去年、台風19号の影響で、千葉県の広範囲で電線が切れて停電となり、復旧その作業に時間がかかったことを覚えている方も多いと思いますが、今日は、送電線の建設工事を請け負う、創業50年の富山県の電気工事会社が、ボルダリングなどができるクライミングセンターを取得した、というお話。いったいなぜなのでしょう?
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!9月21日(月)は、『電気工事会社が、クライミングセンターを取得。新しい採用拠点に?』というテーマで取材をしました。
★共通点は「登る」!新たな採用拠点!
ずいぶん畑違いな施設を手に入れたなと思いましたが、その会社に取材すると、しっかりと練られた計画がありました。富山市の「平野電業」代表取締役専務・平野誉士さんのお話です。
- 平野誉士さん
- 「いま人手不足で、なかなか採用が思うようにうまくいかなくて、その中で色々考えていく中で、スポーツ選手が、現場仕事なので適性があるのではないかということで、弊社は鉄塔に登る仕事ですので、同じ登るということでクライマーがいいのでは?とまずは考え始めました。たまたま、富山県内でクライミングセンターが売りに出ているのを見つけて、そこを採用の拠点にしていきたいなということで、取得しました。不安はあったんですが、早い段階から応募があって、いま2名採用が決まっている状況です。やっと結果が出てきているんで、ひと安心しているところです。」
送電線の建設工事、つまり鉄塔を建てて、電線を張るこの仕事は、なかなか、なり手がなく、ここ5年は、ほとんど採用なし。特に若い世代がいなくなり、作業員の年齢層が上がってきて、非常に困っていました。そこで同じ「登る」のだから適性があるに違いない!とクライマーに目を付け、売りに出されていた県内のクライミングセンターを手に入れました。(なんというタイミングの良さ!)
8千万をかけて、最新のトレンドに合わせたクライミングの壁を新設し、登りに来ていた人に声をかけるという、かなり変化球の採用活動をしたら、なんと、この5か月半で、2名の採用が決定。5年ほぼゼロだったのに!
★仕事と練習施設!両方手に入るのはすごい!
平野電業側にとっては、大成功!では、採用されるクライマーにとってはどうなのか?日本山岳・スポーツクライミング協会の技術代表で、元選手の羽鎌田直人さんにお話を伺いました。。
- 羽鎌田直人さん
- 「スポーツクライミングの選手は、いわゆるクライミング業界の中で就職する、例えばクライミングジムに勤めて仕事と競技を両立していくというパターンですとか、あとは、もう学生終わったら引退してしまう、という話もよくあるんですけども、今回の、全くクライミングとは関係ない、違った業界の方が、我々スポーツクライミングの選手に注目してくださって、サポートをして頂けるというのは、非常に興味深く、非常に期待しているところではありますね。また、ここはクライミングの施設もお持ちということで、働きつつ、近くでトレーニングできる環境が揃っているというのは、なかなか無い形式なので、本当に選手の側からすると、非常にありがたいな、という気はします。」
クライマーにとってもいいことが多い!一番は、正社員になれた上に、近場に充実のトレーニング施設があるのは嬉しい!最近は日本選手が強くなってきて、超一流選手にはスポンサーがつくことも以前よりは増えては来ているそうですが、それ以外の大多数の選手たちは、仕事と競技の両立に苦労している。
(ザ・メジャースポーツでもない限り、どの競技でも聞きますが、試合で一週間休みます!と心置きなく言える環境ってなかなか無さそうですものね。)
実は、羽鎌田さん自身も卒業とともに選手を引退した一人。仕事との両立は想像できなかった、と。卒業後も選手を続けられる環境になっていけば、競技の裾野も広がりそう。
ちなみに、羽鎌田さんによると、手に入れた施設もいい、と。ここ「桜ヶ池クライミングセンター」は、19才以下の全国大会の決勝を行う、クライマーにとって、いわば甲子園!そこを手に入れた会社が社員を募集?と興味を惹かれますし、改装したその壁を登りに行きたい!と思うクライマーは多く、人は集まりそう。、ということです。(ちなみに国際大会も誘致の予定)
★業界全体の受注量にも違いがある!?
今回の採用方法が順調ならば、現状が大変な送電線工事の業界全体にとって、もう一つ、いいことがあるのです。再び、平野電業の平野専務のお話です。
- 平野誉士さん
- 「そもそも例えば、10件工事があったら、2件は入札不調になるくらいで、お金ではなくて、人が足りなくて仕事ができない、という状況になってまして、それはもう富山県に限らず、全国的に同業者は同じような状況だと思います。なので、繁忙期になると全国から「仕事がまわらないので来てくれないか」という依頼は来ますね。お互いにそうやって行き来してなんとか仕事をまわしている状況です。この2年間で15名採りたいなという風に考えています。そうすると本業の方の仕事が、1・5倍くらい受注できるんじゃないか、と思ってます。どこも人が足りないので、なんか一緒に協力できませんか、っていうような話は頂いていますね。」
送電線工事の業界は全国的に人手不足。去年、千葉県の広範囲な停電のときにも、平野さんは、すぐにでも駆けつけて手伝いたいが、人手がなくてもどかしかった、と。
業界全体の危機感だからこそ、今回の平野電業の施設取得について、元請け会社の「北陸電気工事」も快諾して施設の取得に協力しました。
電気は必需のインフラ。全国的な人手不足のままでは、我々は、災害時に、復旧までの時間が早くなることは期待できず、不安です。そう考えると、クライマーに目を向けた平野電業の採用は、業界全体はもちろん、我々にとってもいいニュースなんだな、と、取材をして実感しました。

近堂かおりが「現場にアタック」で取材リポートしました。