東日本大震災から10年ですが、首都圏では、いつ首都直下型地震が起きてもおかしくない状況。その首都直下型地震では、国や都の推計によれば、一番死者を出すのは直後の「火災」だとされています。何が起きるのか?どうしたらいいのか?3月10日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
まずは、首都直下型地震での火災のリスクについて、防災の専門家で、ご自身も阪神淡路大震災を体験したという兵庫県立大学防災教育センター長、室崎益輝さんに伺いました。
★今の方が木造家屋が密集・・・
- 兵庫県立大学防災教育センター長 室崎益輝さん
- 「都市火災、市街地大火っていうものが、最も恐ろしいものではないかと思っています。東京の市街地を見ると、密集市街地が広範囲に形成されて、その密集市街地の連続している状況は、関東大震災のとき以上に木造が密集しているわけですよね。もし首都直下の地震がおきて火災が発生すると、数十万棟もの家屋が燃えると予測されています。数十万戸もの家屋がどんどん延焼していくと、やっぱり逃げ切れない人がたくさん出てきて死んでしまうんではないかと思います。関東大震災以上の被害が出てしまうのではないかと私は考えています」
関東大震災で大きな被害が出た墨田区の市街地図と今の新宿から吉祥寺あたりの市街地図を重ねると、実は今の方が木造家屋が密集していて、かつ範囲が広い。そのため国や都の推計では火災が起きると、東京で50〜60万棟が焼けて、1〜2万人くらいの死者が出てしまう恐れがあるとされています。
ただ室崎さんは、推計は気象条件で大幅に変わることがあり注意が必要ということ。状況次第では、もっと少なくて済むかもしれないし、最悪の状況ならもっと被害が拡大する恐れもあります。
関東大震災の火災死者は9万人、そして今は関東大震災より密集していると考えると、最悪の事態を想像すると怖い状況です。
ではなぜ火災が起きるのか?
火災の原因の多くは「通電火災」と言って、地震で停電が起きた後、電気が復旧した時に、急に電流が流れるため、小さな火花が散ります。それが地震で漏れ出たガスに引火して、あちこちの家屋が一斉に火災になるそうです。
今は、地震が起きると自動的にガスメーターが止まる仕組みになっていますが、それでも配管が地震で壊れて漏れ出たり、ガスメーターから先の家庭の部分で漏れ出たりして、結局、引火してしまうという事でした。
だから大火となったら速やかに逃げる必要があるのですが、その場合も、火のスピードに注意が必要だということ。再び室崎さんに伺いました。
★火災のスピード
- 兵庫県立大学防災教育センター長 室崎益輝さん
- 「大昔の昭和9年の函館大火の事例ですが、このときはもう大きな台風が来ているような状況の中で、1時間1000メーターのスピードで火事は広がっていくんですね。かつそれは、同時多発火災と言って、複数のあの炎が立ち上がるわけです。炎の高さが超高層ビルのように30メーターぐらいで、幅が300メーターぐらいの炎になるんです。そういう巨大な炎が上がると、大量の熱が浴びせられるので、100メーター離れてても、火傷するとか、死んでしまうという状況なので、もう道も通れなくなってしまうんです。」
阪神淡路大震災はほとんど無風で、火の速さは時速40mと低速でした。また耐震性の低い、古い建物が多く、地震ですでに崩れてしまっていたため、火災はそれほど広がりませんでした。
しかし、函館の大火は時速1000m、関東大震災では800m、風があるとアッと言う間に燃え広がります。そして炎もどんどん大きくなるので、100m離れていても耐えられない可能性がある。逃げるためにも、こうしたことを知っておく必要があります。
では大地震直後の火災から命を守るにはどうすればいいのか。改めて対策について室崎さんに聞きました。
★対策は・・・
- 兵庫県立大学防災教育センター長 室崎益輝さん
- 「1つは「感震ブレーカー」っていう、揺れた時に一旦電気を自動的に消すような仕組みがあれば、火花が飛ばないので、直後の通電火災は防げます。そういう火花が飛ばないようにするという対策をしっかり進めていくっていうことが一つです。2つ目は、仮に火事が出たとしてもすぐに消すということ。普段から「市民消火隊」みたいなものを作っておいて、市民の力で消火栓から水を取って消す。火災がどんどん広がらないようにする。あとは、消火活動を最後までやっていると逃げ遅れるので、10分から30分くらいの間は消火活動をするけれど、うまくいかなかったら、その時点で消火を諦めて、安全な場所に逃げないと命を失う」
震度を感じて自動的に落ちる「感震ブレーカー」の設置。そしてブレーカーを入れ直すときも、ガスがないか注意してから入れることで通電火災を防ぐ。
あとは逃げる、ということですが、地震による火災で避難する場合は「広域避難場所」が正解です。ここは大地震による火災を想定し、最低でも100m四方の広さが確保されているので、先程のような大きな炎に耐えるように作られているそうです。