連日暑いですが、この夏は久しぶりに政府による「節電要請」が無い夏だそうです。東日本大震災以来初めてのことで、新聞各紙では、節電と再生可能エネルギーの普及などが要因とされていました。確かに、節電はずいぶん習慣になり、定着した感がありますが、太陽光などの再生可能エネルギーの普及、と言われるとちょっと意外。本当なのか?「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「現場にアタック」で、レポーター近堂かおりが『家庭の電気。再生可能エネルギーは広がっているのか?』取材しました。
今年の4月には電力自由化があったので、まずは、再生可能エネルギーに変えた人がいるのか?街で聞いてみました。
★電力自由化、どこに変えた?
- ●「何も変えていません。メリットを感じなかったから。蓄電の技術を進化させないと自然エネルギーには変えられない、と思う。」
- ●「面倒だっていうのはあるよな。メーターをどうすんのとか。積極的に代えようと僕は思わない。」
- ●「環境汚染とかあるので、電気使うなら太陽光だといいと思うけど、費用がかかるイメージもあるし、なかなか1歩踏み出せない。もっと若かったらやったかもしれない。もうすぐって感じ寿命も。だから今までのままでいいかなって(笑)」
そもそも、自由化で契約し直した人にさえ、なかなか出会えず・・・昨日はたった一人だけ!それもそのはず、電力自由化から3ヶ月で、切り替えたという世帯は、全国の2%ほど!!少ないですね・・・。やはりみなさん面倒というのがありました。再生可能エネルギーに変えた人には出会えませんでした。また街での再生可能エネルギーに対する反応を見ると、「そんな電気が選べるの?」「高そう」「パネルを置く場所がない」・・・と、実際のところ、電力の自由化について、よく知らない人が多いな、という印象もありました。夏の節電要請が無いのは、家庭で再生可能エネルギーが広がったというわけではなさそう。
では、一方の供給側。電力会社側では再生可能エネルギーを拡げる動きはどうなっているのか。再生可能エネルギーを中心に電力を販売する会社を紹介している、パワーシフトキャンペーン事務局の吉田明子さんのお話。
★自然エネルギー中心の電力会社、増えてます!
- 吉田明子さん
- 「全体的に見ても変えている人が非常に少ないんですけど。再生可能エネルギーを重視したいというときに、そのような電力会社の情報が届きにくい状況だと思うんですよね。というのは、そういった会社、各地に実はたくさん現れていますが、圧倒的に規模が小さい。テレビCM、新聞広告を出したりといった、大手のようなことができない。ほんとにこれからかなと思っています。再生可能エネルギーを重視するような電力会社は、4月の段階ではあんまり多くなかったんですけど、今後どんどんサービスが始まってくるんですよね。」
こちらは一応、増加傾向です。電力自由化の4月の段階で、エコ電力!を売りにする会社が、準備が間に合っていなかったそうです。一般の家庭向けにサービスをできたのは、地域も限られていました。家庭向け電気への変換の仕組み作りが複雑だったそうで、半歩遅れでようやく動き出した形。今後秋から本格参入という会社もあり、増えそうです。気になる、価格については、電気の料金自体は、エコな電気に対しての国の支援もあり、さほど大手と変わらないのですが、セット割や特典などの値引きサービスの部分では、見劣りする部分もあるのかも、と吉田さんは話していました。
そうした中、小規模ならではのやり方でお客さんの心を掴もうとしている、市民団体もあります。どんな特典なのか。3つの小規模発電所をもっている、八王子協同エネルギーの加藤久人さんに聞きました。
★おまけ、差し上げます!
- 加藤久人さん
- 「契約期間1年間電力を買って頂いたら、発電所由来のもの、例えばですね。「かあさん牛のヨーグルト工房発電所」では、ヨーグルト、牛乳、チーズとかですね。「ユギムラ牧場ソーラー発電所」では、畑で出来た野菜をプレゼントする。「結の会ソーラー発電所」では、福祉作業施設で出来た、ジャムとかを景品としてお出しする。おまけだけじゃなく、八王子市民の方とか近隣の方でしたら、牧場でのバーベキューとかイベントを開催しているので、それにご招待することも考えています。」
発電所がある場所、ならではの特典を用意しているそうです。3つの発電所のうち、例えば「かあさん牛のヨーグルト工房発電所」は牧場の屋根にソーラーパネルを設置しています。(牛が発電しているわけではありません(^o^)でも、パネルを付けることで、直射日光を遮るので暑さに弱い牛たちにもちょっぴりいいことがあるそうですよ。)ここは、太陽光で、一般家庭6世帯が1年間使うくらいの量の発電ができます。
では、私たちが例えば、ヨーグルト欲しいなと思ったときこの電気を、どうやって買うのか。八王子協同エネルギーは、「みんな電力」という電力会社に、作った電気を売っています。それを受け取った「みんな電力」は、他にも、多くのこうした小規模の発電所から電気を買い取っていて、それらを混ぜて、私たち一般の家庭に販売する。一方消費者の私たちは「みんな電力」と契約を結び、月に1回、好きな特典を選べる、という仕組みになっています。(特典の数に限りはあるが、東京電力管内であれば契約できる)
発電所の場所、人によって、いろんな特典があって面白いですが、八王子協同エネルギーの加藤さんは、小規模発電の再生可能エネルギーの利点についてこんな期待もしていました。
★生産者の顔が見える電気!
- 加藤久人さん
- 「もともと、始めた理由がエネルギーの自給という大きな目標があるんですけど、小さな規模ですから自給まではまだまだ程遠いですよね。ただ、八王子の電力を八王子の人に買ってもらう図式が出来るようになったんですね。八王子市民のつながりを強くしてきたかったんですが、そういうことも期待できるかなと。電気って無機的な、火力発電所とか原発で作られているイメージが強いと思うんですけど、こういう風に人とか牛とか、ぬくもりのあるイメージをもってもえると嬉しい。」
市民から加藤さんのもとへ、お金を出すからもっと発電所を作って!とのお話が絶えないとこのこと。頼もしいですね!
電気の生産者の顔が見えることで、再生可能エネルギーがぐっと身近になるし、作っているところを見れば、その電気に変えてみようかな、と現実的な選択肢として考えられるようになるのかもしれません。そう考えると、今後こういった再生可能エネルギーは広がりそう!・・・なのですが、一方では、資金や屋根の協力の意思はあっても、長期間(15年~20年)取り壊すことなく存在し続ける、頑丈な屋根(建物)を探すのが、意外と大変!という課題もあるのです。
電気は毎日ずっと使うものだから、こうした新しい仕組みが長続きする方法を見つける、というのはなかなか簡単ではないのが現実。しかし、ドイツなどでは国が率先して動いて、国の電力の50%を再生可能エネルギーに、という目標を立てているそうですから、日本も現在の5%からどこまで上げていくのか、国の方針や国の取り組みに期待ができれば、広がっていく可能性はあるのではないかな、と感じました。
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