災害時の避難情報の名称が先月変更されました。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「現場にアタック」で、レポーター阿部真澄が取材しました。
★「避難準備情報」が「避難準備・高齢者避難開始」に変更に!
昨年の台風の影響を受けて「避難準備情報」の名称が先月変更されたそうです。どう変わったのか?内閣府の担当者に聞きました。
- 内閣府担当者
- 「これまで避難情報というと、「避難準備情報」「避難勧告」「避難指示」の3種類があった。ただ、昨年の8月に発生した台風10号による災害で、岩手県・岩泉町の小本川が氾濫し、グループホームが被災して9名の入所者が亡くなった。その時に、グループホームの管理者が「避難準備情報」というものの意味を理解していなくて避難行動が遅れた。それを踏まえて内閣府で新たな名称を検討してきて、高齢者を始めとした要配慮者が直感的に避難を開始する段階であるということがわかるように、「避難準備情報」という名称を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更しました。」
改めて「避難準備情報」について説明しますと、【いつでも避難ができるように準備する。身の危険を感じる人は、避難を開始しましょう。高齢の人、障害のある人、乳幼児をお連れの方は避難を開始しましょう】というものです。その「避難準備情報」の意味合いは同じままで、名称が「避難準備・高齢者等避難開始」に変更になりました。高齢者などがわかりやすいように「高齢者等」という文言を付け加えたそうです。
このほか、【避難場所へ避難しましょう】という意味の「避難勧告」はそのままですが、【直ちにその場から避難しましょう】という意味の「避難指示」は、避難勧告と間違うということもあり、「避難指示(緊急)」に変更になりました。
★「避難命令」「避難勧告」の二種類で良い!防災のプロの意見
新たに名称が「避難準備・高齢者避難」「避難勧告」「避難指示(緊急)」となった避難情報ですが、この変更を防災の専門家はどう見るのか?防災・危機管理アドバイザー 山村武彦さんに伺いました。
- 山村武彦さん
- 「 一歩ずつ前進はしてはいるし努力しようとしているが、余計わかりにくくなったような気がしますね。本来は、言葉だけで、いちいち説明しなくてもわかる情報にしなくてはいけないと思う。例えば、今すぐに避難してください、余裕ありませんということで、「避難命令」。少し余裕があるから準備をして早めに避難してくださいという「避難勧告」、この2つでいいと思う(「高齢者等避難開始」は勧告に含まれるるようにして)。これが3つもあって3つ目が説明を要するような避難情報だと認知しにくい。避難命令と避難勧告に分けるくらいの抜本的な改定をしないと認知しにくいんじゃないと思う。」
長くて説明しなければならない情報なら、今の3つから2つに絞ったほうが良いという意見でした。さらに避難指示と避難勧告、どちらが緊急性が高いかわからない人も多いのではないかということで、緊急性の高い方を「避難命令」、準備して避難してくださいという意味で「避難勧告」と呼ぶのがいいのではないかとのことです。
★街では避難情報について理解していない人がほとんど・・・
では、皆さんこうした避難情報について理解しているのか?街で聞いてみました。
- ●「避難指示は避難。勧告は準備、高齢者は準備してくださいということですね。だいたい理解できると思う。」
- ●「指示・勧告?命令とお勧めじゃないですか?指示というよりもむしろ逃げろでもなんでもいい。とにかく具体的にどうしろと言った方がいいんじゃないですか。」
- ●「この避難準備情報は、言われたら逃げればいいかみたいな程度で、家に座ってるかも。避難指示が出たら指示を待つ。避難勧告って出たらいつでも避難できるようにってするけど、でもどっちだろうね、日本語って難しい。」
- ●「避難情報を出しているということは聞いてるけど、なんかしなきゃいけないなぐらいしか思わないかも。役所はフレーズで説明しようとするけど、言葉で言っちゃった方がいい。「逃げられる人はとっとと逃げなさい」とかなら年寄りでも子供でもわかるから。指示ってどの辺なのかなぁと判断している間に危険が襲っちゃったらたまんない。」
多くの方が3つの情報の意味を理解していない印象でした。また、表記がわかりにくいという人が多く、「避難指示」「避難勧告」のどちらが緊急性が高いものかわからないという意見はもちろんありましたが、たとえば「逃げてください」「避難してください」など普段使っている言葉に変更したほうがわかりやすいのでは?という方が多かったです。
★「避難情報は名称よりも伝え方が大切」内閣府の意見
街の人たちの声を受け、「逃げて」や「避難してください」などではダメなのか?最後に内閣府の担当者に聞きました。
- 内閣府担当者
- 「考え方としてはあるかなと思います。実際意見としてはレベル1、2、3にした方がいいとか上がってはいるが、以前の名称も少しずつ浸透しつつあるので、今回は大きく変えるべきじゃないということでこの名称になった。我々としては名称がもっとも重要であると思っていなくて、伝え方が大事だと思う。例えば避難情報が発令された時は「◯◯地区に避難準備・高齢者等避難開始が発令されました。お年寄りや支援する方は避難を開始してください。一般の方は避難準備してください」と、避難情報をわかりやすい日本語で伝達文の例を示す。この名称で浸透するように努力していきたい。」
避難情報の名称が徐々に浸透しつつあるので、名称を大きくかえるよりも伝え方に力を入れて、伝え方の文章をもっとわかりやすくしていきたいというお話でした。
災害時は混乱してパニックになる人もいると思います。そんな時すぐに避難の行動がとれるよう、避難情報は誰でもすぐにわかる言葉で伝えて欲しいですね。
(取材・レポート:阿部真澄)