先週、気象庁が「ラニーニャ現象が発生し、台風が日本近海で発生しやすく、注意が必要」だと発表しました。昨年の台風19号では、犠牲者のおよそ3割が車中で亡くなった、と言われています。そんな中、国土交通省は、水没した車に閉じ込められる被害を防ごうと、窓ガラスを割って逃げる「脱出用ハンマー」の準備を呼びかけています。そこで・・・。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!
今日9月14日(月)は、『大雨で車が水没。しっかり備えてありますか?』というテーマで取材をしました。
★ハンマー以外では、なかなか割れません!
この脱出用のハンマーについて、JAF東京支部事業課・交通環境係 係長の善養寺雅人さんにお話を伺いました。
- 善養寺雅人さん
- 「JAFの方でも窓が割れるような専用のハンマーを、運転席の手の届く範囲に置いておいて頂いて、いざという時に使える状態にしておきましょう、というところまでお伝えさえていただいてます。まずそこですぐに手に取れるような状況、それですぐに脱出できるような状況、っていうときに、すぐに使えるようにしておくっていうのが大事だと思いますね。車のガラスはなかなか割れません。かなり強い力じゃないと割れなくできてますので、例えばJAFの実験でも、スマートフォンですとか、ヘッドレストを外して金具の部分で、内側からかなり強い力で叩いても、実際に実験したところ割れなかったという結果もありまして、そういう専用のものでないとなかなか割れないっていうのがあります。本当に命綱と言ってもいいくらい重要なものになってくると思います。」
まず大前提として、大雨の予報の際は運転を控える、水没の危険がある時は運転をやめて避難する、これが鉄則です。
しかし、最近は突然の豪雨で一気に冠水、ということもあります。水没するとドアが重くなって開かない、水で電気系統が壊れてしまうと、窓は開かなくなる。慌てて窓を叩いても全く割れない。クルマの窓ガラスは頑丈なので、脱出用ハンマーが無ければ脱出は非常に困難ということでした。ちなみに、水位によってはハンマーで窓ガラスを割ったときに水が流れ込むこともありますが、慌てないように。
脱出用ハンマーは、量販店では数百円~三千円くらいで売られていますが、普通のハンマーととは違った工夫がされていて、非力な人でも割りやすいように作られています。いずれも先端部分に尖った金属があるのが特徴で、金づちのような形のもの、窓に押し当てると先端が自動で飛び出して割るタイプなど、さまざまです。
ちなみに、善養寺さんによると、ハンマーの柄の部分にカッターが付いているタイプがおススメと。慌てると外せなくなるシーベルトを切るのに便利で、同乗者を助けるにもいいということでした。
覚えておくこと① 【専用のハンマーでないと、窓ガラスは割れない】
★脱出用ハンマーでも割れない窓もある!
このハンマーがあれば安心かと思ったんですが、善養寺さんによれば、窓について、一つ確認してほしいことがある、ということでした。
- 善養寺雅人さん
- 「一般的にフロントガラスは合わせガラスと言って、2枚のガラスと、中にフィルムを挟み込んで作られているガラスですので、衝撃があっても、割れるというよりも、クモの巣状にひび割れるというようなイメージで、粉々に割れるという形じゃないんですね。なので、そこから脱出ということは難しいカタチになります。最近一部高級車であるとか、燃費のいいお車とか、そういった合わせガラスを、サイドのガラスにも使っている車が増えてきてます。取扱説明書を見ていただければ、一般的には書いてある、という風には言われています。いざという時のために、そう言ったことは、知っておいていただくということは大事だと思います。」
割れない窓ガラスもあるんですね。フロントガラス、というのは、ヒビが入るだけで割れない仕組みなのですが、最近は、窓ガラスにもフロントガラスと同じガラスを使っている車が増えているそう。
JAFの実験では、かなり強く叩いてもひび割れるだけ。実験の写真を見ると、脱出ハンマーで打ち付けても、小さな円形のひびが入っているだけ!
だから、自分のクルマの窓ガラスがフロントガラスのような合わせガラスかどうか、確認を。心配なら、販売店にお願いすれば、普通のタイプと交換してくれるそうです。
覚えておくこと② 【脱出用ハンマーで割れる窓ガラスか確認を!】
★車内外の水位差が小さいとき、ドアが開くタイミングがある!
では最後に、もう一つ。ドアも窓も開かない!ハンマーも無い!そんな最悪の状況ではどうしたらいいのか?善養寺さんに教えて頂きました。
- 善養寺雅人さん
- 「最悪の状況なんですけども、ドアが開かないというのが、まずですね、圧力の差なんです。中と外側の水位の高さの差で圧力が変わってしまって、重くなって開かなくなってますので、ある程度、車内が水で満たされてきますと、外と中の圧力が同じになってきますと、ドアが開く、ある程度の力で開くようになりますので、その状況まで少し待って頂いてから、開けて脱出していただくという方法がございます。どちらかというと、手で開けるというのがドアですが、こういった状況になった場合ですと、足で押してみる、背中に力が逃げないような状況を作ってもらって、ぐっと押し込んでもらう、身体全体で押し込んでもらったときに、徐々に徐々にじんわり開いてくることがありますので。おそらくそんな状況になっているのは、かなりの恐怖感だと思いますんで、まず、焦ってしまうと、何事もできなくなってしまいますので、すべて落ち着いてやっていただくというのが重要ですね。」
車の中に水が入ってきているのをじっと待つ、というのは非常に怖いですが、ここで、慌てずに、パニックにならずに、中と外の水位の差が小さくなり、ドアが開けやすくなるチャンスを待つのが大切だということでした。
開けるときは、手だけの力ではなく、足の力や身体ごと思い切り力をかけて開けるように、と善養寺さん。
脱出ハンマーの準備が呼びかけられているけれど、それも万能ではない。
正しい知識、自分の車の確認、道具の準備、色々知って、しっかりと備えておくことが、万が一の時の冷静さにつながるんだな、と実感しました。次の台風が来る前にぜひ!