先日、政府から「正月休みを11日まで」と、企業に呼び掛ける動きが出ましたが、萩生田文部科学大臣は、「学校は無理です!」と、即座にノーを出しました。現在の所、学校は対象外という事なので一安心ですが、とにかく、今、学校の現場から悲鳴が上がっています。休校措置が明けて5ヶ月過ぎた今、学校はどうなっているのか?先生達の仕事は増えているのか?10月29日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは、先生達の労働時間は増えているのか?横浜市立日枝小学校の校長、住田昌治さんに聞きました。
★教員の長時間労働はコロナ禍で悪化
- 横浜市立日枝小学校・校長 住田昌治さん
- 「率直に言って増えてます。春に本来やっていた修学旅行や遠足、運動会を、だいたい今年は秋に回しているので、過密になっている。今までと違うやり方でやらなければならない分、準備にかける時間もかなり取られる。特に小学校は、今年から学習指導要領が新しくなったので、英語が強化されたりプログラミング学習が始まったり、今年になってやらなければならないことが元々増えていた。それにプラスして、消毒作業や感染症予防をしながらの授業など、そういう関係で当然のことながら労働時間は伸びている。」
休校の遅れを取り戻すために、授業のコマ数を増やしたり、土曜学級を開いたり、学校に来ない生徒には授業をオンラインで配信したりというのは以前から続いていますが、それに加えて、学校によっては、こちらのように、春、実施予定だった遠足や運動会が、この時期に、ずれ込んで、今、いっそう忙しくなっている学校も多いようです。当然、新しい様式の遠足、運動会を考えなければいけので、やり方を根本から見直すので大変。
しかも現在、家庭内感染が増えていて、陽性者は2週間の隔離が必要ですが、クラスの濃厚接触者ごと、ごっそり休んだ生徒達の遅れはどう取り戻すのか、個別に検討していかなければいけません。
保護者の対応も、以前より時間を取られ、それなのに、元々先生の数が手薄なので、代わりもきかない。先生はどんどん疲弊していき、最終的には子供と向き合う余裕すらなくなってしまいます。そしてこのままでは、いじめが増える可能性も高いと、住田さんは危惧していました。
★先生同士のネットワークが、コロナを乗り切る鍵に
「もはや、頑張りでなんとかなる限度を越えつつある」とも言っていたのですが、そんな中、この状況を何とかしようと、新たな動きが生まれていました。インフィニティ国際学院・学院長の大谷真樹さんのお話。
- インフィニティ国際学院・学院長 大谷真樹さん
- 「フェイスブックのグループ機能を使って、全国の小学校から高校までの先生達が自由に入れるグループを作って、コロナ禍で出来るノウハウの共有や、問題点の解決を促した。初期の頃は感染対策の方法や、オンライン授業を迫られた先生がズームの使い方や動画の編集方法についてわかる先生が情報共有したり、この教材使いたけど上が許してくれないとか、そういうテーマが多かった。今まで多分誰にも言えないで抱えていた。でも今回このグループで、自分の悩みを他の学校の人に聞いてもらえる。皆こういう横断的な情報共有の場を探していたのではないか。」
大谷さんが学長を務めるインフィニティ国際学院は、高校生が通う、インターナショナルスクールで、以前から、外から「既存の学校を」眺める中で先生同士の繋がりの薄さに課題を感じていたそうです。
そこで、コロナをきっかけに、先生のためのコミュニティをフェイスブックで作ったところ、みるみる内に参加者が増えていき、現在4000人が登録するコミュニティになっています。私立・公立問わず全国の先生が参加。フェイスブックの特性上ほとんどが実名なので、学校名も明かして書き込んでいます。
例えば・・・
- 「音楽の教諭です。うちの学校は住宅街にあるので、窓を開けて換気をしながらの楽器の演奏は難しい状況。皆さんはどんな音楽の授業をしていますか?」
とか、
- 「保護者と児童の心のケアを、オンラインで始めた公立学校の教員です。研修に使った資料を共有します」
など、様々な情報交換が行われ、そのやりとりの多さに、先生たちの危機感を感じられました。
★折角のチャンス、にも関わらず学校は「巻き戻る」?
しかし、今回各学校がコロナに対応する中で、「学校教育の本当の問題が浮き彫りになった」と、横浜の住田さんと大谷さんは、共通の問題点を指摘していました。
- 横浜市立日枝小学校・校長 住田昌治さん
- 「「コロナよりも前」に戻ろうとするのではなく、新しい教育を作っていくマインドに変えていく必要がある。例えば前と同じような運動会、卒業式、授業。その方が慣れてるし、安心だし、自信があるからやっていくと、また長時間労働の働き方に戻っていく。今変えないと変えられないと思う。」
- インフィニティ国際学院・学院長 大谷真樹さん
- 「教室に一斉集合して、先生が記憶させてテストして評価。この仕組みは明治から変わらない。そこに戻ろうとしている、また教室に生徒を戻して。本来ならコロナで、オンラインによって個別最適な学びができるとわかったはずなので、学び方自体を変えていかなければならないのが、現場は前に戻りつつある。」
実は、コロナを受けて、コロナの問題だけでなく、ここ最近、学校が抱えていた様々な問題がみえてきたようです。新しくできたツールや新しく身についた知恵で、解決するチャンスだった。
登校だけでなく、オンラインも混ぜることで、生徒の習熟度別に丁寧に対応出来たりするなど、より子供のためになる学校に生まれ変わるチャンスだったのが、今、残念ながら、先生が多忙となってしまう中で、元の状態に巻き戻る動きの方が強いようです。以前は積極的に先生同士の勉強会を主催していた先生も、最近はパタリと更新が止んでいることもあるそうです。
コロナで先生が大変、という問題だけでなく、子供のための改革が、止まる、そんな曲がり角に直面していることがわかりました。