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Channel: 現場にアタック – TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~
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東京オリンピック。国産競技用具の泣き笑い。

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新型コロナウイルスの感染拡大で、心配なところもある、東京オリンピックですが、今日は、その東京オリンピックで使われる国産の競技用具の泣き笑いのお話です。

「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!3月9日(月)は、『東京オリンピック。国産競技用具の泣き笑い。』というテーマで近堂かおりが取材をしました。

★柔道の会場日本武道館の畳が・・・

まずは柔道。先月27日に東京オリンピックの柔道の代表選手が発表され、井上康生監督の涙が印象的でしたよね。その柔道のオリンピック会場になっている日本武道館の畳に変化が起きているのです。畳の原料、七島藺(しちとうい)という、い草の生産地、大分県国東市のくにさき七島藺振興会・事務局長 細田利彦さんのお話です。

細田利彦さん
「前回の東京オリンピックの競技では七島藺の柔道畳を使われていた。その時期にもうビニール製の柔道畳はあったけど、それでもやはり日本としては嘉納治五郎先生が始めた形の本来の柔道畳で競技したいということでされたらしい。残念ですけどね。実際、七島藺では公認が取れないので競技自体はできない、七島藺の畳の上ではね。結局、柔道競技の世界の国々でやられているので、当然どこでも手に入るようなものじゃないと競技として使えない。七島藺って今は日本産がわずかしかないので、世界に流通するほどの量はないし、柔道連盟の公認の柔道畳じゃないと競技として認められない。」

前回の東京オリンピック(1964年・昭和39年)では、柔道の父、嘉納治五郎さんが始めた本来の柔道畳で!ということで、七島藺の畳が採用されたそうです。(七島藺というのは、いわゆる”い草”の畳よりも、丈夫で、柔道に適していると言われていたものです。)

しかし、柔道競技が世界に広まるのと同時に、一部の地域でしか生産されていない七島藺ではまかないきれなくなり、さらに、どの国の選手にもフェアである、ということを考えて、柔道連盟が認めた柔道畳でないと競技に使用できなくなり、柔道場から七島藺の姿が消えていきました。

そして今回の東京オリンピックでは、中国製の化学繊維で作られたマットが使われることになった。(国際柔道連盟のオフィシャルパートナーである中国のタイシャン社が製造したものが採用されました)

★技の柔道から力の柔道へ

日本のお家芸・柔道なのに、本場日本の畳が使われなくなっていることは、やっぱり寂しいですが、これは世界で柔道がメジャースポーツなったから。世界で柔道が広まったからこその理由が、実はもう一つあるそうなのです。再び細田さんのお話です。

細田利彦さん
「競技の仕方も変わっているし、藁の畳の上で投げられると痛いですもんね。昔は技をかけあったんですよ。今は力の柔道になっているので、押したり引いたりとか柔道の仕方が変わってきたっていうのが大きいです。今の柔道畳はかなり柔らかい。私が高校の時に七島藺の上で柔道していたけど、投げられると息が止まるくらい痛い。上手な人はそんなことはないと思うけど、当然藁も七島藺もないので、時代の流れとすれば今の柔道マットの方向に行くのは仕方ないと思う。」

選手たちの体格も、ずいぶん大きくなりました。そして、細田さん曰く、柔道の仕方が”技の柔道から力の柔道”に変わってきたことで、倒れた時などの衝撃を吸収するマットの方が、けがを防げる、ということで、使われるようになりました。しかし、七島藺の畳は、夏は汗を吸ってくれるし、冬はマットに比べて冷たくなりにくい、という特徴もあるそうで、せっかく日本で開催されるオリンピックなのだから、本場の畳の足心地を体験したいな、と思っている海外の選手もいるのではないかしら?とやっぱり残念な気持ちが残りました。

今回のオリンピックでは叶わぬ夢になってしまいましたが、細田さん達振興会のみなさんを中心に、七島藺畳の文化を繋げようと働きかけ、生産者の世代交代を成功させたり、大分県内の柔道場の師範室に七島藺の畳を入れたり、学校などでも普及活動を行っているそう。1農家で1日に2畳程度しか作れない七島藺の畳ではありますが、生産者も増えているそうなので、いつか、また、七島藺の柔道畳でのオリンピックを!と思わずにはいられません。

★初の国産フェンシングウエア

一方、日本で作られたことがなかったものに挑戦した企業があります。それは、太田雄貴選手が北京オリンピックで銀メダルを獲得したことで注目されたフェンシングの用具。東京オリンピックに向けて製作しているフェンシングのあるもの、とは一体何なのか?株式会社デサントの今橋剛大さんに聞きました。

今橋剛大さん
「フェンシングの試合で着用する際のユニフォームなんですけども、フェンシングのユニフォームって言っても、普通の洋服とは違くて、ちゃんと承認とかを取らなきゃいけないので、その辺のハードルが高くて日本ではまだ作ってなかった。元々いろいろな問題はあって、トップ選手の方でもヨーロッパ人用に作ったウェアを着ていてフィットしていなかった部分があったりとか、生地がヨーロッパ製のものって洗濯するとすごく縮む、物性があまり良くない面があって、日本の選手もわざわざ2サイズくらい大きいサイズをヨーロッパから買ってきて、一回洗濯して縮めて着るような状況があったので、その辺を日本のメーカーでちゃんとした生地でできないかという打診を受けて今回開発した。」

フェンシングはヨーロッパで盛んな競技なので、ウエアのメーカーもフランスやドイツなどヨーロッパがほとんど。だから、日本人の体格に合うウエアがなく、海外製のものを着るしかなかった。しかも、オーダーメイドではなく、既製品を購入する選手がほとんどだそう。洗濯をして縮めてから着ると話していましたが、腕の長さが合ったとしても着丈が合わない・・・ということはよくある話だとか。

そこで、今回、国産のウエア製作に踏み切ったのです。しかし、国内でフェンシングのウエアを作っている企業がどこにもなかったので、最初は見よう見まねで作り、選手に試着してもらって、また作り直しての繰り返し。

フェンシングのウエアは、防護服規定になるので、国際連盟から承認を受けないと着用許可が下りない、というきまりがあります。ところが、フランスにある試験機関に、試験を受けさせてもらう、というところまで半年から1年弱くらいかかった、と今橋さんがおっしゃっていましたが、ヨーロッパのスポーツにアジアのメーカーが参入すること自体が、あまり肯定的に思われず苦労も多かったそうです。

しかし、いろんなスポーツウェアを作る中で培ってきたノウハウを持つデサント!そのノウハウを活かして、今までになかったウエアを作り、見事合格することができました。

★国産ウエアでTOKYOでメダルを!

2年がかりで作り上げたウエアを着て、東京オリンピックで、メダルを取る姿が見たい!と、おっしゃる今橋さん。最後にこんなお話を聞かせてくださいました。

今橋剛大さん
「実は今もう1種類別タイプを作っていて、それも今フランスの試験機関に提出中なんですけど、できればそれを東京オリンピックで着たいなっていう思いはあります。2タイプで選手の好みに合わせてどっちも着てもらえる形にしたいんですけど、それがスケジュール的に東京オリンピックに間に合うかというところなので、無理だったら今合格が出ているものでいこうかなという状況。

別バージョンも作りました!!選手のタイプや好みで選べるようにしたい!ということなのです。今までになく動きやすいウエアを着た、日本選手たちの活躍、期待が高まります!!もしかしたら、フェンシングの本場ヨーロッパの選手たちも、日本初のウエアを注目するかもしれませんよね!!

「現場にアタック」近堂かおり

近堂かおりが「現場にアタック」で取材リポートしました。


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