100年に1度の開発といわれ、日々大きく変わる街「渋谷」。また新たな高層ビルができるということで、5月6日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは先日発表になった新たな高層ビルについて、東急電鉄、渋谷開発事業部のまちづくり推進担当、浜本理恵さんのお話。
★渋谷の再開発、完成は2027年!
- 東急電鉄 渋谷開発事業部のまちづくり推進担当 浜本理恵さん
- 「今年は、「渋谷スクランブルスクエア」第1期東棟が11月に開業します。こちらは渋谷で一番大きなビルで、地上47階、230mの高さです。最上部には屋内と屋外の展望施設を設置し、晴れた日には富士山まで見られるパノラマビューを実現します。また、「渋谷フクラス」も10月に竣工。もともと東急プラザがあったところが、生まれ変わって12月に開業します。それ以降、23年度に渋谷駅桜丘口地区、最後に27年度に渋谷スクランブルスクエアの第2期ができる、長いプロジェクトになっています。」
いま、渋谷の街全体が大変身中!きっかけは、東急東横線の駅を地下に持って行ったことに始まります。そこから・・・
- 2012年、東急文化会館の跡地に商業施設「渋谷ヒカリエ」が開業。
- 2017年には宮下公園の都営住宅跡地に、シェアオフィスや住宅からなる「渋谷キャスト」が誕生。
- さらに去年、地下化した東横線の線路の跡地に、グーグルが移転するクリエイティブオフィス「渋谷ストリーム」
- 去年はもう1つ、保育施設もある「渋谷ブリッジ」がオープン。
- そして今年11月、東急東横店東館の跡地、渋谷駅の真上に「渋谷スクランブルスクエア」。
- 12月には、東急プラザの跡地に「渋谷フクラス」誕生
というわけで、2027年まで、次々と開発が続きます。
★宮益坂も道玄坂も上らずに済む!?
ただ、こんなに次々ビルを作って、いったい何をしようとしているのか?いくつか狙いがあるそうですが、そのうちの1つを、東急電鉄、浜本さんに伺いました。
- 東急電鉄 渋谷開発事業部のまちづくり推進担当 浜本理恵さん
- 「渋谷という街は、文字通り「谷形」をしている。渋谷駅を谷底に、すり鉢状になっていて、高低差があって移動しづらかったんです。今回の開発では“導線改良”をポイントにしていて、これまでは宮益坂上から道玄坂上に行くには、下りて上がってという移動でしたが、今回の開発で、宮益坂上からはヒカリエを通って、スクランブルスクエアを通過して、マークシティまで行けるということで、真っ平らに移動ができます。4階レベルの移動になるので、みなさん、いつも4階から1階まで下がって、また4階まで上がってというのが現状でしたが、それが4階レベルでずっと歩ける形になります。」
渋谷再開発は、街全体の活性化に加え、導線を変える狙いもあります。これまでなじみのなかった地域に人の流れを作るなど、いろいろな導線改良がありますが、その中の1つが、宮益坂から道玄坂への高低差の導線改良。坂の上と上をビルで結ぶことで、登ったり下ったりしなくて済むというものです。
具体的には、宮益坂の坂上には、渋谷ヒカリエの「4階」の出入り口がありますが、そこから入って、ビルの中を西へ、スクランブルスクエア、マークシティーと進むと、道玄坂の坂上に出られるようになります。
渋谷駅を始点に考えると、駅でまず4階まで上がってしまってからビル内を進めば、4階分もある坂道を上ることなく、フラットに坂上まで行けるというわけで、これは楽になりますね!
