「ジビエ」とはフランス語で「天然の野生鳥獣の食肉」を意味します。鹿や猪、熊やウサギなどのお肉料理ですが、このブームを受けてか、東京ビッグサイトで「第1回鳥獣対策・ジビエ利活用展」が11月20日から3日間に渡り開催されました。11月22日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
なぜいまジビエがブームなのか、展示会にも出店していた、一般社団法人猟協・理事長の原田祐介さんのお話です。
★ジビエブームの背景には、深刻な鳥獣被害があった
- 一般社団法人猟協・理事長 原田祐介さん
- 「いまジビエがブームになっちゃってるんですが、どちらかと言うとジビエを流行らせないといけない理由があるんです。それは、「鳥獣被害」がひどいので、一定数獣を間引いていかなきゃいけない。今までは間引いた個体を人間が食べきれない部分は捨てていたけど、それじゃいけないので、ジビエと言うものにスポットを当てて余すとこなく利活用しましょうっていうのがいまの流れです。
流行ってますね。大手の食品会社さんとか一般の小売とか含めて販売が追いつかないような状況になってます。」
もちろんジビエが美味しさもブームの要因ですが、鳥獣被害の深刻さが背景にあるようです。農林水産省2016年のデータでは、野生鳥獣による農作物被害は年間およそ172億円。獣が増えすぎたせいで、農作物の被害や、山間の大きくなった獣道に雨水が染み込んで土砂崩れを起こしてしまうこともあるそうです。つまり、増えすぎた鹿や猪の駆除する際に、何か有効に利活用出来ないかということで、ジビエとして流行らせようとなったのがここ数年の動きだったんです。
★ジビエとして活用されるのは1割未満
では実際、どのくらいの鳥獣が利活用されているのか。再び、猟協の原田さんのお話です。
- 一般社団法人猟協・理事長 原田祐介さん
- 「いま国内で猪・鹿を中心に年間で113万頭、有害駆除の名の下に獣を獲ってます。その中でジビエのお肉やペットフードなんかにちゃんと利活用されているのが9万頭。残り104万頭はどうしてるかというと、残念ながら捨ててしまっているというのが現状です。解体施設の不足や解体技術者の不足、解体をするために保健所の許可をとった施設の整備が必要になりますし、山奥で解体施設が近くになかったりすると残念ながら捨てざるを得ない現状があります。一部、自分たちが食べる分だけは利活用する自家消費をする人もいるんですが、なかなか食べきれないほど殺めますので、捨てるものの方が多くなっちゃってる感じですね。」
駆除動物で、ジビエとして利用されるのはたったの1割未満。鳥獣が増えるに伴い年々狩猟数は増えていますが、解体する施設不足、従事者の高齢化など、様々な要因で捨てざるを得ない現状のようです。国は2023年までに国内の鹿や猪を半減させようとしているが、それを上回る繁殖ペース。
★メールでお知らせ「みまわり楽太郎」
そこで、この利活用を進めるために様々な最新技術を活用しようという動きが出てます。NTT・PCコミュニケーションズの原田幸顕さんのお話です。
- NTT・PCコミュニケーションズ 原田幸顕さん
- 「こちらの製品は「みまわり楽太郎」です。農作物の被害とかで動物・鳥獣を捕獲するための檻とか罠を監視するための装置で、檻とか罠が作動すると写真を撮って、メールで猟友会の方や自治体の方にお知らせするシステムです。モノ自体はお弁当箱より少し大きいくらいのものです。乾電池4本で動くものになってます。弊社としては全国の自治体で50箇所以上の自治体に導入いただいている状況です。やはり見回りの労力が軽減されたというのが一番喜んでいただいているところかなという風には思っています。」
環境省の決まりで、仕掛けた罠については毎日確認が必要になるのですが、高齢になると毎日見回るというのは非常に辛い。「みまわり楽太郎」を導入することで、メールで確認できるようになるわけです。特に、ジビエとして動物を食べる場合は、罠が作動してからすぐに処理することが必要不可欠となりますが、このシステムがあれば非常に効率良く設置した場所を回ることができます。
★とらえた獣を自動で運んでくれる装置「かいしゅう君」
さらに、こんな便利なシステムもあります。猟協の副理事長・仲村篤志さんのお話です。
- 猟協・副理事長 仲村篤志さん
- 「これは個体自動搬送装置「かいしゅう君」というものです。山間の奥地で取れる個体をハンターの方が運ぶのが大変なので、駆除が進まないと言う事象が起こっているんです。そんな中で、AIやGPSがこれだけ発達してきているので、自動運転をして、スマホでピッと押せばプログラミングされた場所に自動で持って行ってくれる。ハンターがお年寄りになってきているというのがメディアで流れてますが、そういう高齢者の労働力に変わるロボットという形で開発しています。今までは地面をズルズル引きずるなり、製品として売るためにはお肉に傷を付けてはいけないし、より便利に安全に安心して食べていただけるようなツールにしていただくということで、開発しています。」
除雪機のようなキャタピラの上に荷物を載せられて、耐荷重は150キロまで。自動運転技術を生かし、将来的には山間部の買い物難民へ荷物の運搬なども考え中とのことでした。
また、猟協では「かいたい君」というプレハブ型の解体施設も提供しています。こちらは、従来は1500万円ほどする建設費が300万円ほどで済むため、解体施設不足解消にも役立つシステム。今年9月に発売して以来、多くの受注が来ているそうです。
★狩りガールも出てきた!いま狩猟が熱い!
最後に、猟協の原田さんは、狩猟業界の明るい変化についても話してくれました。
- 市川さん
- 「でもね、ここにきて随分若い人たちの参入が増えてる!東京の狩猟免許の試験なんかも2時間くらいでいっぱいになっちゃったぐらいなんで。いま若い子が究極のアウトドアとして狩猟業界に入ってくるというケースが増えてます。先ほど聞いた話なんですけど、就活の時に変わった免許を持ってると役に立つから取りに来てる方も中にはいるみたい。狩りガールちゃんなんかも増えてますしね、狩猟をやる女子が増えてます。(女性でもできる?)できますできます。女性の方が一生懸命やるんで、狩りガールなんてなめた言い方しちゃ失礼な、一流の猟師さん、一流の考えを持った女猟師が多数いますよ。」
若い人が入ってくるのは良い傾向ということで、狩猟というものを一つの職業として成立させるために、狩猟から流通までの出口戦略や、後継者育成を積極的にしていきたいと仰っていました。