きょうは「成人の日」。各地で成人式が行われ、振袖姿の新成人で街が華やかになりますが、ここ数年、振袖にある異変が起きているようなんです。1月13日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは、街の皆さんにどんな振袖を着る(着た)のか、聞いてみました。
★「ママ振」増えてます
- ●「母のおさがりがあったので、着ることはもう決まっていた。母も祖母から受け継いだ代々の振袖があったので着たいなと思ってて、ちょうど背たけとかも同じぐらいでサイズ直しすることもなく。」
- ●「親戚の方からいただいて、それを自分のサイズに合わせてっていう感じ。母とか、祖母とかが見たいって言ったので、それもあって。」
- ●「叔母のやつをそのままもらってきた。みんな振袖着ていました。結構親の着ていた子が多かった。」
- ●「母の着物を使って、ただ昔の振袖って帯が短かったらしくて、今は華やかなものが多いから、母のだと華やかな折り方にならないと言われたので、帯だけ新しく買った。成人式に行くために着るんじゃなくて、着たいから成人式に行く。」
渋谷で20代を対象に聞いたところ、おさがりの振袖を着ている人が多くいました。ちなみに振袖に関するある調査では、「約半数がレンタル、おさがりは20%、購入は13%」という結果が出ており、購入よりもおさがりの方が多数派のようです。
★ママたちは、バブル期の上質な着物を持っている?!
この傾向の背景について、日本きもの連盟・会長理事の奥山功さんに伺いました。
- 日本きもの連盟・会長理事 奥山功さん
- 「「ママ振」(ママの振袖)が増えている、正直なところ。私が販売している時も、「あなたがもし、結婚して子どもが生まれて成長した時に、娘さんに着せられるんですよ」と売ってきた。それが本当にその時代が来て、どんどん増えている。ただ、今の娘さんは多少わがままですから、「嫌、私には似合わない」と言って新しいものを着る人もいるが、お母様やおばあちゃまとの思い出があるので、お母さんの着物を持ってきて、せめて帯だけでも買いましょうかという方が見える。」
最近、お母さんが着ていた“おさがり”を、あえて「ママ振」と呼び、着こなしの相談ができる「ママ振相談会」や、リメイクを手がけるお店が増えているようです。というのも、いまの新成人の母親世代が成人を迎えたのは、バブルの頃。振袖から帯、長襦袢、草履まで、一式購入は当たり前の羽振りの良い時代に手に入れた上質な振袖を再利用する家庭も多く、帯や小物だけを現代風のものに買い替えて、自分流の着こなしで楽しんでいるようです。
また、記憶に新しい「はれのひ事件」も、この流れを後押ししています。 2018年の成人式当日、突然店舗が閉鎖され、予約した振袖が着られなくなるというパニックが起きた事件がありましたが、この影響を受けて、手元にある着物を活用しようと考える人も増えているようです。
★呉服店「成人式後も、着物を着てほしい!」
そして、着物業界は振袖だけでなく、あの手この手で着物を着てもらおうと、様々なサービスを展開しています。株式会社一蔵 広報の宮川有美さんのお話。
- 株式会社一蔵・広報 宮川有美さん
- 「着付けに親しんでいただくように、着付け教室を開催しています。成人式でお召しになった後に興味を持ち続けていただくために、着付け教室を案内することで、着物に親しんみ、楽しんでもらっている。さらに、着て出かける目的がないともったいないので、その一環として歌舞伎の鑑賞など、年間に800以上のイベントを企画。昨年だと、夏に人力車に乗って浅草をジャックしたり、着物を着てビアガーデンに行ったり、面白い企画を立てている。」
イベントは誰でも参加でき、年齢問わずいろんな方が参加しているそう。着物で食事会、着物で映画鑑賞など、幅広くイベントを開催。他にも、ウェブコミュニティを開設して若い方の声を取り入れ、ニーズに合わせて斬新なデザインの振袖も手がけているということです。
★3年後、18歳で成人式…?
着物市場を盛り上げようと、様々な工夫で試行錯誤している企業もある中、今後、呉服業界が無視できない大きな出来事が待っています。日本きもの連盟の奥山さんのお話。
- 日本きもの連盟・会長理事 奥山功さん
- 「2023年から、日本の成人年齢を18歳にすると決まってしまった。18歳ということは高校3年生の真っ只中で、それも成人式という形でもし受け取るならば、1月の第2月曜日。どちらにしても受験の真っ最中になるとか、就職を考えなきゃいけないとか、いろんな形で高校生にとっては一番忙しい時期を迎える。その時に成人式という晴れがましい式典を18歳で挙行するとなると、おそらく制服でいいんじゃないのっていう形になっていくんだろうなと。」
3年後、民法改正で成人年齢が18歳に引き下がりますが、成人式を行う年齢は各自治体に委ねられているんです。
現状では、60箇所以上の自治体が、これまでと変わらず「20歳で式典を実施する」と表明(その場合「20歳を祝う会」などと名称変更される)。
一方で、「18歳で成人式を行う」と決めた自治体も、2箇所出てきています。18歳で実施する場合、制服で出席する人が増えると想定され、着物に触れる機会が益々減ってしまう可能性も…。これに危機感を覚えた日本きもの連盟は、20歳での開催を各自治体に働きかけていますが、3年後、果たしてどうなるのか、注目です。