コロナ禍の巣ごもり需要で売れ行きが伸びているお酒ですが、最近は、大手メーカーではなく、クラフトビールなど、手作りとも言える個性的なお酒が色々出ています。そうした中、変わった植物、さらには樹木からお酒を造る動きも出てきたので取材しました。7月14日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
変わったお酒まずは大学内の花からビールを作るというプロジェクト。八王子にある東京薬科大学・食品科学研究室の志賀靖弘教授のお話しです。
★植物のお酒?
- 東京薬科大学 食品科学研究室の志賀靖弘教授さん
- 「東京薬科大学と高尾のビールの共同で新たな味わいを持ったクラフトビールを開発しようとするプロジェクトとなっております。今回のプロジェクトの肝となるのは、東京薬科大学のキャンパス内で管理した野生の出芽酵母である「東薬花の酵母」を用い、クラフトビールを製造することです。このようなビール作りを通じて、八王子地域の活性化を推進できたら本当に嬉しいと思っています。例えば八王子市を訪れた観光客の皆様がお土産として買っていってもらって、それから八王子出身の方がですね、例えば今コロナ禍でなかなか人の移動ってのが規制される状況になってますので、故郷で作られたクラフトビールを味わって故郷を想っていただくなんていう形でもお使いいただけたら嬉しいなというふうに考えております。」
八王子の東京薬科大学と、八王子市に醸造所を持つ「高尾ビール」が、東京薬科大の花から採った酵母=東薬花の酵母を使った「クラフトビール」を作るプロジェクト。2019年9月から始まって、人気のため、すでに第3弾までシリーズ化している。それぞれ八王子市の花の「ヤマユリ」や「ヤマモモ」などを使っており、(八王子=高尾山と言うことでヤマがつく植物に統一)
今まで市場に出したものは全て完売。薬科大も高尾ビールもとにかく八王子と言うキーワードにこだわり地産地消と地域貢献していければと言うことでした。
330ミリリットル入りで希望小売価格660円。高尾エリアを中心に酒販店などで購入が可能です。
続いては、おそらく世界初!と言われている「木からお酒」を造る技術について。つくば市にある、森林総合研究所の野尻昌信さんのお話しです。
★木からお酒!
- 森林総合研究所 野尻昌信さん
- 「木を粉砕をすることで、木そのものを発酵してお酒を作れるような技術ができたので、これまでなかった新しいお酒を提供できる技術になったってこと。例えば、スギは樽とか割りばしに使ってたり、あるいは白樺とかは、アイスのバーの棒に使ったり、あとはミズナラのウイスキーの樽、あるいはクロモジっていう楊枝に使ってる材なんですけども、今まで日本人が口の中に入れて特に大きな問題はなかった、そういう材を使って作っています。我々が直接販売できないので、なかなか計画を言うのは難しいんですけれども、今、民間の方が何とか作りたいと動き始めていまして、最短で2年後には飲めるようになるかもしれない。」
国の研究機関である「森林総合研究所」では、「木の幹からの酒づくり」を進めている。スギ、シラカバ、サクラ、ヤマザクラ、ミズナラ、クロモジ、の木から造った蒸留酒で、ウイスキーやジンのイメージ。それぞれの木の香りを楽しめて、広葉樹はよりフルーティーな香りと味わいだそう。
木を1ミクロンくらいのサイズにまで粉砕することで生物が分解でき、木そのものを発酵できる事が分かっており、技術的には木からお酒が造れるのではと分かっていたが、どんなものが出来るのか試しに作ったところ、想像以上に香り自体はいいものが出来たことにより、本格的に研究が始動した。
一般に出回るには安全性の確認や税務署の免許取得などが必要なため、少し時間はかかりそうだが、早くて2年後に木のお酒が飲める日がくるかもしれないと。この個性的な木のお酒にはもう一つ目標があるそうです。再び野尻さん。
★お酒づくりの先には・・・
- 森林総合研究所 野尻昌信さん
- 「今やっぱり山村地域だとか中山間地域っていうのは結構経済的にも大変な部分もあって、そういうところに新しい産業を持ち込みたい。もう一つはやっぱり里山の保全であるとか、森林の保全だとか、活性化していくってことを目標にしています。今までは木を切って、それを材木にして売っていると、そういったことが主流だったと思うんですけれども、それの他にですねやっぱり新しい付加価値の高いもの作って、林業の独自産業行ってよくやるようなもので、新しい経済的な産物が作れるということを考えています。」
ウッドショックと言われ、一時的に高騰している木材ですが、安い木チップ用途などでは、1本の木が数千円という指摘もあります。
一方、この「木のお酒」は、ボトル1本作るのに、杉なら2キロ、広葉樹なら4キロの木材を使うということで、1本の樹木から100〜200本くらいはできそう。値段にもよりますが、樹木の付加価値がかなり高くなるので、この木のお酒の開発で、国産木材の需要拡大や林業の振興、里山保全などにつながることを期待したいと言うことでした。