コロナ禍で日本中の鉄道会社が打撃を受けていますが、特に大変なのが「ローカル鉄道」。千葉のいすみ鉄道は緊急事態時は乗客が9割減、静岡の天竜浜名湖鉄道も春は5割減、京都の京都丹後鉄道は9割減、さらに学校の休校時は連日定期券の払い戻しと、元々、採算が厳しいローカル鉄道なので、大打撃です。この危機を乗り越えるべく、各社はなりふり構わぬ姿勢で、対策をしています。
その1つ、千葉県の銚子市内を走る銚子電鉄の取り組みが話題になっていたので、9月16日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
銚子電鉄の社長、竹本勝紀さんのお話です。
★「石」の缶詰・・
- 銚子電鉄代表取締役社長 竹本勝紀さん
- 「「えちごトキメキ鉄道」という所の社長にですね、うちがインターネットで一生懸命商売してるので「仕入れ代金払うの大変だろうから、線路に落っこってる石、線路の石ですね、これだったらタダだから、これ拾って缶詰にして売ろうぜ」って話を持ち掛けてくれたんですよ。分かりましたって、もう一社加わって、三社で缶詰セット1500円で売り出したのが、意外と、まず300セット完売しまして、100セット売れてっていう感じで。あんまり取りすぎると線路がまずくなっちゃうので、拾っては補充してって感じで、結局お金かかっちゃうんですけど。石の上にも三年って言いますけども、当社開業して97年ですから、あと3年で100年ですので、まさに石の上にも3年ですね。石のほうも一生懸命売らせていただいてます。」
社長同士が仲がいいという新潟のローカル線、えちごトキメキ鉄道の社長の発案で、銚子電鉄、えちごときめき鉄道、さらに静岡の天竜浜名湖鉄道と3社共同で「線路の石」の缶詰を発売。これが話題となり完売する状態ということでした。
中におみくじが入っているくらいで、あとはただの石なので、特に使い道もないのですが、路線を応援したい、という気持ちが売り上げにつながり、収入の助けになっているようです。
★なぜ石の缶詰を?
ただ、銚子電鉄といえば「ぬれせんべい」が有名。今まで、親会社が潰れても、社長が横領事件を起こしても、不死鳥のように「ぬれせん」で会社を支えてきました。実は鉄道は6千万円の赤字、ぬれせんは億の黒字、なので、石を売る必要があるのか?ぬれせんで十分なのでは?聞きました。
- 銚子電鉄代表取締役社長 竹本勝紀さん
- 「大体うちは苦境なんですけども、特にですね4月以降は、鉄道を利用するお客様がほとんどいなくなったという、4月から6月までで、だいたい赤字5千万円ですね。7月以降は、お客様はまぁ戻ってきたといっても、団体の利用がなくなっているので、あと貸切電車、ファンだとか、いろんな団体が貸切でって、貸切が結構ドル箱なんですけども、それも1本もなくなってしまったんですね。電車に乗るお客様がいなくなってしまった。そうするとお土産のぬれせんべいも売れないっていう、マイナスの加速度が働いてしまうんですね」
ここは地方のローカル鉄道に共通の悩みですが、通勤・通学だけでなく、地方の観光と結びついた収益が大切。それがなくなる、するとお土産も売れない、そこでネットでいろいろなものを売って稼ぐしかない、これが石を売る背景。
石が話題になって、サイトを見た人が、他の商品も買ってくれる可能性もあるので、真面目にふざけて、頑張っているそうでした。
ただ、大人気となった石ですが、応援モード一色、ではないそうです。
★ローカル線は地域の足!
- 銚子電鉄代表取締役社長 竹本勝紀さん
- 「こないだ電話を頂きました「お前ら何やってんだ、石ころなんか売りやがって。こうまでしなきゃいけないんだったら、会社やめちまえ」という風なお電話を頂きました。利用者が減っているのは事実。それでも年間40万人、1日平均1千人のお客様が利用されているんですね。通勤通学のお客様もいらっしゃる。また、免許を返納したドライバーには子供料金で電車に乗ってもらことを銚子の警察署と提携してやっている。「さっき免許を返してきたから、これから電車にお世話になるからよろしくね」って夫婦揃って挨拶に来る、そういうこともある。交通弱者の移動手段として、今、電車を止めるわけにはいかない。鉄道を残すこと自体が目的じゃない、地域に恩返したいと言う思いを語ったんです。そしたらよくわかったと、こうまでして頑張ってるんだなっていうことが分かったから電車乗りに行きますよと約束してくれた」
今回は、銚子電鉄の話でしたが、コロナ禍では経営基盤が弱いローカル線が危機。でもローカル線こそ、交通弱者の足なので止められないという、見逃せない問題になっています。