★2020年から始まる排ガス規制が厳しい!
今、世界中の海を巻き込んだ環境問題が起きています。日本にとって、なくてはならない海運業者を直撃しているということで、どんな問題なのか?海事専門紙「海事プレス」の対馬和弘さんのお話です。
- 海事プレス 対馬和弘さん
- 「船舶に関して、環境を守るために排出ガスなどを規制していこう方向に強まっており、今一番大きな問題になっているのが硫黄酸化物(SOX)です。これの排出を減らそうという規制が昨年の10月に正式に決まりました。いままで3・5%までだったのが、0・5%以下に下げなければいけないという規制で、かなりインパクトの大きいものになっています。具体的には、2020年の1月1日から。日本の沿岸も、世界中のどの海でも満たさなければいけない、という規制です。」
これは、IMO=国際海事機関が去年の末に発表した「船の排出ガスに関する新しい規制」です。船の排ガスに含まれる硫黄酸化物(通称SOX)について、今まで3・5%以下ならOKとしていたものを、0・5%以下にしなさいというかなり大きな変更で、2020年から、世界中で始まります。わずか3年後、というのも急で大変なんですが、さらに、新しく造る船だけではなく、既に運行している船にも適用されるので、大問題となっています。規制をクリアできなければ、海や港でよく見る大きな船が使えなくなるかもしれないんです。
★日本は読みが甘かった!大慌てで協議中!
当然、海運業界、造船業界は焦っています。船旅事業研究家の若勢敏美さんのお話です。
- 船旅事業研究家 若勢敏美さん
- 「ヨーロッパでは、2010年くらいから1・5%、2015年からは0・1%と、今回の規制よりも厳しい規制強化を進めて、先行してきました。一方、日本は完全に規制を読み間違えたと僕は思っているんですが、規制強化は2025年くらいになるんではないかと、楽観的な見通しの元に動いていたんです。そのため、どうするかまだ回答は出てないと思います。」
世界を見ると、一部の海域ではすでに規制はスタートしていて、今回より厳しい規制に合わせて船の排ガスの調整が進んでいます。しかし、日本では2025年から始まるだろうと予想していた所もあるそうで、完全に遅れてしまったんです。「このままでは2020年までに対応が間に合わないかもしれない」ということで、いま大きな問題となっているんです。
★注目のLNG燃料!ただし、コストがかかる
規制に対応するための最適な方法は協議中なんですが、そんな中、ひとつの「新しい燃料」に注目が集まっています。再び、「海事プレス」の対馬さんのお話です。
- 海事プレス 対馬和弘さん
- 「いままで使っていた油とは全く違う、例えばLNG(天然ガス)を使って、SOXの排出を減らすという方法があります。LNGは排出ガスが非常に少ないということで、これを使えば一発で排出ガス規制はクリアできます。ただ、LNGを使うためには船に新しい設備を載せなきゃいけないので、やはりそれなりにコストもかかってきます」
天然ガス(通称LNG)を焚いてエンジンを動かす「LNG焚き」をすべての船に使えば、規制をクリアできるだろうという方法です。LNGはマイナス160度で保管するものなので、かなり大幅な設備変更が必要でコストがかかってしまいますが、規制に対応するのに有力とされている方法です。
★日本はかつて、LNG燃料を採用しようとしていた
そして実は、日本の船業界では、「LNG焚き」はこのタイミングで初めて出てきたものではないようです。船旅事業研究家の若勢さんのお話です。
- 船旅事業研究家 若勢敏美さん
- 「“維新”というプロジェクトで、次世代のフェリーはLNG焚きにするぞという計画を発表したことがあるんです。それが実現してれば良かったんですが、経済的に合わないということで、ギリギリのところまでいって結局見送っちゃったんです。あのタイミングでLNG焚きにしていれば、いまごろは技術的に誇ることができたんですけど、今大わらわでどうしたら良いんだろうと進めているところです。」
これは、商船三井が2009年に発表した計画。ヨーロッパでの厳しい規制が始まるよりも早く、日本では「LNG焚き」に取り組んでいた過去があったんです!当時、商船三井が「硫黄酸化物(SOX)を98%~100%削減できる」と発表していたくらい、すごい計画だったんです。本当に「あの時やっておけば・・・」という感じですが、でも、なぜやめてしまったのか?それはリーマンショック・・・この影響で断念したということでした。
★LNG燃料船は運航中。今後の期待が高まる!
そしてここからは日本の技術の見せどころ。すでに国内でLNG燃料の船が運航してます。日本郵船 燃料プロジェクトチームの日高 努さんのお話です。
- 日本郵船 燃料プロジェクトチーム 日高 努さん
- 「2012年くらいから協議し、2013年に建造に入り、2015年の8月に竣工、運航が始まっております。タグボートという大型の船を押したり引いたりする作業船で、これは日本で初めてです。いまは横浜港で作業をしていて、コストの面では、燃料の値段自体は安定した供給が可能です。ただ、船の値段そのものはやはりかなり高くついている、というものになりました。」
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/02/fbe5491de209103c960ec42fc09e7aa3.jpg)
日本初のLNG燃料船「魁」(日本郵船のホームページより)
他の船会社も続々とLNG燃料の船を作ると発表していて、2020年から始まる新しい規制に、日本の技術でどこまで対応できるのか、注目です。
![田中ひとみ](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/09/sump_tanakahitomi-400x400.jpg)
田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!