21日、火曜日は関東などで大雨・強風となりましたね。私も外を歩いていて、周りの人の傘がひっくり返ったり、壊れたりという光景を見かけました。そんな中、丈夫でしかも軽い折り畳み傘が、なんと、釣り具メーカーから出ていると聞いたので、5月23日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
釣り具ブランド「ダイワ」を展開する、グローブライド株式会社のアパレルマーケティング部長 小林謙一さんのお話です。
★こんなに軽いの!?釣竿の技術を用いた「折りたたみ傘」
- グローブライド株式会社のアパレルマーケティング部長 小林謙一さん
- 「我々はカーボンの釣り竿を長年作り続けていますので、軽量化の技術を持ってます。その傘の骨というか中棒は、通常アルミとか鉄とかで重たいんですけども、それをカーボンにすることで、非常に軽量な、約76gで50㎝。大体スマートフォンの半分、というような特徴の商品でございます。」
この軽さを実現するために、骨組みをカーボンにするだけでなく、傘を伸ばしたり折り畳んだりする機構も釣り竿の技術も応用して、金具を極力減らしています。
ただ、釣り竿の場合は魚の抵抗に耐えられるように伸ばしたまま固定されることが重視されますが、折り畳み傘の場合は雨風に耐えて、かつ簡単に畳める機能が求められ、そこが結構難しかったらしく、この傘の開発には3年がかかったそうです。
お値段はこの50㎝のタイプで1万円と決して安くはないのですが、この軽さから、釣り具の客層とはかなり異なる、30代~50代の女性の購入が多いそうです。
そして、釣り具ブランドとして培ってきた技術は他にも応用されているといいます。再びグローブライド株式会社小林さんのお話です。
★釣り具技術、アパレル業界へ進出
- グローブライド株式会社のアパレルマーケティング部長 小林謙一さん
- 「これは普通のニットですけど、非常にびっくりするぐらい撥水能力が高い。少々の雨だったら全然対応できて、これは釣り環境でも対応できるような防水・撥水技術を今までずっと研究してきた結果を、一般のもっと広いお客様にも体験頂けるような、そういうような展開で基本的には商品を作ってきてます。」
見た目は、普段着としてまったく違和感がない白いニットですが、これに水を思いっきりかけてもまったく染みないんです。他にも同じような機能のニット帽や、釣り糸の構造を応用して軽量化されたコート。また、ルアーを使ったピアス・イヤリングなど、アパレルに力を入れていて、原宿そして表参道ヒルズにコンセプトショップも構えています。
表参道ヒルズの方の店舗に行ってきたところ女性向けのお洋服もたくさんあって、一見、釣り具メーカーがやっているお店とはまったく分からないくらい、表参道ヒルズに馴染んでいました(笑)
このように釣り具の技術を活用して新ジャンルに参入する動き、他にもあるかなと探してみたら、ありました。竹で作った、江戸時代からある釣り竿、和竿の技術を応用した「杖」を作っている方を見つけたので、伺ってきました。
★竹竿技術を応用した「杖」
「和竿工房やす」の望月保宏さんのお話です。
- 「和竿工房やす」の望月保宏さん
- 「杖はですね、私の同期のものが脳梗塞というか小脳をやったんですね。それで動けなくなっちゃて、杖がないと動けない体になってしまったんで、彼のために作ったのが最初ですね。逸品もので、他の人が持っていないようなものができますし、綺麗ですし、軽いし。絶対こんなのね、使ってる人が折れて怪我したんじゃ話になりませんので。そこらへんがものすごく和竿の技術入ってるんですよね。」
こちらは一点ものということで今手元にはないのですが、先ほどの折り畳み傘と同じくらい、軽かったです。
望月さんは、竹竿釣りの趣味が高じて職人さんの下に弟子入りし、竹竿作りを習得した方。「本当に釣り好きな人は竹竿を使う。竹の竿だとやわらかくしなるから魚が暴れない」と力説していました。
竹竿には、竹同士を継ぎ合わせる技術のほか、漆塗りの技術など日本の伝統工芸の技術が凝縮されていて、望月さん、頼まれれば杖以外にもしゃもじやお箸など、割と何でも作れちゃうみたいです。
ですがそういったものは知り合いに頼まれて作るだけで、儲けようとは思ってない。むしろ忙しくならないように仕事量をセーブしていると言っていたんです。
杖や、お箸という形でならせっかくの竹竿の技術を広く知ってもらえるチャンスかなと思ったのですが、望月さんは今、竹竿師さん達が置かれている状況をこのように説明しています。
★後継者問題だけではない、道具調達の問題も
- 「和竿工房やす」の望月保宏さん
- 「道具なんですよ、道具を作っている方がいなくなっちゃった。いろんな道具を使ってるんですけど、手作りの道具ばっかなんですよ。その道具できる人がみんな高齢になって、いなくなっちゃったんで、今その道具を調達するのが大変ですね。やすりもかなりの種類持ってますし、桐なんかここに150種類ぐらいあるんですよ。それ作ってる人がいなくなっちゃっていないとかね。私はもう退職してるから家賃が払えればいいという気でやってますからそれほどじゃないですけど、これ商売でやろうと思ったら竿屋なんかたぶんできないと思いますよ。」
今主流の、カーボン製の釣り竿はアパレルにも参入する位元気があるけれど、昔ながらの竹竿は職人さんも道具を作る人も減っているという実態が見えてきました。