今週月曜日から全国の小中高校が一斉休校ということで、今日は、この対応に大変な【学校給食】の現場についてのお話。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!3月4日(水)は、『一斉休校 給食停止で困る人たち』というテーマで近堂かおりが取材をしました。
★給食用のお豆腐を納品しています
先週金曜日、この番組で、安倍総理のこの突然の休校要請についてご意見を募集したところ、たくさんいただいた中に、こんなメールがありました。
『私は千葉県の豆腐屋です。市内の小中学校に給食の材料として豆腐を納品しています。3月中の納品予定はすでにいただいています。それが全部キャンセルになるんでしょうか?仕事がなくなってしまいます』
放送で毅郎さんがご紹介しました。この方のその後が大変気になったので、直接お話を伺ってきました。
- お豆腐屋さん
- 「豆腐は、月曜日の朝、教育委員会から、3月分は全部キャンセルというふうに連絡が来たみたいです。(お客さんのうち小中学校の給食が占める割合はずいぶんある?)ありますね。7割ぐらいは学校です。(そうなると作る量にすごく変化がありそうですね?)だから、1釜120丁、15~16釜は普通に作っていて、それがないと、きょうは3釜です。だから今月は売上もかなり少なくなって、厳しいと思いますよ。」
メールをいただいた金曜日の時点では、市の教育委員から連絡はなく気をもんでいたが、週明け月曜日に正式に3月分全てキャンセルの連絡がきた。この豆腐店は一般向けの卸はほとんどやっていなくて、病院、高齢者施設、保育園、幼稚園などから注文を受けて納めている。その大半を占めるのが、市内およそ30の小中学校の学校給食向けの豆腐。全体の7割!!7割はすごい数字ですよね・・・。
★労働時間もすっかり減ってしまって・・・
それがなくなってしまったので売上が大幅減、そして働き方への影響も大きいようです。
- お豆腐屋さん
- 「だから時間がまるっきり変わっちゃうんです。いつもは夜中12時ごろからやっていって、午後2時、3時にならないと帰れなかったのが、下手すりゃ午前中の10時、11時で終わっちゃって。ぼくらは社員なので(勤務時間が)短かろうが長かろうが関係ないんですけど、バイトやパートの方はかなり手取りが少なくなるんじゃないかなと思うんです。これが続くとなるとまずいですよ。」
学校給食を作らない分、働く時間がだいぶ変わってしまうんです。パートやアルバイトの収入に大きな影響がある、ということで、この状況が続くとパートの方は本当に大変。その影響で、もしもほかの仕事に移られてしまったら、お店も大変ですよね。こちらの豆腐店がある千葉県の市は、地産地消ということで、豆腐のほかにも、地元産の野菜を扱っている八百屋さんも市内の学校に納めているそうですから、そこも大変だと思います。
★食品ロスをどうするのか?
さて、いまの方の地域の場合、各学校が地元のお店などから食材を調達して、学校内で給食を作っています。一方、地域に大きな【給食センター】があって、地域の学校給食を一括して作っているところもあります。そういうところでは、別の問題も抱えています。食品問題を取材しているジャーナリストの井出留美さんのお話。
- 井出留美さん
- 「規模が小さいというか、一括してセンターではなくて学校の中で給食調理を行っているところは、規模が小さいので地域のお店、地元のお店から食材を調達して小回りが利くので食品ロスはそこまで発生していません。一方、大きな規模で、給食センターで調理をしているところなどは、発注してしまって食材がきてしまうというようなことで、どうしたらいいんだろう、どこに使ったらいいんだろうという問題が出てきているということがあります。」
給食センターで一括して大量に給食を作っている所では、すでに発注してしまった食材が余ってしまっているということなのです。すでに発注してあれば、届いてしまいますものね。井出さんによると、一斉休校によって【食品ロス】が出てしまいそうなので、例えば、愛知県一宮市では、安い値段をつけて余った食材の即売会をやって15分で完売。とか、茨城県では水戸市の納豆メーカーが無償で配布。など、食品ロスを出さない苦労もあります。しかし、一方で、給食の材料を買ったお金は、親御さんたちから徴収した給食費と、自治体の予算。それを、一般の方に売っていいのか?といった問題もあります。しかし食品を無駄にはしたくないですしね・・・。難しい状況なのです。
★給食しか食べるものがない子供たち
そしてもうひとつ、一斉休校によって給食が停止なることでこんな問題もある。井出さんのお話。
- 井出留美さん
- 「学校給食しか食べるものがないという子供がいるんですね。それで夏休みなど給食がなくなると痩せてしまうという子供もいるんです。なかなか数としては見えづらいんですが、いわゆるネグレクトといって育児放棄のようなかたちで親御さんがご飯をつくらないんですね、家で。それでおなかが空いて学校給食を食べに昼近くに学校にやってきて食べたら帰るという子供もいます。だから今回の休校措置というのが、どこまでこういうリスクというか、それとの兼ね合いでちゃんと判断したのかなと思いました。」
給食が唯一の食事、という子供たちがいる・・・衝撃を受けましたが、実際の話。親がネグレクトである場合だけでなく、親自身が病気である場合、また貧困など、こうした理由でごはんを3食食べられない子供がいる。そういう子供にとっては学校給食がなくなってしまうと影響が大きい。本当にいのちに係わることです・・・。
井出さんによると、台湾では新型コロナウイルス対策の休校措置(すでに終わっています)を要請をするにあたって、政府はちゃんと休校措置をすることによって困る人たち、例えば共働きの方とか、夫婦とも働いていて小さい子がいる子供に対してちゃんと休暇を取れるようにしたり、企業が有給休暇を許さなかった場合は処罰する、といったことを同時に表明した。休校を呼びかけるだけでなく、その先まで配慮して休校措置を行った、ということなのです。
さて、日本はどうなのでしょうか??