食卓の強い味方のもやしですが、実はそのもやしを作っている生産者の団体が先週、もやしが安すぎて厳しいです!と訴えを出しました。どういうことなのか?3月21日、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
★安すぎて廃業相次ぐ!もやし生産者の訴え
まず、もやし生産者協会の理事長で、もやしメーカーの旭物産の林正二社長のお話です。
- もやし生産者協会 林正二さん
- 「日本のもやし生産者がですね、いま大変経営的に厳しい状態になっておりまして、廃業が相次いでいるんです。5~6年前までは200社弱あったものが、いまは半分になりました。もやしの原料、製造コスト、そういうものが、すべてドンドンあがっておりまして、それに対してもやしの納品価格、販売価格は全然あがっていないんですね。もやし生産者は経営的に苦しくなる一方なんですね、それがいまもやし生産者の実情です。私、いま年齢が63歳で、いまから40年ほど前に旭物産に入社しましたが、そのときのもやしの値段というのが、いまのもやしの値段と変わりません。40年たっても、もやしの値段は同じという・・・そういう業界でございます。」
総務省の統計によりますと、もやしの全国平均の価格は、40年前の 1977年が、200グラム30円で、それが去年の2016年も、ほぼ同じということでした。物価やお給料はあがっているのに、もやしだけ変わらず、林さんも40年前と一緒と嘆いていました。また、このタイミングでもやし生産者が「苦しい!」と訴えたのは、近年、廃業が相次いだことに加え、去年、もやしの原料になる豆が、生産地の中国で悪天候にさらされたことから、今年は、生産がよりいっそう厳しい、という状況もあるそうです。
★もやし生産者の窮状を知らない人が多い!
では、こうしたもやし生産者の苦悩を、実際に売り場で売っている現場の人たちはどう見ているのか、新宿八百屋の荒巻秀俊専務に伺いました。
- 新宿八百屋 荒牧秀俊さん
- 「我々も、もやしを作っている方が、窮状を訴えられているというのは初めて知りました。あそこまでとは思わなかったですよ。ここ何年で百社単位で辞められているということは、我々ですらわからなかったことですから、そこの部分はくみ取ってやっていきたいです。野菜は、季節によっての価格変動がある商品ですから、その中で、他の野菜が高いときには、もやしをどうぞっていう勧め方をしています。一番ひどいときには、1円で売っているところもありました。我々はそれをやっているわけではないんですけど、やっぱり一番、目玉になりやすい商品で・・・ただ、そこを作られる方が減って、結果的に最後は、作る人が少ないから値上げという状況までもっていったらいけないとは思うんですけどね」
荒巻さんは、もやしを売る小売りの現場に30年以上携わっているベテランで、今も現場に立ち続けている方ですが、それでも、もやし生産者がそんなに倒産しているとは驚きました、という反応でした。一方で、もやしというのは、工場で1年中生産される商品なので、他の野菜が高くなったときに、安売りの目玉として出しやすい商品だから、そういう存在でもあるともお話ししていました。
★消費者の本音は、安ければ安い方がが良い
というわけで、売価が安すぎて苦しい!と生産者が訴えるもやしですが、では、消費者は、いくらぐらいが適正な値段だと思うのか?きのう都内でもやしを買っている方に伺いました。
- ●「もやし買いました。値段見てないけど、たぶん30円位だったと思います。(もやし1袋は、いくらくらいならいいと思いますか?)2~30円だと嬉しいです。」
- ●「もやし買いました。29円だったかな。(もやし1袋は、いくらくらいならいいと思いますか?)特売の客寄せで置いているのかなって思っているので、50円位なら・・・正直50円位にしないとマズイかなって思います。生産者もかわいそうだし、プライドもなくなっちゃうんじゃないですかね。」
- ●「もやし買いました。29円位ですかね。ちょっと高いと感じました。(もやし1袋はいくらくらいならいいと思いますか?)地元が福岡なんですけど、10円位で売っているので、もうちょっと安かったら嬉しいです。かさましに週に4回くらい使うので・・・もやしがなくなったら悲しいですね。」
もやしの値段は地域や場所にもよるとは思うのですが、最後の方は20代のOLさんで、地元の福岡だと10円代で売っているところもあるということで、安ければ安い方が良いという意見でした。
2人目の男性のように、生産者のことを考えると、50円位は出しても良いという人も3人に1人ぐらいいましたが、ほとんどの方は、もやしの適正価格は「いまの平均価格の30円以下」という声が半分以上でした。
★希望の適正価格は「40円」
では、最後にこうした消費者の「安ければ安いほう方が良い」という声を、今回もやしの窮状を訴えた生産者協会の林さんはどう思うのか、聞いてみました。
- もやし生産者協会 林正二さん
- 「我々もやし生産者というのは平均20円台の価格でスーパーに納めているんです。そうすると、例えば19円で売っているスーパーがある。それは間違いなく赤字で、1個売るごとに損しているんです。じゃあなんでそういうことするのかというと広告宣伝費なんです。ですから、適正な利益をとって適正に販売する商品と違って、お店の安さをアピールするための商品として、もやしは扱われてしまっていて・・・それが、もやしの悲惨な現状ですよね。でも、やっぱり我々も利益がほしいですし、お店だってそんな馬鹿な売り方をもやしにしてほしくない。そうすると適正価格というのは最低でも30円以上、お店がきちんと利益をとる、利益3割すると40円となるわけです。」
林さんとしてはもやしが安売りの道具にされるのは悲惨な現状だと、そして適正価格は最低でも30円以上、生産者もお店も利益を出すの40円以上必要なんですと訴えていました。