんに聞きました。
- 東邦大学医学部 准教授 加藤尚之さん
- 「レジオネラ菌は、土壌とか河川とか自然界に普通にいるんです。温泉だけじゃなくて、園芸作業とか、人工的な噴水の近くとか加湿器など、感染する所はいろいろあるんだけど、レジオネラが好む温度というのが40℃前後なんですね。
ですから温泉とかは普通40℃位ですから、レジオネラにとっては最適な住処にということです。泡風呂の飛沫にレジオネラが入っていて、吸い込んでしまう。胃に入る分には問題無いんだけど肺に入ると感染します。」
ポイントは2つ。1つは温度です。レジオネラ菌はもともと水中にいる訳ではなく、人間の身体にくっつくなどして外から持ち込まれます。すると、40℃前後の温泉はレジオネラにとって増殖しやすい環境なので、不衛生にしていると拡がってしまいます(温度を70℃位に上げたり消毒を行えば、死滅します)。
もう1つのポイントは、水しぶき。ただお湯に触れたり、水を飲んだりするだけでは基本的には感染しないようですが、菌を含んだ水しぶきを肺まで吸い込んだときに感染します。これが免疫力の低い人だと肺炎に似た症状が出ることもあるそうで、適切な治療がされないと亡くなる可能性もあるといいます。
★レジオネラ菌の感染防止に欠かせない「掃除・消毒・検査」
では、実際に入浴施設ではどれくらい対策がとられているのでしょうか?品川区の銭湯「海水湯」のご主人に聞きました。
- 品川区の銭湯「海水湯」のご主人
- 「毎日終わってから、水は抜きます。浴槽内、タイル、全て毎日清掃を行ってます。水質に関しては、1日のうちに、始め・中間・終わりと3回に分けて塩素濃度を毎日点検確認。点検記録は毎日残していて、それを定期的に保健所に提出する形にもなっています。全体的に公衆浴場に関しては、ほとんど全てそういう形で営業してると思いますよ。そういうのを適当にサボったりなんかすると、当然雑菌なんかが沸くような浴槽の性質になっちゃうんじゃないですかね。」
厚生労働省のマニュアルには、1週間に1回以上お湯を交換しなさいと書かれていますが、この銭湯では毎日変えているとのことでした。さらに、年1回の保健所による水質検査とは別に、品川区の公衆浴場は自主的な検査も行っており、かなり徹底した衛生管理が行われているようでした。
一方で今回事件が起きた広島の施設は、週1回のお湯の交換を怠る、月1回行うはずの配管消毒の記録を付けていない、など、海水湯さんと比較するとかなりずさんというのが分かります。
★屋根の埃や岩風呂の隙間・・・細部にも注意が必要
レジオネラ対策のため、独自に講座を開いている団体もあります。NPO法人 入浴施設衛生管理推進協議会 会長・中島有二さんのお話です。
- NPO法人 入浴施設衛生管理推進協議会会長 中島有二さん
- 「例えば、屋根の滴り落ちた水が浴槽に落ちるような所はちゃんと樋(とい)をつけなさいと。屋根にかかった土埃が全部浴槽に入るじゃないですか。また、岩風呂だと裏の空洞に溜まってる水が表に流れ出ている場合、空洞は洗えないので菌が溜まっていて非常に危険だとか。塩素が効かない温泉の管理方法や、間違いだと知らずにやっている測定方法も教えます。」
中島さんが挙げた細かな問題点は国のマニュアルには載っていないのですが、これまで全国の2000人以上の入浴施設関係者に知識を広めています。
★入浴施設の責任者に、資格は必要無い?!
取材を進めていくと、レジオネラ菌対策は念入りに行っているという入浴施設がほとんどだったのですが、それでもなぜ、レジオネラ菌の感染が度々問題となるのか。中島さんはある問題を指摘しています。
- NPO法人 入浴施設衛生管理推進協議会会長、中島有二さん
- 「各都道府県の条例で、入浴施設は衛生管理者が必要なんです。でも人がいればいいから、旅館やホテルのオーナーさんが『この人が責任者ですよ』と指名すればOKなんです。車運転する人がライセンス無しで運転するようなものですよね。専門家じゃない人だとちゃんといかない。そういうことは国としてまだきちんと出来てないので、我々としては、そういう方々に教育しようということでやってます。」
施設の衛生管理者になるのに特別な資格はいらないようです。しかし、真面目にやっている施設が多いだけに、一部施設のずさんさがこのような形で現れるのは、残念でなりません。