衣類についている「洗濯表示」が変わります。今は洗濯機のマークやアイロンのマークが付いていますが、日本の国家規格JISが大幅に変更したことで、全く違う表示に変わるそうなんですが、それが少しわかりにくいと問題になっています。「森本毅郎・スタンバイ!」の「現場にアタック」で田中ひとみが、洗濯表示について取材しました。
まずは、消費者庁表示対策課の小椋容一さんのお話です。
★22種類が41種類に!大幅に変わる洗濯表示
- 消費者庁 表示対策課の小椋容一さん
- 「昨年の3月に繊維製品表示規定が改正されまして、今年の12月から新しい国際規格に整合した記号に、40年前から使っている現行の洗濯表示が取り変わることになります。変わる背景は、衣類などの生産や流通で海外の取引が増えていること、洗剤の多様化、乾燥方法の多様化などがありまして、それに対応した記号が必要だということで、今までの22種類の記号から41種類に増えまして12月1日から流通します。」
具体的に、何がどう変わるのかというと、大きくわけて5つの基本記号があります。
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/07/564c5c2265df1112be13e93d4ef830df-396x400.png)
新しい「取扱い表示」ポイント(消費者庁ホームページより)
- (桶マーク)===「家庭洗濯」の記号
- (△三角)=====「漂白」の記号
- (□四角)=====「乾燥」の記号
- (アイロンマーク)「アイロン」の記号
- (○丸)======「クリーニング」の記号
※これらの基本記号と、点や線の組み合わせで、合計41種類となります。
具体的には、以下のようなマークで使われます。
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/07/1bf7a56288d88f125232afb1fdc3a5df-476x400.png)
【家庭洗濯、漂白、乾燥】(消費者庁ホームページより)
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/07/f686cd2b3ec10c5c30c23b33c538a787-600x292.png)
【アイロン、クリーニング】(消費者庁ホームページより)
12月よりも前に販売されたものは、現行表示のまま売っても良いのですが、12月以降に新しく販売される衣類に関しては、これらの表示に変わってしまいます。
では、実際に、街の人は新しい記号を知っているんでしょうか?新しいマークだけを見せて、「これなんの記号だと思いますか?」と聞いてみました。
★慣れれば大丈夫?解読困難な記号たち
- ●「アイロン、水洗い、△は注意?」
- ●「これがアイロン、これは洗濯水洗い、△、□は・・・なんだろう。△はドライで洗えるとか?わかんない。□は洗濯機の種類じゃないかな。全自動とかドラムのとか。」
- ●「これ?なんだろう。手洗い、これアイロン?□と△はわかりません!」
特に「△」と「□」については、聞いた方全員が「わからない」。
昨日聞いた中では、12月から表示が変わることを知っている人は、ひとりもいませんでした。
しかし、どうしてここにきて、長年定着した表示を変えるのでしょうか。実は、「変えなければいけない理由がある」ということなんです。JISの制定を担当している繊維評価技術協議会の野村 憲二さんのお話です。
★日本独自のルールを、国際規格に合わせる“約束”をしていた
- 繊維評価技術協議会の野村 憲二さん
- 「日本は、WTO/TBT協定に批准をしております。国際貿易上、貿易障壁となるようなその国独自の規格を作ってはいけないと。ところが日本は国際基準であるISOと全く合致していない独自の規定になっているので、協定違反になる。したがってISOに整合化させなきゃいけないだろうというのが、国際社会の中の日本の国としての義務であるというのが理由なんです。」
WTO/TBT協定というのは、「WTO(世界貿易機関)に加盟している国は、国際規格であるISOと同じ表示にしなさい」というもので、今まで日本は、独自のわかりやすい表示でしたが加入国に文句を言われてしまったんです。
だから変えなければならなくなったんですが、日本がWTOに批准(加盟)したのは、1995年のこと。加盟してから20年以上経っているのに、どうして変更が今なのか?実はそこにも理由があったんです。再び野村さんのお話です。
★世界を動かすには時間がかかった!
- 繊維評価技術協議会の野村 憲二さん
- 「そもそもISOは、ヨーロッパ規格が基準になっているんですが、日本の習慣である自然乾燥記号が規定されていなかった。ヨーロッパではほとんど乾燥機を使うので、自然乾燥をする習慣がない。したがって、ISOを修正しないと整合化できないだろうということで、ISOの修正提案を日本が働きかけた。そしてISOの中に自然乾燥記号が入ったのが2012年。ずいぶん時間がかかってやっとISOの改正が認められたんです。」
ヨーロッパでは、「洗濯物を干す」という習慣がなく、さらに洗濯機自体も日本と違ってほぼヨコ型(日本はタテ型)。全然違う習慣なんです。だから国際規格を長い年月をかけて日本が変えさせたんです。
とはいえ、私たち消費者が「わかりにくい」事とは関係ありません。消費者庁に、「あまり広まっていないんじゃないか?」と聞いてみると、「周知さえるため、パンフレットの配布や、動画配信をしている」ということでした。
表示変更まであと4ヶ月。どこまで認知は広がるのか。動画などの詳細は、消費者庁のホームページで見ることができます。