きょうは、「腸内細菌」について、10月23日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。というのも、今月、国内で発売されたあるサプリメントが注目を集めているんです。どんなものか、AuB株式会社の上田麻実さんのお話。
★アスリートの腸からサプリを開発
- AuB株式会社 上田麻実さん
- 「AuB株式会社は4年間で、アスリート500名・1000検体以上の腸内細菌データの獲得に成功。その知見をもとに、様々な菌をミックスした「アスリート菌ミックス」を開発し、それを盛り込んだサプリメントを開発しました。実は「アスリートと一般の方の腸内環境の違い」を過去に調べたことがありますが、一般の方はだいたい似通った腸内環境の構成。ただ一方で、アスリートは非常に特徴的、個性的な腸内環境をしていて、一人一人本当に全く違う腸内細菌を持っているということが見えてきました。」
AuBは、サッカーの元日本代表・鈴木啓太さんが4年前に設立した会社で、腸内環境を整えるための、「オーブベース」というサプリを開発しました。
アスリートは、普段、運動と食事に人一倍気を遣っていますが、そんなアスリートたちの健康的な腸内細菌を徹底的に研究。すると、特に「酪酸菌」という菌の数が多いことと、とにかく保有している腸内細菌の種類が多種多様であることがわかったそうです。そして特徴的な29種類の細菌をピックアップし、独自の配合でブレンド。それらを「アスリート菌ミックス」と名付けました。
ちなみに、一袋90粒で5500円。今月から予約販売を開始したところ人気となって、既に準備数が完売。現在は追加注文を受け付けている状況のようです。
■「オーブベース」
クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で先行予約実施中
https://www.makuake.com/project/aub/
★腸を覗けば競技がわかる!
「腸内の菌とアスリート」にそんな関係があるのかと思ったんですが、実は腸内の細菌とアスリートの関係については研究が盛んで、ハーバード大学の研究ではマラソンが早い選手の腸に「マラソン菌」とも呼ぶべき特徴的な菌が発見されたという発表もありました。
さらには、神鋼環境ソリューションという会社は昨年から、善玉菌を増やす効果のあるミドリムシをサプリ化して販売したり、「アスリートと腸内環境」の研究は、様々な場所で広がっているようです。
さらに、研究はこんなところまで進んでいました。再び、上田さんのお話。
- AuB株式会社 上田麻実さん
- 「サッカー・ラグビー・長距離選手の腸内細菌を機械学習させることに成功しました。この機械学習で何がわかるかというと、例えばサッカー選手の機械学習の中に当て込むと、「あなたはサッカー選手でしょ」ということが、92%の確率で当てることができます。一番大きな影響力を持っているのは食事だが、例えばラグビー選手は瞬発力やパワー系を求めます。一方で長距離選手は持久力が必要。そうなると、トレーニングの内容や、食事の内容が異なってくるのではないかと考えています。」
競技人口が多く、且つ、検体数も多いサッカー・ラグビー・長距離走の3競技においては、腸を覗くだけで、何の選手か言い当てられるそうなんです(しかも92%という高確率!)。それ以外にも、ゴルフ、バスケ、バレー、テニスなど27の競技でも、80%の確率で当てられるそう。
やはり「食事」の違いが大きく影響しているようですが、もちろんメンタルも重要。例えば、ある集中力を必要とする競技の選手は、集中力に関係する菌が、一般の人よりも133倍高かったということが、先日、明らかになったばかりだそうなんです。
「腸脳相関(腸と脳みそは繋がっている)」というように、やはり、メンタルも深く関わってくることが、アスリートの腸からも見えてきました。
★ディープインパクトの乳酸菌が競走馬の救世主だった
まだまだ調べてみると、色んな可能性が詰まっていそうですが、一方で、「人」以外のアスリートについても、こんな研究がありました。岡山大学・農学部教授の森田英利さんのお話。
- 岡山大学・農学部・教授 森田英利さん
- 「個人的に運動やアスリートに昔から興味があり、人間以外の動物でアスリートといえばサラブレッド。当時のダービー馬のキングカメハメハやディープインパクトなど、たくさんの GI馬の糞便を集めました。馬にはあまりビフィズス菌はいないが、ディープインパクトとからたくさんのビフィズス菌が取れてきました。それを培養してそれ以外馬に飲ませると、生まれてすぐの下痢の回数が減ったんです。 健康でないと練習できない。調教をきっちりこなせる馬が、競争能力が高くなっていったのではないかと思います。」
競走馬が強くなるかどうかは、幼い頃にどれだけ順調に成長できたかが影響してくるそうなんですが、特に馬はお腹を下しやすいため「腸内環境をいかに健康的に保てるか」が勝てる馬の条件になってきます。そこで森田さんは、名馬と言われる馬の腸内に、数多く存在していた乳酸菌から、馬のためのサプリを作って商品化。現在では多くの競走馬がこのサプリを利用している程、サラブレッドの育成には欠かせないものになっているそうです。
ここまで話を聞いて「例えば、サッカーが上手くなりたければ、サッカー選手が多く保有している菌をたくさん食べればいいのか!」と思ってAuBの上田さんに聞いてみたんですが、「それは違う」とのことでした。極端に自分と違う菌をたくさん取り入れても、ただただお腹を下すだけのようで…。というのも、人ひとりが保有している腸内細菌は100兆個~500兆個(1・5キロ~2キロ)あり、ある菌だけがずば抜けて増えると、逆にお腹の環境を壊してしまうことになるみたいです。
考えてみれば当たり前で、きのうまでただの人だったのが、サプリを飲んだだけでいきなりアスリートになれるわけではありません。いきなりではなく、まずは、少しずつ菌を入れ替えて、段階を踏んで腸内環境を変えていくことで、アスリートに近づける、そんなことのようでした。
★腸内細菌は長寿ももたらす
では、この腸内細菌とアスリートの研究が今後、私たちにどのような影響をもたらしてくれるのか、森田さんに聞いてみました。
- 岡山大学・農学部・教授 森田英利さん
- 「90、100歳まで生きている方は、乳酸菌やビフィズス菌など、そういう種類の腸内細菌が非常に増えています。そこに「運動」というファクターが加われば、さらに長寿や健康寿命に、十分プラスの効果が働くのではないか。」
長寿の人は、乳酸菌を多く持っているということがわかっているそうですが、そのメカニズムまでは、まだ明らかになっていないそう。今後、アスリートの腸の研究が進む中で、どうやって腸内環境を変えていけば長生きできるのかが見えてくるかもしれません。