国会や東京都議会では受動喫煙対策を強化する動きが進み、タバコを吸える場所が限られてきました。さらに、今年10月からタバコ税が増税されることを受けて、タバコの値上げも始まります。き喫煙者にとって“耳の痛~い話”について、7月9日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
★10月からタバコ1箱500円時代に突入!
例えばフィリップモリス・ジャパンは、主力ブランドのマールボロなどを50円値上げする申請をしていて、「タバコ1箱500円時代」がやってきます。そこで、まずは街の愛煙家の方々に、タバコの値上げについて率直なご意見を伺いました。
- ●「高すぎるでしょ。認められてる物なのに。吸い始めは百何十円。やめないでしょね多分。」
- ●「500円超えたらやめるしかない。やめる予定だけどそこまでは吸い続ける。お財布事情も厳しい。180円の安いころから吸ってるけど、加速度的に税金が上がってるので、500円が潮時かな。」
- ●「値上げ自体は仕方ないが、理由が消費増税の穴埋めになってる。」
- ●「きついです、1日1箱で小遣いがキツイ。なんかチョコチョコ値上げでズルイ。一気に上げてくれればやめるのに。」
2010年には「遂にタバコ1箱400円時代に突入!」と騒がれましたが、このときは110円~140円の値上げでした。その後もチョコチョコと値上げが続いて、今年10月以降は多くの銘柄が500円以上になります。
★吸える場所がない!タバコを吸うために電車移動
禁煙を考える人もいましたが、新橋の喫煙所で話を聞いているとこんなボヤキも出てきました。
- ●「嫌だけどやめる方向に国全体がなってるので、争ってもしょうがない。いくら反対しようが吸う場所がないから調べてます。東京駅はタバコは売ってるけど吸う場所がほとんどないので、定期があるので吸える場所まで動いて吸う感じ。あとは吸える喫茶店も探すんだけど、どんどん無くなってますよね。」
喫煙者の皆さんに話を聞いてみると、「受動喫煙対策の強化」については受け入れている人がほとんどでした。やはり、みなさん周りへの配慮は必要と感じているようです。ただ、吸える場所が減っている上に、値上げ!このダブルパンチが厳しいと話していました。
★喫煙で「聴力低下のリスク」が上がる
そうした中で、更に喫煙者にとって耳の痛い調査結果が今年に入って発表されました。どんな調査結果なのか?調査を行った国立国際医療研究センターの溝上哲也さんに伺いました。
- 国立国際医療研究センター 溝上哲也さん
- 「タバコを吸っている人は、吸っていない人に比べて聴力が低下する危険性が高い。聴力は高音域と低音域に分かれるが、特に高音域の聴力の低下の度合いが顕著だった。これは2000年に行った研究でも同様な関係が見られたが、当時は断面的で1回の健康診断だった。今回は5万人に協力を得て長期間に渡って調べたので信頼性が高い。」
溝上さんたちは5万人の健康診断データを基に8年間の追跡調査を実施し、喫煙と聴力の関係を調査したそうです。その結果、喫煙はニコチンによる毒性や血流の悪化などがもとで、耳の奥にある音を感じ取る細胞の働きが落ちて聴力に悪影響が出ているということです。
★避けるには禁煙のみ
更に、溝上さんのお話です。
- 国立国際医療研究センター 溝上哲也さん
- 「吸う本数が増えれば増えるほど聴力リスクが高い。3段階の本数で本数に伴ってリスクが増えて21本以上の方は吸わない人に比べて60%リスクが高いという結果。加熱式タバコについてはまだ影響はハッキリしていないが、ニコチンが含まれているので原因がニコチンによる毒性だと同様に聴力のリスクが高まる事が考えられる。」
最近では紙巻タバコから加熱式タバコに変える人も多いのでドキッとした人も多いのでは…。溝上さんたちは急速に普及する加熱式タバコについても、既に聴力の影響に関して研究を始めているそうで、喫煙による耳への悪影響を避けるには禁煙のみだそうです。
★ただし、少なくとも5年以上の禁煙が必要です
ただし、禁煙についても、一朝一夕にはいかないようです。
- 国立国際医療研究センター 溝上哲也さん
- 「今回の研究から明らかになったのは、禁煙すること。禁煙しても1~2週間ではなく、数年以内に比較的リスクが下がってくる。大体5年経過以降には非喫煙者と同じくらいのレベルまで戻ってくる。それから最近の研究で分かったのが、聴力低下が進むと認知症になりやすい。タバコを吸わないことが耳の健康にとって大切。」
今度は、聴力低下が認知症のリスクも高めるということです。