生活にか欠かせない「ハンコ」ですが、最近、いろいろ変化しています。外国人に人気のハンコも登場しているとか。2月11日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
業界ではハンコのことを「印章(いんしょう)」と呼びますが、最近、印章業界が変わってきているようです。全日本印章業協会の福島恵一さんのお話です。
★ハンコ店、激減
- 全日本印章業協会 福島恵一さん
- 「世の中のデジタル化の波の中で、ハンコはアナログの最前線。東京だけでも40〜50年で、東京の印章店1000店舗あったのが300店近くに減っている。後継者不足が大きな要因で協会の会員も年配の方が非常に多いのが現状。以前に比べてネットなど販売方法が増え、価格も下がってきている。
」
「後継者不足」という問題が大きいんですが、ハンコ屋さんの数が大きく減っています。文字を掘る機械も日々進歩していて、1本単位の値段も下降気味ということもあって、店自体が減ってきています。
★茨城県庁は「脱ハンコ」加速
そして、もうひとつ。最近大きく変わってきているのが「脱ハンコ」の流れです。例えば茨城県では、去年から脱ハンコの流れが進んでいます。茨城県・ICT戦略チームリーダーの菊池睦弥さんのお話です。
- 茨城県・ICT戦略チームリーダー 菊池睦弥さん
- 「茨城県庁では、いままでは決裁書類が回ってくる度に、中身を審査してハンコを押して次の人に書類を持って行っていたが、現在は電子上で回ってくるので「承認」を押せば自動的に次の人に書類がまわるように変わりました。それによって「書類の持ち回り」が少なくなりました。茨城県の場合、1番多くて最大70のハンコを書類に押すことがあった。そうすると担当者が書類を持ってずっとまわる、それだけが業務になっていて非効率だった。そこが改善されたというのが一番大きいですね。」
関わる課が多いほど、必要なハンコが増えてしまうということで、70のハンコが必要なのは、茨城県庁内の取り決めを決める文書だったそうです。茨城県庁では、去年の4月から「脱ハンコ」の動きを始め、最初は全体の13%くらいが電子決裁になり、今では99.1%。ほとんどの書類が電子決裁できるようになりました。
★「脱はんこ」は様々なメリット
そしてさらに、電子決裁にすることによって、こんな効果もありました。
- 茨城県・ICT戦略チームリーダー 菊池睦弥さん
- 「昨年、「旧優生保護法」の対象になった人を確認するために、過去の文書を探すため、県の公文書館で多くの職員が書類探しに奔走した。その時期、公文書の改ざん問題もあり、文書の検索性を高めて、合わせて文書の改ざん防止を図ることを目的として、例外なく電子決裁率100%に向けて取り組むという指示が出た。それがきっかけ。」
茨城県庁には、全国から脱ハンコ化の仕組みの相談などが来ているそうで、国民としても「紛失しました」では困る為、今後はどんどん広まっていくかもしれません。
★スティーブン=守定文?外国人に人気「デュアルハンコ」
そうなるとさらにピンチなのがハンコです。この流れではさらにハンコが必要なくなってしまうかもしれません…。そんな中でいま話題となっているのが、品川区の大井町駅前にあるハンコ屋さん。少し特殊なハンコを売っていて、それが大人気となっています。どんなハンコなのか。文福堂印房の松崎文一さんのお話です。
- 文福堂印房 松崎文一さん
- 「非漢字文化圏の方々、主にアメリカ、ヨーロッパの方に人気です。独自のハンコで、アルファベットと漢字をひとつのハンコの中に入れてる「デュアルハンコ」。「2重」という意味でアルファベットも漢字も読めるというもの。HPを見てきてくれる人が着実に増えています。日本への理解も進んでいるようで、漢字はただの文字ではなくて意味を含んでいる。音と意味を組み合わせてその方に少しでも良い意味になるように漢字を考えています。」

文福堂印房 松崎文一さん

漢字とアルファベットの両方が彫られたデュアルハンコ

偶然、日本人の苗字とかぶることもあるようです。この方は「Eden=イーデン=飯田」

文字数の多い「Elizabeth=エリザベス=襟座部洲」さんは、下段のアルファベット白抜き部分が大変

一つ一つの音に当てはまる「漢字リスト」を見せながら、どの文字が良いかお客さんと話し合います

せっかくなので、「森本毅郎Stand-by」の、“Stand-by”部分をデュアルハンコにしていただきました

あて字ではなく「Stand-by」は「準備万端」と翻訳。この辺に、松崎さんのセンスが光ります
こちらは、外国人観光客向けのハンコ。例えば、法律関係の仕事をするSteven(スティーブン)さんは、「守定文(定められた文章を守る)」と当てるなど、その人の個性に合わせて、名前と漢字の意味が合うように考えます。
旅行中で予定がつまったお客さんが多いので、打ち合わせの接客時間をのぞいて、1本30分、おそくとも1時間で仕上げます。外国人だけでなく日本人のお客さんも増えているそうで、海外にホームステイする人、仕事で海外に行く人がお土産として持っていくなど、大人気なんだそうです。そしてこの動きは業界でも広がっていて、似たような形で外国人向けのハンコを作るお店が増えていて、東京の印章共同組合では英語のパンフレットも作ってお店に配布しています。
★輸出される“日本文化の象徴”
文福堂印房の松崎さんは、いままでとは違ったハンコの需要について、
- 文福堂印房 松崎文一さん
- 「従来、我々ハンコ屋は、お客さんが必要になったから買いに来るもの。急に車を買うとか相続の問題でハンコが必要になって注文する。デュアルハンコは必要は全くないが欲しくて買う。これでハンコが広まっていってくれれば私共はありがたいと思います。」
デュアルハンコは、新たな需要。今後さらなるビジネスチャンスがあれば、興味を持った若い人が印章業界に入ってきてくれるかもしれません。そうすれば後継者不足の問題解決の糸口になるかも…。国内では減るハンコ、海外では増えるハンコ、今後はどうなるでしょうか。

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!