通販もレストランもホテルも、今は口コミ全盛の時代ですが、そんななか「商品テスト」の人気が盛り返しているようなんです。2月12日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは商品テストで人気の雑誌について。」月刊誌『LDK』の総編集長、木村大介さんのお話です。
★現代版『暮しの手帖』?蘇る商品テスト誌『LDK』
- 月刊誌『LDK』総編集長 木村大介さん
- 「テストする女性誌。世の中のあらゆる日用品や生活必需品をテストして、良い悪いをはっきり言う雑誌。例えば、洗濯洗剤、消臭剤、調理グッズ、食器、カーテンとか何でも。明らかに何でこんなもの売ってるんだろうっていう物には、もの凄く厳しいコメントを付ける、「これを買う理由はありません」と。普通の雑誌だと基本的には広告やタイアップがたくさん入っているのが前提だが、『LDK』は広告が一切入っていない。なので、逆に言えば、メーカーに遠慮せずに色々なテストができて、評価が出来る。」
商品をテストする雑誌といえば、『暮しの手帖』という生活情報誌の長年の人気企画でした(当時の名物編集長は花森安治さん)。
まだ創刊して間もない頃始まった企画で(昭和20年代)、商品の使い心地や性能をテストして、「ダメなものはダメ!」と辛口評価する姿勢が人気でしたが、実はおよそ10年前にこの企画は終了しています。
そんな中、“現代版・暮しの手帖”とも呼ばれているのが、この『LDK』なんです。
どんな手順で検証するのかというと、例えばハンドソープの場合、まず読者を集めて座談会を行います(ハンドソープに求める要望や不満をヒアリング)。そして、「除菌力」「汚れ落ち」「肌への優しさ」など、評価軸を決定していきます。
例えば「除菌力」の検証では、生肉を触って汚くしたあと、色んなメーカーのハンドソープで手を洗う。そして、数時間後の菌の増減を計測して、「A+評価」「B評価」という風に評価。そして、各項目の総合点が一番高いものが、見事ランキング一位となります(オススメ商品は「ベストバイ商品」として認定されます)。
中には酷評される商品もありますが、広告をあえて載せないスタンスなので、中立な立場で評価を行える。その分、本の実売数で利益が左右されますが、売り上げは良いようです。
★商品テストサイト「mybest」
30〜50代の主婦層を中心に人気を集めているそうで、こういった商品の比較・検討サービスは、他にもありました。株式会社マイベストの代表取締役、吉川徹さんに伺いました。
- 株式会社マイベスト・代表取締役 吉川徹さん
- 「インターネットサービスで、ユーザーにとってどの商品が一番良いのかという情報を提供している。コスメとか生活雑貨の他に、保険やクレジットカードのようなサービス分野など、色んなジャンルを比較し、ランキング形式で紹介。我々は広告で生計を立てていて、PR表記で一商品だけ紹介。掲載料や、1個売れたらいくら、みたいなお金のもらい方。ランキングの順位を融通していないので、広告主からのクレームは何回もある。広告チームは「何でこんな悪いこと書くんだ」と。コンテンツのチームとしてはランク付けの理由を伝えて、内容を「変えろ・変えない」のやりとりをよくしている。」
こちらは、『マイベスト』という、インターネットのサイト。パソコンやスマホで無料で見ることができますが、先ほどのLDKと違うのが、こちらは広告を載せているという点。お話を伺うと「忖度は一切ナシ!」とのこと。中には怒って広告を降りてしまう企業もあるそうですが、このサイトを見にきているのは購買意欲の高い人たちなので、極端に順位が低くなければ、意外と広告の効果はあるようです。
★「口コミ派」もまだまだ多いが…
このように、モノを買うときの選択肢の一つとして、「商品テスト」というものがじわじわと広がってきていましたが、では実際に街の皆さんは、この商品テスト、どれくらい活用しているのか、聞いてきました。
- ●「【商品テスト派】商品テストを見て、コードレスの掃除機を買った。一回充電したら何分使えるか。」
- ●「【商品テスト派】美容室に行ったとき、『LDK』が置いてあったら見る。肌荒れしないファンデーション。」
- ●「【口コミ派】比較サイトのデータより、自分は口コミかな。データよりも感覚的な意見が欲しい。」
- ●「【口コミ派】やっぱり口コミサイト見ちゃう。洋服とかペット用品とか。気にしないで買ってても、下にレビューがあるから見みちゃう。なんかもっと良いのがあるかなって。」
身の回りのほとんどのモノを口コミ見て買っているという、口コミ依存状態の方もいましたが、「商品テスト」よりも「口コミ」を見て買っている人の方が多数派でした。
やはり、人がどう思っているかを知って安心したい、という心理が働いているよう。あと10〜20代前半の若い世代に多かったのが、アマゾンや価格ドットコムのような口コミサイトでなく、ツイッターで口コミを検索したり、ユーチューバーの口コミをチェックしている方。
ただし、口コミが増えるにつれて、怪しい「サクラ」も増えるんじゃないかと心配している声も多く聞かれました。
★口コミ疲れ、してませんか?
そして実はこの商品テスト、長年、口コミに押されて下火になっていたようですが、LDKの木村さんによると、口コミが増えたことで、逆にいま商品テストが見直されている側面もあるようです。
- 月刊誌『LDK』総編集長 木村大介さん
- 「同じような商品ばかりで、どれを選んで良いか分からない時代だと思う。そういうものに対して、「口コミ」がある意味正義だった時代もあって、口コミがこう言ってるからこれ買おう、という方も多い。ネットショッピングなどで買い物が便利になって、商品を買うことがすごく楽になった。でもその分、商品数が膨大になって、モノを選ぶことがものすごく難しくなっている。たくさんの口コミから真実を引き出すのは難しい行為なので、今後は、商品テストの重要性がどんどん増してくるのでは。」
「口コミ疲れ」が起きている…。そういう人に、商品テストが受け入れられていました。
そもそも商品テストは、良い商品を買ってもらいたいという発想で生まれましたが、悪い結果を見て、メーカー側も商品を改善する動きもあるようなので、そういった意味でも消費者にメリットがありそうです。