台風が多い、と予想される今年、気になるのは、自然災害と新型コロナとの複合災害。避難所でクラスターが起きるのはなんとしても避けたいですよね。今日は、その避難所のお話。というのも日本の避難所は時代遅れということなのです。そこで・・・。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!今日9月28日(月)は、『複合災害。避難時のコロナ対策から考える欧米の避難所事情。』というテーマで取材をしました。
★イタリアの避難所は、生活の質を維持!
まずは、2012年のイタリア北部地震の避難所を視察した避難所・避難生活学会の理事で、新潟大学特任教授の榛沢和彦さんに、欧米の避難所の様子を伺いました。
- 榛沢和彦さん
- 「家族ごとにテントで避難する。家族分だけ簡易ベッドがあって、カーペットも敷いてあって、夏だったんで、テントの中に冷房の装置も入っていて。トイレは公園のような仮設の水洗トイレがいくつもありまして、シャワーもあると。コインランドリーのコインの要らないようなランドリーの装置もたくさん置いてあって、そこで洗濯をする。食事は、もうちょっと大きなテントが別のところにあって、そこで、取りに行くのではなくて、配膳されたものを基本的に食べるという形になってました。避難所で作った食事を配膳して提供するっていうのが基本です。あったかいものを出して、元の生活に近づけるという意識が高いんで。日本ではその場しのぎっていうイメージが強いですよね。欧米では避難所は長くなるっていう風に考えて作りますので、そういった形になりますね。」
日本の避難所との、あまりの違いに、正直びっくりしました。日本では避難所は我慢して過ごす所、と考えられいて、そういう謙虚さに甘えてきた結果が、【避難所の風景が戦前の災害時と大きくは変わっていない】ということに繋がっているのかも、と榛沢先生。
イタリアでは専門スタッフが専用の場所で作って、配膳してくれる温かい食事。これを支えているのは、職能ボランティアと呼ばれる人たち。職能ボランティアとは、普段の仕事で災害支援をするボランティアで、国の研修を受けて、認証された本職の人たち。コックさんはコックさんとして、水道修理屋さんとして、行政職員として。自分のいつもの仕事を、被災地で行う。
一時的に過ごす避難所でも被災者の人権を尊重し、普段の生活レベルを守ることを第一に考えられている。
★災害専門省庁。イタリアでは市民保護局。
これは、「市民保護」の感覚の根付き方の違いが大きい、というこなのです。しかし、そもそも、このような避難所が実現できるのは、根本的な避難所運営の仕組みが違うから、と榛沢さんはおっしゃいます。
- 榛沢和彦さん
- 「欧米は災害専門省庁があって、その省庁の人たちはそれしかやらない。実働するのは州や県になりますので国直轄の組織がある。災害専門省庁があれば予算がつきますので、その予算をもとに、平時から専門の方たちが備蓄だとか、ボランティアの訓練だとかもできるわけで、専門省庁が責任を持ってやっているっていうスタイルが違うと思います。日本はそれが無くて、どうしても発災したあとに補正予算をつけて、そこから色んなものを持ってくるという形が多いと思うんですけど、法律上そうなっちゃってるんですね。災害救助法っていうのが、市町村主体になってますので、地方自治を守るという意味で。地方自治を守りながら国が主導するっていうのを、欧米諸国は苦労して作ってますけども、日本もそれを真似・・・学んでですね、地方自治を守りながら、国が主導しながら災害対応するっていうような仕組みを作っていかないといけないのかな、と考えてますけども。」
国の専門の省庁が主導しているんです。日本の復興庁は東日本大震災の復興のためのもので時限省庁でしかない。
国に主導権があるイタリアでは、各州の備蓄の量も法律で決まっているし、被災州の知事が手を挙げなくても、国の判断で、近隣の州が支援を始められる。ちなみに、近隣州の負担分は、あとで国からお金が出る。(立替精算的な)
また、地元のボランティア団体にも国を通して、委託された支援物資を備蓄しており、発災から48時間は、ボランティア団体が避難所を作る。
それ以降は、国や州にバトンタッチ。(国主導なので、避難所の出来に差が無い)
もちろんボランティアの人の保険や交通費も国。そして支援に行きたい人を、雇用主は妨げてはいけない、という法律まであるんです!
★海外の複合災害対策はどうしてる?
では、おしまいに、コロナとの複合災害では避難所はどうしたらいいのか? 避難所のクラスター対策について、欧米の対応を榛沢さんに聞きました。
- 榛沢和彦さん
- 「イタリアとかアメリカなんかでは、複合災害だと考えて、避難所の運営を抜本的に変えなきゃいけないというような国は無いです。というのは、すでに一人当たり4㎡という広さをとってソーシャルディスタンスはありますし、避難所で食事を作る配膳する、っていうのがもう決まってますので、そういったことはすべて三密を避けるということになりますから、今までの避難所の運営が、そのままコロナ対策になっているんですね。そういったことでいうと、日本が立ち遅れていると。残念ながら後進国で、中国も韓国も残念ながら日本を真似しないで、EUなんかの方を学んでやろう、ということが始まってます。避難所の運営だけに関しては、井の中の蛙と言わざるをえません、日本の状態は。ちょっと見本にするようなものはないかな、と私も思いますけども。」
欧米では、普段からインドやアフリカなどへ支援に行くことが多いため、コロナではないですが、既存の伝染病の対策ありきで避難所運営を考えている。だから、コロナにも対応できている。(寝食分離・ベッド利用で床からの垂直避難、など)
日本は避難所後進国で、日本の避難所には見本になるところはないと。災害の多い国なのに心配。榛沢さんは、せめて自治体は「TKB48」をと話していました。「TKB48」とは「トイレ・キッチン・ベッドを48時間以内に届けられる量、備蓄」。これをしておくことが、いい避難所への第一歩につながる、ということでした。
海外と比較すると、いかに遅れているかわかりますね。やはり日本にも専門の省庁を作って担当大臣を、と思わずにはいられません。「お仕事内閣」・・・お仕事をしてくれるのでしょうか?