来年4月までに、待機児童ゼロを目指す杉並区。今年6月、「保育所より公園?公園に保育所をつくる案に、杉並区民が大反対!」というテーマで取材しましたが、あの現場はその後どうなったのか?杉並区久我山にある久我山東原公園の“その後”について、「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)12月15日の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材しました。
★反対運動が起きた公園では保育園建設が始まっていた
杉並区では待機児童問題が深刻化していて、今年136名だった待機児童は、来年4月には560名を超すと言われています。そこで、「東原公園のおよそ半分の敷地を利用して保育所を建設する」という計画が浮上したわけですが、この計画に対し住民が猛反対していました。
子供たちがサッカーや野球などで遊ぶ、地域でも人気の公園。半年経ったいま、どういった状況なのか。杉並区 保育施設推進担当課の中村充明さんに聞きました。
- 杉並区 保育施設推進担当課 中村充明さん
- 「東原公園では木造の保育園を建設中で、すでに2階建ての建物ができており、工事は順調に進んでいます。未だに納得していただけない方はいらっしゃいますが、一定のご理解はいただいており、工事関係の話などが出来る状況にはなっています。完成は2月の末ごろを予定。子供たちが保育園に入れるのは、来年の4月からになります。」
ということで、実際どうなのか、見に行ったところ、かつての公園は、今、保育園の建設中。
以前行った時は50人くらいの小学生が走り回っていましたが、昨日いたのは5人ほどでした。
★小さい子を持つ親は「保育園は必要!」
中村さんの話によると、まだ反対されている方もいるということでしたが、公園の近くにいたお母さんに伺うと、こんな声が多く聞かれました。
- ●「久しぶりに来たらけっこう狭くなっていて、遊ぶところが少なくて残念ではあるんですが、来年の春、入所予定で申し込み中です。保育園に入園を希望しているお母さんにとってはありがたいことなんですけどね。」
- ●「次の4月から仕事に復帰する都合で保育園を探していて、ちょうど新しくできるということで、そこにまさに入れようと思っています。」
- ●「やっぱり他にも保育園の待機児童は多くいて、これからも働く女性は増えていくと思うのでありがたい話だとは思います。でも、小学校とか大きい子は広場で遊ぶと思うので、そういうところが確保されないと理解は得られないと思います。」
やはり待機児童問題は深刻で、保育所を探している方にとってはありがたいようです。というわけで、待機児童問題にとっては、解決に向かって動き出したのですが・・・
では、反対運動の理由の1つだった「子どもの遊び場」問題はどうなったのか?最後のお母さんも言っていましたが、小学生以上になるとボール遊びがメインとなりますし、なくなってしまった広場をどう確保するか、という課題は解消されていません。そこで、区は、私達が半年前に取材をした後、子供たちが遊べる場所を別に提供することにしたそうです。再び杉並区の中村さんのお話です。
★公園代わりの「代替広場」が近くに出来ていた!
- 杉並区 保育施設推進担当課 中村充明さん
- 「近隣の空き地になっているところを広場として解放しています。これにより、久我山東原公園で遊んでいた子供たちは、新しくできた広場の方で遊んで欲しいと、区として案内しております。敷地の面積は900平米くらい。東原公園の北側は840平米なので、面積は同規模のものです。」
東原公園から歩いて5分くらいのところに、同じくらいの敷地が解放されていました。東原公園の広場で遊んでいた小学生たちが遊ぶ用として、ということなんですが、実はこの敷地にも、地域住民から声があがっているんです。周辺に住んでいる方と、子供たちの声です。
★せっかくの「代替広場」だが、人気はナシ・・・
- ●「東原公園が使えなくなったもんだからこういう広場で子供たちを遊ばせてください、ということなんだけども、トイレもない。保育園のグループが午前中に先生が連れて来て遊ばせて帰っていきますけどそのぐらいです。ほとんどみないです。」
- ●「(子供)公園というか、空き地?見に行ったけどフェンスとかにボール蹴っても線路とかに入りそうで思いっきり蹴れない。全然誰もいないし。」
- ●「(子供)あそこ行くなってママに言われた、危ないから。ちょっとは行ったけど遊具ないし、遊ばない。」
こちらも昨日行ってきたんですが、ひとけがなく、ここで遊んでいる人は一人もいませんでした。周辺に住む人によると、その原因として以下の点が考えられるようです。
- フェンスはあるが、線路が近すぎて危ない
- 民家が近すぎてボール遊びは危険
- 地面がでこぼこ
- 街灯あるが夜になると暗い
実はこの場所にも保育所を作る計画があったそうなのですが、事業者の都合で急遽白紙になった場所なので、公園というよりただの空き地。
東原公園の工事は始まっていますが、今月もまた区の説明会が予定されています。今回取材をしてみて分かったことは、まだすべての問題が解決したとは言えない状況、ということでした。
(取材・レポート:田中ひとみ)