★フィリピン激震！ドゥテルテ政権の“ニッケルショック”
去年の６月にフィリピンで発足したドゥテルテ政権。今日は、「ドゥテルテ政権が行った“ある政策”が日本にも影響を与えている」というお話について、2月23日ＴＢＳラジオ「森本毅郎・スタンバイ！」（月～金、86:30-8:30）の「現場にアタック」で取材報告しました。
★環境被害が深刻？相次ぐ鉱山の操業停止命令
まずは、どんな政策なのか？現在もフィリピンに滞在して現地の様子を調査している、アジア太平洋資料センターの田中 滋さんのお話です。
- アジア太平洋資料センター 田中 滋さん
- 「フィリピンでは、鉱山現場における環境破壊というのは長らく取り上げられていたんですが、新しくドゥテルテ政権で任命された環境大臣は、規制をしっかりしていくということで、鉱山の閉山命令を出しました。鉱山全体の中では４分の１か、５分の１程度だと思います。現地でもかなり話題になっています。」
「鉱山が操業している間、感染症や呼吸器の病気が増えるのではないか？」ということで、採掘時に出た廃棄物の処理をしていなかった鉱山に、操業停止の“勧告”が、既に出されていました（４０鉱山中、３０鉱山に勧告）。そしてその中でも、去年の９月までに、１０の鉱山に操業停止“命令”が出されたということです。
★ニッケル鉱山の操業停止で、ステンレスの製造に影響が…
その中で、停止命令が出た鉱山に含まれている「ある鉱石」が話題になっています。東南アジア情勢に詳しい、獨協大学の竹田 いさみ教授のお話です。
- 獨協大学 竹田 いさみ教授
- 「フィリピンには様々な鉱山があるんですが、その中でいま一番注目を浴びているのは「ニッケル」です。ニッケルの最大輸出先が中国と日本で、そういう意味では日本に影響があると言えます。自動車とか建設関係で、ニッケルをベースにしたステンレス製品はたくさんあります。ステンレスがなければ何も作れない時代なので、大きな影響があると思います。」
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ステンレスは身の回りに溢れています…
フィリピンはステンレスの製造に必要なニッケルの世界最大生産国。ステンレスといえば、自動車や建設業界など、ありとあらゆるものに使われているので、多くの業界に影響が出るかもしれません。現地の業界団体「フィリピン鉱業会議所」の見通しでは、ニッケルの生産額は２０１５年に比べて、５割減少する恐れがあると発表したほど深刻なようです。
★操業停止のあいまいな基準に、現場は大混乱
そこで、一刻も早く鉱山を再び稼働させる必要があるのですが、そう上手くいかない事情もあるようです。この問題を追っている、日経ビジネスの寺岡 篤志記者のお話です。
- 日経ビジネス 記者 寺岡篤志さん
- 「ドゥテルテ大統領は明確な基準を示していないということで、鉱山会社側としては、「一体何が基準か？」が分からず、みんな戸惑っているのが現状です。停止した後にどうしたら回復できるのかというところも不透明な部分があり、本当にふわふわしたまま流れている。政権側の方向性が全く見えない怖さがあって、まさに混乱ですね。」
実は、政府側から操業停止の判断基準が明確に発表されてないので、鉱山会社も、具体的にどこがダメなのか？どこを直せばいいのか？よく分からない状況だそうです。さらに、罰金等、ほかにどんな罰則があるのかも不透明…。中にはＩＳＯ（国際標準化機構）の基準認証を取得しているのに停止となっている鉱山もあり、なんだかよく分からない不思議な話になっていて、フィリピンでは大混乱の様子。
★日本にも影響が出始めている？！
さらに、操業停止の対象になる鉱山はいまだに増え続けているようです。再び寺岡記者のお話です。
- 日経ビジネス 記者 寺岡篤志さん
- 「日本に主に入れているニッケルアジアコーポレーションという会社は、今まで閉山勧告は受けていなかったので、基本的に影響が大きいとは言えませんでした。ところが、２月２日にニッケルアジアの鉱山も閉山対象にされてしまい、価格の面でも２月２日から１割くらい上がっている。価格動向も非常に読みづらくなっています。」
ついに今月、日本にニッケルを送っているニッケルアジアコーポレーションという会社も対象に入ってしまったということです。日本向けに輸出されるニッケルのおよそ７割を、この会社がもつ鉱山が占めているので、ニッケルの価格も、３週間で１割上昇。フィリピンのニッケル鉱山の閉鎖は、いよいよ私たちと関係ない話ではなくなってきているようです。
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田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました！
