職人さんと言うと一人前になるまでは親方や先輩の元で技術を磨くというのが、これまで常識と思われていましたが、国土交通省が今年5月から「建設技能トレーニングプログラム」というサイトを立ち上げたという事です。
家や建物を作る際に重要な役割を果たす職人さんの働き方改革について、9月3日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは新しい「建設技能トレーニングプログラム」について、国交省・土地・建設産業局の島田浩和さんに詳しい内容を伺いました。
★より分かりやすくするために動画もついたサイト
- 国交省・土地・建設産業局 島田浩和さん
- 「これはスマホとかタブレット、PCから登録不要で簡単に閲覧が出来るモノになっている。コンテンツとしては基礎編、職長編、指導編に別れていて基礎編については22職種ある。基礎編は建設現場で働く技能者が作業する上で重要な点を動画でも紹介している。」
略して建トレは建設現場で働く職人さんに効率よく技能を学んでもらうモノ。なので基礎編、建設現場の指揮や監督をする職長編、指導者編に別れているんですが、テキストや画像だけでなく動画を組み込まれているんです。さらに基礎編は22の職種別になっていて職人さんになったばかりの人でもスマホなどを使っていつでもどこでも効率よく技能を学んでもらえます。
★若者にアピールする狙いもある
国交省が旗振り役となって開設した建トレには建設業界が抱える課題を解消する為に業界団体が一致団結して取り組んだという事なんです。再び島田さんのお話です。
- 国交省・土地・建設産業局 島田浩和さん
- 「各団体が協力して作ってもらって様々な職種で実際に動画の撮影を協力してもらった。皆さんも若手が入ってこないというのは共通認識の問題で何とかしたい思いがあった。教育のサイトがそんなにあるわけではないが7・8万アクセスで一定の成果は得ている。ユーチューブなどもあり動画を用いた手段でアピールしていくのも今後やっていくべき。」
どの業界もそうですが建設業界にとっても高齢化や人手不足は深刻な問題。そこで若い人たちに建設業界の仕事を知ってもらう事も重要になってきた。そうした中でスマホでユーチューブなどの動画を見ている若い世代にアピールするにはテキストや画像だけでなく動画も必要だと考えたそうで出だしは上々のよう。
★これまでの常識を覆す新人育成方法
これからの時代は職人も動画で学ぶ時代が到来とも言えそうなんですが、そうした中で、早くから動画を使って職人さんを育成している会社もありました。壁や床などをコテで塗って仕上げる左官職人さんの会社、原田左官工業所代表取締役の原田宗亮さんにどんな取り組みなのか伺いました。
- 原田左官工業所・代表取締役 原田宗亮さん
- 「我々の業界は技術を覚えるには背中を見て仕事は盗めなど教えるわけではなく、先輩について行って技術を身に付ける覚え方だった。それだと入ってきた人任せでレベルがバラバラだった。いま取り入れているのは左官の名人の動画をお手本にして動きを完全コピーして1つの塗り方を覚えていく。その時に本人が塗っている姿も撮影。お手本と自分の違いを本人に気付かせて美味い塗り方を習得して行く育成方法。」
「モデリング」と言われる新人育成の技法で日本左官業組合連合会の青年部が立案して都内の左官業界で年々広がりを見せている新人育成方法で、原田さんの会社では7年前から導入していています。
★自分の映像もある事で色々と意見交換も出来るメリットがある
実際は、入社して1カ月ほどはモデリングで技術を学んでもらっているという事で実際にモデリングを経験した社員の方にお話を伺いました。入社6年目の守屋剛さんのお話です。
- 原田左官工業所・左官職人 守屋剛さん
- 「一日中、同じ作業をやるんで手も馴れて塗り方も分かってくる。ビデオで見て自分を客観的に見る人は少ないんで先輩の意見だったり同期でも話し合って指摘し合って高めていった。1人では出来ない事を皆でやっていくみたいな感じなので良かったと思う。」
原田さんの会社ではモデリングの導入で若い職人さんも増えているそうで(平均34歳)。まさに業界の抱える高齢化・人手不足問題の解決に繋がるとも言えそうなんですが、原田さんは現場でも変化が出ていると最後にこんな現状を教えてくれました。
★あああ
実際は、入社して1カ月ほどはモデリングで技術を学んでもらっているという事で実際にモデリングを経験した社員の方にお話を伺いました。入社6年目の守屋剛さんのお話です。
- 原田左官工業所・代表取締役 原田宗亮さん
- 「現場は練習ではなく売り物なので全然できない子にやらせる訳にはいかない。チョットは出来ないと駄目だった。そのチョットのチャンスを掴むのは昔は難しかった。今はモデリングで会社で塗る練習を何回もしているのである一定のレベルは出来る。先輩に付いて覚える時に多少でもコテを使えると塗らせてもらうチャンスが掴みやすい。」
時代の変化と共に職人さんの育成方法にも変化が出てきているようです。