最近、多くの場所でバリアフリーへの取り組みが広がりを見せていますが、「音のバリアフリー」も進んでいるんです。8月6日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
「音のバリアフリー」として注目を集めているのが「ミライスピーカー」。どんなスピーカーか、開発をした下町のベンチャー企業・サウンドファンの佐藤和則社長に伺いました。
★耳の不自由な人でも聴きやすいスピーカー
- 株式会社サウンドファン・代表取締役 佐藤和則さん
- 「今までスピーカーは100年間方式が変わっていなかったが全く新しい方式。一番わかりやすい原理は普通のスピーカーはすり鉢状で前後に動いて空気を圧縮して波を生んで耳に届く。ミライスピーカーは湾曲した振動板で音を出しているだけで難聴の方の7割の方が聞こえやすくなり健常者でも小さい音が遠くでも聞こえる。」
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ミライスピーカーを開発した、サウンドファンの佐藤和則社長
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(右)1号機/(左)2号機
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2018/08/IMG_8636-536x400.jpg)
スピーカーの中身はこのようになっています
ミライスピーカーは、ボックス型の1号機と、前面が湾曲している2号機の2種類あります。どちらも湾曲した振動版が内蔵されているのが大きな特徴です。もともとは佐藤社長のお父さま(87歳)が加齢で耳が遠くなったことが開発のきっかけ。シニア世代を中心に2013年に会社を立ち上げ、ミライスピーカーの発売は3年前から始まりました。
★蓄音機のラッパ部分が開発のヒントに
湾曲の振動板に目を付けた理由について、再び佐藤さんのお話です。
- 株式会社サウンドファン・代表取締役 佐藤和則さん
- 「名古屋の大学の先生で音楽療法をやっている方が、近所のご老人を集めて音を聴いてもらったときに、通常のオーディオスピーカーだとあまり聞こえないけど、蓄音機だと皆さんよく聞こえたらしい。これで良く聞こえるなら同じ形にすれば何か糸口があると。原理は蓄音機の原理に似ていて、新しいけど昔に戻っている感じです。」
蓄音機のラッパの部分の“曲がり”をヒントに開発がスタートしたんですが、従来のスピーカーだと音が拡散するため距離が離れるほど音が弱くなりやすい特徴がありますが、湾曲した振動板を使うことで音が拡散せずクリアに届きます。
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2018/08/dcd281d2b67a03ad81b982143f6d5ef7_s-265x400.jpg)
蓄音機
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2018/08/IMG_8639-533x400.jpg)
板がまっすぐな状態では、オルゴールの音量は変わりません
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2018/08/IMG_8640-533x400.jpg)
板をUの字に曲げると、音が大きくクリアに聴こえます!不思議!
どうして振動板を湾曲にするだけで音が聞こえやすいのか?実はその原理は現在も解明されておらず、東京大学や千葉大学などと共同研究を進めているそうです。
★空港内の雑音でもクリアな音声が届く
耳の不自由な人にも音が聞こえやすいと言うことで、病院や市役所だけでなく銀行や駅、空港などで音のバリアフリーとして設置が進んでいます。そこで、去年12月から空港内のカウンターと保安検査場に設置した、スターフライヤーの羽田空港支店・副支店長の両瀬雄三さんに、設置理由を伺いました。
- 株式会社スターフライヤー・羽田空港支店・副支店長 両瀬雄三さんに
- 「お客様に事前に保安検査を受ける前に、準備としてペットボトルやパソコンをバックから出してもらう必要がある。ただ知らない人は検査の直前に出すので、時間が掛かって長蛇の列になってしまい、結果的に定時に飛行機を飛ばせない可能性もあった。耳の不自由な人は見た目では分からない。聞きやすくなればということで導入した。」
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2018/08/IMG_8590-533x400.jpg)
羽田空港国内線ターミナルにある、スターフライヤーのカウンター。モニターの足元にある黒いボックスが、ミライスピーカーです
これまで、混雑した際には職員が拡声器などで呼び掛けていたそうなんですが、録音音声をミライスピーカーで流すことで、耳の不自由な人、さらには多くの人の案内の聞き逃しが減少。実際に混雑も解消されたそうです。
★災害時の活用がつぎの目標
ここ数年で多くの場所に設置が進んでいるミライスピーカーですが、佐藤さんは、ミライスピーカーにはまだまだ有効な利用方法があるのではと、最後にこんな思いを聞かせてくれました。
- 株式会社サウンドファン・代表取締役 佐藤和則さん
- 「防水・防塵はまだ実現出来ていないが、出力を上げて防水・防塵にすれば、災害時の防災無線になる。例えばライフラインが寸断して孤立化した所も、ドローンに付けて状況を伝えられる。肝心の時に雨で打ち消されたりすることがあるけど、騒音にも強く、普通の音に混じらずに届くので、雨にも負けずに音を届ける事が出来ると思います。」
西日本豪雨の際も、大雨の影響で防災無線の音がかき消された地域がありました。災害時にも、ミライスピーカーが活用されていくかもしれません。
![田中ひとみ](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/09/sump_tanakahitomi-400x400.jpg)
田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!