豆腐を常温の状態で販売できるよう、基準を見直すことがニュースになりました。では、常温保存が可能な豆腐とはどんなものか?「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「現場にアタック」で、レポーター阿部真澄が取材しました。
★常温保存可能な紙パックの豆腐
先週、厚生労働省の会議で、豆腐を「常温」の状態で販売できるように、豆腐の保存の基準を見直すことを了承したというニュースがありました。常温の豆腐というのはあまりイメージ湧きませんが、どんなものなのか?常温保存が可能な豆腐を作っているさとの雪食品 村尾誠さんに聞きました。
- 村尾誠さん
- 「原料や基本的な豆腐の作り方は変わらない。ただ、木綿豆腐とか絹ごしは、一度豆腐を作ってから切り分けて容器に入れてパッケージをするという行程だが、この豆腐は豆乳とにがりを液体の状態で容器に詰める。それで蓋をして熱をかけて固める製法で、容器の中で豆腐ができる。外から全く雑菌が入らないのと、中の食品が劣化しないので常温保存が可能になる。結果的に180日の賞味期間が付いている。」
通常の豆腐の賞味期間は長くても2週間くらいですが、なぜこんなに保つのかというとポイントが2つあります。
●1つは作り方。
普通の豆腐は作った後に切り分けてパッケージしますが、この豆腐は原料を完全に菌がない無菌の状態で、さらに無菌の容器の中に充填=詰め入れて、その後熱して作ります。
●2つ目は容器。
普通の豆腐はプラスチックなどのトレーに水が入っていて、上から透明なビニールの蓋をしてありますが、この豆腐は、密閉された紙パックの容器を使用。普通の豆腐容器は劣化の原因となる空気や光など通してしまいますが、この紙パックは特殊な加工がされていて、保存料など使わなくても常温で180日保つことができるのです。
この豆腐、20年以上前から販売されていて、現在は一丁130円くらいで通販で売られています。また海外ではイギリスを中心に35カ国に輸出。和食ブームもあり、3年前と比べ2.5倍の売り上げがあるそうです。
★常温保存の豆腐どう?街のイメージと食べている人の声
「常温保存の豆腐についてどう思うか?」街で聞いてみました。
- ●「お豆腐は冷蔵という昔からのアレがあるのでちょっと手が出ない。」
- ●「常温は不安だなと思いました。豆腐って冷蔵庫に入れて使うし、昔はボールに入れて豆腐屋さんに買いに行って、水の中に入っている豆腐を買った。それを思うとなかなか。」
- ●「常温で保存できますと言われるとなんか不安。多分慣れだと思う。大丈夫と分かればいいのかも。」
- ●「見たことないから1回買うかもしれない。BBQとか外に行くときいいかも。」
- ●「別にいいんじゃないかなと。ちっちゃい子がいるとことで外に豆腐が持っていけるのが便利。キャンプとかも。」
- ●「冷蔵庫収納で結構困ったりするので、常温だと場所には困らないかなぁと。」
様々な意見がありましたが、やはり豆腐=冷蔵のイメージが強いようで、常温ということに抵抗を持っている方のほうが少し多かったです。では、日常的に常温の豆腐が売られているところで暮らしている人はどう感じているのか?常温の豆腐が多く輸出されているイギリスに2年前から住んでいる、主婦の鈴木さんにお話を伺いました。
- イギリスに住む主婦 鈴木さん
- 「比較的大きなスーパーでは取り扱いがある。わさびや醤油、海苔とかのそばで棚に並んでいる。かなり頻繁に購入していますね。3個4個まとめ買いしておいて、作るものがない時とかに出す。イギリスに行った当初、なかなか購入する気にはならなかったが、一回購入すると便利で抵抗感は無くなる。味は特別美味しいこともないが、絹ごし豆腐と比べても特に変わらない。」
常温で売っている豆腐に抵抗感があり、最初の数ヶ月はなかなか買う気にはならなかったそうなんです。ただ、ふと試しに買ってみたところ、日本で売っている豆腐と味も変わりなく、長期保存できるのでまとめ買いしているということでした。
★豆腐の美味しさを追求した結果、常温保存が可能に!
常温で長期保存ができるというメリットはありますが、気になるのは味ですよね。その点を、さとの雪食品の村尾さんに伺いました。
- さとの雪食品 村尾さん
- 「そもそも紙パックの豆腐を作ろうと思ったのは、長期保存しようと思って作ったのではない。豆腐って作りたてが美味しい。その作りたての味をいかに逃さないようにするかということを追求した結果、このパッケージに行き着いた。最初から常温保存ということを考えてなくて、美味しい豆腐を作ろうと思ったらこの形になった。是非一度食べてもらえればなぁと思います。」
村尾さんによると、豆腐はパッケージを開けていなくても1日経つごとに新鮮さがなくなって味が落ちてしまいます。そこで作りたてを食べて欲しいと追求した結果、紙パックの形になり、結果的に長期保存ができるようになったそうです。味も美味しい!更に保存にも便利!となると、今後常温保存の豆腐を作る会社も増えてきそうですが、村尾さんはこんな話をしてくれました。
- さとの雪食品 村尾さん
- 「普通の棚でも販売できるので、スーパーでもいろんな売り場で豆腐を販売できる。今は買い物難民と言われる人がが多いが、毎日豆腐を買いに行くのは大変なので、まとめ買いしていつでも欲しい時に取り出して使える便利さはあると思う。今まで売られていた冷蔵の豆腐を押しのけてというよりは、冷蔵の豆腐と常温の豆腐が上手く共存共栄できるような形でと思います。」
昔から慣れ親しまれてきた冷蔵の豆腐を買い慣れている人もいる中で、その豆腐に対抗しようということではなく、常温で保存できる利点を感じられる場面で使ってもらえたらと話していました。常温の豆腐がスーパーの棚に並ぶ日もそう遠くはなさそうですね。
(取材・レポート:阿部真澄)
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