介護現場の人手不足が問題になっていますが、今、子育て世代に注目が集まっています。ある介護施設が行う子育て世代に向けた取り組みについて、「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「現場にアタック」で、レポーター阿部真澄が取材しました。
★介護施設で働くシングルマザー向け職員寮?
高齢化が進む日本では、元気な高齢者が増える一方で介護を必要とする高齢者も増えていて、介護施設では介護職員の人手不足が深刻になっています。そうした中、町田市にある社会福祉法人が珍しい職員寮を開設しました。介護施設を運営する合掌苑 杉本靖さん に伺いました。
- 杉本靖さん
- 「いわゆるシェアハウスですがシングルマザー向け。もともと老朽化していた職員寮を、シングルマザー向けのシェアハウスに造り変えようと決まったのが2年前で、今年6月に完成。5世帯が入居できる。シングルマザーの方は制限が付いた中で仕事を探しているので、こういった住宅を造って、介護の業界に目を向けて欲しいと言う思いがあります。」
合掌苑は、合わせて130人以上の高齢者が入居していて、更にデイサービスを合せると日中は200人ほどの方が利用しています。これまでも独身寮を整備するなど、人材確保に力を入れていましたが、母子家庭のお母さんも働きやすい環境を作ることで、新たな人材確保に繋げたいと、このシェアハウスを作りました。職場までは徒歩2,3分、共用部分とワンルームの部屋が利用できて、月々4万5千円で生活できます。私も見学したのですが、内装も女性向け!各部屋用の食器なども用意されていて、設備や備品がとても充実していました。
★託児室、夜勤廃止…介護施設の様々な取り組み
- 合掌苑 杉本靖さん
- 「病院なんかは24時間の看護師さん向けの託児室を院内に持っているが、7~8年前から平日の夕方と日曜祝日は全日稼働する法人内の託児室を無料で使ってもらって働ける態勢を整えた。後もう一つ、女性が出産して働く時にネックになるのが夜勤。子供がいる人だけ夜勤を免除にすると周りに気を使ったりして辞めてしまうので夜勤を専従化して正職員の仕事から切り離して遠慮なく夜勤なしで働けるようにした。」
託児室を施設内に作り、保育園がお休みの日などに預かるサービスを行っています。また、小さいお子さんのいる家庭では、夜勤になかなかつけない人も多いということで、早番や遅番の交代制勤務から、夜勤を切り離しました。専門職員が担当する夜勤専従化を本格的に導入しているのです。こうした取り組みは、東京都や町田市からも評価されて賞をもらうなど、注目される取り組みとなっています。
★介護施設で働く子育てママさんの本音
実際に、合掌苑で働く子育てママさん、2歳と4歳の娘さんを持つ水津真弓さんにお話を伺いました。
- 水津真弓さん
- 「結婚する前は違う施設で働いていた。引っ越した際、就職する時に子供がいても働けるようにするには託児所が必要だと思って探したが、なかなか無かった。やはりこの仕事が不定休と言うのが一番大きい。保育園が無い時に休まなくてはならないのは困る。そういう時に預かってもらうと助かる。介護をやっている友達もいるが、託児所が無く、祝日やお正月も全部休まなければならないので、それを聞くと大変だと思います。」
水津さんのお宅は旦那さんと共働きで旦那さんも不定休ということで、保育園が休みの日に子供を託児室で預かってもらうのは非常に助かるとおっしゃっていました。職場選びの一つの条件としても託児室は必要不可欠とのことでしたし、合掌苑では水津さん以外にも10人ほどが託児室を利用しています。介護業界が抱える人手不足の解消に、「託児室」が貢献しているようです。
★介護業界の人手不足と待機児童問題の関係
子育て世代のお母さんに介護職員として働いてもらうことが、介護業界の人手不足の解消に向けた動きとなっていきそうですが、まだまだ課題も残っているようです。
- 合掌苑 杉本靖さん
- 「1つネックになっているのが、仕事や寮に入ることが決まっても保育園を確保できないと引っ越して来られないということ。仕事と寮は調整できるが、保育園だけは市でやっている。保育園というのは大きな壁。小学生のお子さんなら隣の学校に転校がすぐできる。未就学児童を持つお母さんには保育園という課題が出てくるので、いま対策を考えている。そこをクリアできればまだまだ人材の活用が出来るのではないかと思っています。」
介護業界の人手不足と待機児童問題というのは全く別の問題のようで、実は繋がっています。子育て世代に働いてもらうために施設側が取り組むだけでなく、国や自治体も一緒になって協力できると良いですね。
(取材・レポート:阿部真澄)
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