4月10日(土)は、「きょうだいの日」でした。元々は、アメリカで、幼い頃に兄妹を亡くした方が作った日ですが、日本でも2年前に認定されました。日本の場合はひらがなの「きょうだい」で、これは、「病気や障がいのある兄弟姉妹を持つ人」を意味しています。
また最近、障がいのある兄弟姉妹の世話などで大変な「ヤングケアラー」の調査が発表となり、その問題が注目を集めました。
そこで「きょうだい」がテーマの短編映画『ふたり~あなたという光~』に注目。4月15日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは短編映画『ふたり~あなたという光~』を企画した三間瞳さんに、どんな作品なのか聞きました。
★障がい者の「きょうだい」を描いた短編映画
- 『ふたり~あなたという光~』プロデューサー 三間 瞳さん
- 「障がい者の兄弟を持つ、健常者の「姉」が、困難にぶち当たって、結婚を諦めようとするストーリー。私の話が6割です。妹が10歳のときに「統合失調症」と診断されました。私は当時15歳。突然発症して暴れ出したり、壁に穴が空いたり、窓ガラスが割れて修理したり、現実がガラっと変わりました。そして私も22歳の時にパニック障害になって、それでもこの家族を何とかするのは私だと、我慢して生きてきました。障がい者の兄弟という立場でこうした苦悩があることは、あまりにも社会に知られていない。ただ講演活動や本を書いても見向きもしてくれなさそうだけど、映画だったら、観てみようかなという、とっかかりになると思って作りました。」
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障がい者の「きょうだい」に光を当てた短編映画『ふたり〜あなたという光〜』
三間さんの経験を元にした、40分の短編映画です。主人公の女性がプロポーズされたことをきっかけに、妹が「統合失調症」であることを打ち明けますが、相手の家族が困惑し、自分の人生に絶望していきます。
これまで障がい者本人が主人公の映画はあっても、その兄弟にスポットを当てた映画はなかなかありませんでした。そこで三間さんは、歳も近く、実は一番身近にいる「きょうだい」の葛藤を知って欲しいという思いから、自分の好きだった映画で発信しようと思ったそうです。
とはいえ、元々法律関係の仕事をしていた三間さんは、映画作りは素人。そこで、映画監督の友人の協力を仰ぎ、制作資金600万円をクラウドファンディングで募集。構想から1年、今年はじめに完成させました。
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今年1月16日に終了したクラウドファンディングでは、600万円を超える支援が集まりました
★ズームで感想をシェア
ちなみにこの映画、劇場公開はされておらず、有志のメンバーが開く「自主上映会」で鑑賞できます。そこで、実際に今年2月、オンライン上映会を主宰した方に話を聞いてみました。
ご自身の妹さんが知的障がいという、会社員の奥村美紀さんのお話です。
- 自主上映会を主催した奥村美紀さん
- 「この映画の主人公は、私と同じ障がい者の「きょうだい」です。でも「きょうだい」でなくても、生きづらさや葛藤を抱えた方に、この映画の「あなたはどうしたいの?」というメッセージを伝えたいと思って上映会を開きました。オンラインで観られるので、フェイスブックや友人、会社で関心のありそうな方に、一人ずつメッセージを送りました。その結果、映画を視聴した人は70名位。さらに、ズームで感想をシェアする場に集まったのは20名強。これまでは、これだけ自分のことを語る機会はなかったので、きっかけを貰えたと、感謝しています。」
70名が集まる映画上映会となると、チラシを刷って、会場に人を集めて…という従来のやり方では、会場費や機材費もかかって大変ですが、オンライン上映会なら簡単にできます。実際に奥村さんは2万円で自主上映会の開催権を購入し、2月23日、オンライン上映会を実現させた。
さらに、「シネマローグ」という、感想をシェアする座談会も開き、希望者はビデオ会議のズームを使ってオンラインで会話。家族や障がいのある当事者等、この日は20人ほどが1時間に渡り、意見を交わしたようです。
★「障がい受容」は社会の課題
クラウドファンディングで資金を募って映画を制作。そしてSNSで告知し、オンライン上映会で鑑賞して、感想を共有する。今までの映画とは違った形で、社会を変える影響力がありそうですが、企画した三間さんは、この映画を「社会の課題」として捉えて欲しいと話していました。
- 『ふたり~あなたという光~』プロデューサー 三間 瞳さん
- 「「やばい子がいるらしい」とか言われて、理解するんじゃなくて変な目で見られる事が多いので、1人で抱えて頑張るのが染み付いていて、それを手放すのがなかなか難しくて、10年以上かかりました。今もなお現在進行形で32歳、1人で買い物ぐらいはできるけど・・・っていう感じの子がいるので、家族全体で「障害受容」をするのが難しかった。でもやっぱりこれは、社会の課題。障がいを持って生まれた人が悪いとか、「障害」に捉えられているけど、世界で10億人の障がい者がいると言われているのに、受け入れる体制になってない。その社会変えていかなきゃいけないという思いで映画を作りました。その思いに共感したという当事者からの問い合わせが増えています。」
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プロデューサーの三間瞳さんに話を聞きました
結婚するかどうか、子供を持つか持たないか、親の亡き後どう世話するか。障がい者の兄弟は、様々な課題と直面します。
一方、家族に障がい者がいることを恥じたり、隠そうとする人は少なくありませんが、障がい者の自立支援や、偏見をなくすことは、社会の課題だと三間さんは話します。そこに共感した同じ環境の方々から、映画を観たい、上映会を開きたい、という声が広がっているようです。
この映画『ふたり~あなたという光〜』、次回は4月24日と30日にオンライン上映会が予定されています。
詳しい情報は、映画ホームページをご確認ください。
→ https://www.movie-of-siblings.com/screening/