★渋谷駅で迷う原因は“ぐるぐる問題”
と、ここで心配なのが渋谷駅。東横線が地下になってから「とにかく迷う」という声が多いようです。再開発でまた迷うのか?そもそも何故私たちは渋谷駅で迷ってしまうのか?その疑問に答える本『なぜ迷う?複雑怪奇な東京迷宮(ダンジョン)駅の秘密』という本を編集した、実業之日本社の編集長、磯部祥行さんに伺いました。
- 実業之日本社・編集長 磯部祥行さん
- 「渋谷駅は「地下5階」から「地上3階」まで。階段やエスカレーターで移動しますが、窓がない地下空間でぐるぐる回されると、自分がどこを向いているか分からなくなる。デパートみたいに同じ場所で往復するのではなく、駅の構造上、後から施設が追加され、階段の位置がまちまちで、エスカレーターを上った後、180度回り、また90度回るような事が繰り返しあるので、迷いやすいのでは。電車に乗っていると進行方向と後ろと右左しか考えていないのに、下りた瞬間からぐるぐると回らされるので、どこを向いているのか分からなくなる。スイカ割りの前にぐるぐる回されているような感じ。」
まず今の渋谷駅の難しさは、前提として2027年まで工事が続き、駅が日々変わっていくので「覚えたとたんにまた変わる」という難しさがあります。
加えて難しさを増しているのが、磯部さんの指摘する“ぐるぐる問題”。磯部さんの計算では、「地下5階」の副都心線から「地上2階」のJR山手線への乗り換えが一番大変で、なんと9.5回転も回っていることになるそうです。同じ場所ではなく、歩きながらぐるぐる回らされるので方向感覚を失ってしまいます…。
★「アーバンコア」で“ぐるぐる問題”解決!
ではこの分かりにくさ、東急はどう考えているのか?東急電鉄の浜本さんに伺いました。
- 東急電鉄 渋谷開発事業部のまちづくり推進担当 浜本理恵さん
- 「やはりお客様には、渋谷駅わかりにくいよねとか、動きが辛いよねというお話も頂いているんですが、今回の開発では、「アーバンコア」と呼ばれている地下から地上まで一気に上がっていけるような設備も作っていきます。渋谷駅の地下は沢山出口があるんですけど、番号が凄く分かりづらくなっている現状があります。これまで新しい建物が出来るたびに番号を振っていて、渋谷キャストだと「13番」で、全く反対側にある渋谷ストリームが「16番」で、番号が近いのに全然違う所を指していました。今回は、渋谷の地下を大きくA・B・C・Dの4ゾーンに分けて、ここから新しく番号を振っていこうと思っています。」
「アーバンコア」とは、デパートのエスカレーターように同じ場所で垂直に上って行ける拠点のこと。今の渋谷駅のように、ぐるぐる歩き回りながら1階ずつ上がっていくのではなく、建物の一箇所を貫いてエスカレーターやエレベーターを通す構造です。歩き回らないで一直線に上がっていけるので、磯部さんが指摘していた“ぐるぐる問題”も解決!というわけです。
またバラバラな出口番号も、ハチ公側をA、ヒカリエ側をBなどとゾーン分けして振り直して整理するそうです。駅の場合「どっち側に出るか?」が分かれば、「反対側に出てしまった!」なんてことはなくなりますね。
★会社の垣根を超えた標識づくりを
これで渋谷駅は本当に分かりやすくなるのか?磯部さんに伺うと、ある駅を反面教師にすると良さそうだと分かりました。
- 実業之日本社・編集長 磯部やすゆきさん
- 「渋谷以上に迷いやすい駅というのが、新宿駅だと思っています。例えば、丸ノ内線の西口を出て、JRの南口に行こうとすると、途中で案内標識が消えてしまいます。また新宿駅の西口の場合は、進行方向に矢印がついているんですけど、矢印は上向きはまっすぐ、左斜め上は左斜めに進むのが一般的なんですけど、場所によっては階段を上るところに、斜めの矢印がついている。矢印の使い方が統一されていません。これは管轄する事業者がそれぞれ違うデザイナーで計画しているからだと思います。統一して欲しいのが利用者の願いです。」
新宿のように、小田急・京王・東京メトロ・JRの各社が、それぞれのデザインで表示を作っていると、つながりが悪くてちゃんと導かれない・・・
このあたり渋谷はどうかと東急電鉄の浜本さんに伺うと、一番複雑な地下部分を「東急と東京メトロで共同して整理していく」、ということでしたので、今後に期待ですね。