発酵食品というと、納豆や醤油、味噌、漬物、鰹節など様々なものがありますが、改めて見直されている日本の伝統的な発酵食品について、6月25日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
まずは、関東地方で作られる「くず餅」について。葛粉を使った関西の「葛餅」と違い、関東の「くず餅」は小麦を乳酸菌で発酵させた「小麦でんぷん」で作る発酵食品です。1805年創業(今年213年目)のくず餅の老舗「船橋屋」は、くず餅の新たな可能性を突き止めました。船橋屋の佐藤恭子さんのお話です。
★「くずもち乳酸菌」を発見!
- 船橋屋 佐藤恭子さん
- 「船橋屋のくず餅の原材料は小麦のでんぷん質を450日発酵させたもので、和菓子唯一の発酵食品。8年前からくず餅の発酵過程を調べていて、くず餅を発酵する樽の中に独自の乳酸菌がいることが分かった。くず餅由来のもので、研究では免疫力向上やアレルギー対策、美肌効果にも効くのではと期待されている。」

船橋屋 亀戸天神本店

関東のくず餅
船橋屋は2年程前、長年作り続けてきた「くず餅」の樽の中に、くず餅由来の乳酸菌(ラクトバチルスパラカゼイFくず餅株)が存在していることを明らかにしました。この乳酸菌は「くず餅乳酸菌」と命名され、1杯に10億個の乳酸菌を配合したかき氷も、今年から販売されています。

くず餅乳酸菌入りかき氷。かぎ氷のシロップに乳酸菌が含まれています
★世界初の学術的実証!飲むべきは“米麹と米”の「甘酒」
続いてご紹介するのは、発酵飲料「甘酒」。甘酒は昔から“飲む点滴”と言われ、高い栄養価や腸内環境の改善、肥満の抑制効果があると言われてきましたが、今年に入って新たな研究結果が発表がされました。研究を行った、金沢工業大学教授で酒類の発酵学を研究する尾関健二さんに聞きました。
- 金沢工業大学教授 尾関健二さん(発酵学)
- 「甘酒は色々と健康機能が言われているが、学術的な研究はほとんど出来ていなかった。今回は肥満抑制効果を持つ「消化しにくいタンパク」が、市販の物にかなりの量含まれていることが証明できた。一番多く含まれていた“米麹と米”が原料の甘酒には、コップ1杯に、便通改善・肥満抑制の機能性を有する有効量が十分含まれていることが分かった。」

甘酒
尾関さんたちの研究では、市販されている「米麹と米」「米麹と酒粕」「酒粕のみ」「米麹のみ」の4種類の甘酒に含まれる「レジスタントプロテイン」という成分を分析したそうです。その結果、「米麹と米」なら1日1杯、「米麹のみ」だと1日2杯飲むことで、コレステロール低減などの効果に必要な「レジスタントプロテイン」が摂取出来ると分かりました。
★甘酒人気は女性に多かった
こうして科学的なお墨付きが付いた甘酒ですが、街の皆さんは甘酒をよく飲んでいるか、聞いてみました。
- ●「体が冷えた時とか、特に冬場に飲む事がある。」
- ●「運動した夜に飲んで寝ると、疲れが取れると思う。どんな甘酒が何に効くかをメモしていて、運動後に飲んでいる。」
“飲む点滴”と称されてきたこともあり、ダイエットというよりは健康のために飲んでいる方が多くいましたが、今回の研究結果を知っている人はいませんでした。
★「米を使った発酵食品」に注目
ただ、今回の研究が認知されれば、改めて甘酒を飲む人は増えそうです。尾関教授は、甘酒が苦手な人でも肥満抑制効果を持つ成分を摂取できると話していました。
- 金沢工業大学教授 尾関健二さん(発酵学)
- 「「レジスタントプロテイン」は酒粕にも米麹にも含まれている成分で、米を沢山使った製品には含まれてると思う。発酵させる事によって成分が濃縮される意味合いがあり、米を使った発酵食品である味噌にも含まれていると思う。」
味噌に関する詳しい分析はまだされていないということですが、甘酒と同じような効果が期待できるそうです。
★発酵食品の可能性はまだまだ大きい…
今回の取材で、日本の発酵食品の凄さを改めて感じました。尾関教授は、最後にこんな思いを聞かせてくれました。
- 金沢工業大学教授 尾関健二さん(発酵学)
- 「「日本酒」を飲むことで、そのの主要成分によってコラーゲンが増えることを最近発表した。“日本酒復権”をテーマに色々と活動もしている。日本古来のものには本当に良いものが含まれていることをある程度証明してきているので、それを分かってもらえるような認知活動をしています。」
今まで「なんとなく体に良さそう」とされてきたものが本当に良いものだった、ということが、科学的に証明されてきているようです。

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!