外務省がパスポート(旅券)の改革をしているようです。偽造対策として、身分証となるページの部分を偽造が難しいとされるプラスチック製の仕様にかえる方針だと報じられています。進化するのはいいことですが、なぜか写真については「白黒のみにする方針」なんだそうです・・・進化するのにカラーではなく白黒って?
1月17日(水)、レポーター中矢邦子がTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で『パスポートの白黒写真』について取材報告しました。
★パスポート申請者「白黒のみ、理解できない」
いま、パスポートの写真は、「カラー」と「白黒」のどちらかを自分で撮って申請しますが、それが「白黒だけ」の1択になるそうです。実際に、白黒だけへの変更は支持されるのか。まずは、パスポートの申請をしていた方々に伺いました。
- ●「何で白黒にするのかよくわからないですね。例えば、顔の色が濃い人だと髪の色と一体化して見づらいんじゃないかと思うんですけど。統一しちゃう意味がわからない。もし、統一するならカラーじゃないですかね、退化するみたい。 何で白黒にするんだろう、ちょっと意味がわかんないですね。」
- ●「カラーの方が良いですね。そのとき着ている服とか、女性ならメイクとかあるし、髪の色などが反映されて過去の自分を見られる。そういった意味では1つのアルバムになると思うのでカラーの方が良いです。白黒にするメリットはないと思います。」
- ●「白黒だと古い感じがするので時代と逆行している感じがしますけど。偽造もいま多いって聞くので、カラーの方が安心かな。」
白黒だと色味がわからないし、セキュリティ面でもカラーの方が安心に思われる方が多いようでした。統一するならカラーでしょうという意見しか出ませんでした。
ちなみに、都内で取材では、ちょうどパスポート申請を終えた人、10人以上に聞きましたが、みなさんカラーでの申請で、白黒は1人もいませんでした。
★入管「白黒のみ、問題ない」
さきほどの最後の女性が話していたように、気になるのは「白黒のみで偽造は大丈夫?問題ないの?」という点。そのことについて、実際に水際で働く東京入国管理局・羽田空港支局の山本聡子さんに聞きました。
- 羽田空港支局 山本聡子さん
- 「人が対面審査する有人ブース・顔認証・指紋認証ゲートにおいても、白黒のみでも何も問題はないと思います。白黒もカラーもいまの旅券で併用されていて、いま白黒も使われてますし、何も問題ない。確かに目の前に現れる方はカラーですので、カラーの方が、もしかしたらわかりやすいのかもしれません。ですが、本人確認は写真の他に、サインや生年月日などの身分事項なども手がかりに行っていきますので、顔写真が白黒になっても問題ないと思います。」
そもそも白黒はいまも使われていますので、統一されてもかわりないという意味で問題ないということでした。また、顔写真以外にもサインの筆跡や身分事項があるので、その確認で大丈夫という話でした。
ただ、水際で偽造パスポートと向き合っている入管の方なので、ラジオで鑑定・識別の手の内を全て語るわけにはいかない様子・・・
★鑑定人「メリットある。色情報は後回しだから」
そこで、白黒のみで問題はないのか、写真鑑定のプロにも話を伺うと、こんなお話が聞こえてきました。大和科学鑑定研究所の鑑定人、青木史隆さんのお話です。
- 大和科学鑑定研究所 青木史隆さん
- 「鑑定で、一番重要なのは解像度なんです。どれだけ細かくきれいに写っているか、色はそのあとなんです。さらに、パスポートの写真は、同一人物であるか確認するところの最終手段です。実際、パスポートにはICチップが差し込まれておりまして、この人はどういう人物かというのが記録されています。入国管理でやるのはその中身におかしなところがないかということ。だから、写真がカラーかどうかというのは、あまり関係ない。それから白黒にすると色情報が抜けますので、色の違いで別人だということに惑わされなくなります。例えば、目の色がカラーコンタクトつけていると、目の色が違うから別人となることがありますが、白黒だとそこはなくなり純粋に顔が似ているか似ていないかになる、髪の毛も肌の色もそう。そういう意味で言うと白黒にするデメリットよりメリットの方が大きいかもしれないですね。」
写真の鑑定で大事なのは、色ではなく解像度で、むしろ白黒の方が惑わされないというお話でした。それに、最近のパスポートはICチップが入っているので、その情報との照合の方がメインなのでパスポートの写真というのは後回しなんだそうです。
★証明写真店「白黒のみは困る。カラーが圧倒的なのに」
入管の方も鑑定士も、専門家は「カラーはもういらない。必要ない。」というお話でしたが、一方で白黒のみは困りますという方もいらっしゃいました。銀座でパスポート写真など証明写真の撮影を行っているスタジオ728の入江公徳さんのお話です。
- スタジオ728 入江公徳さん
- 「いまもう9割9分9厘がカラーの方が圧倒的で、白黒の指定がない限りは、なされないのが一般的です。(白黒にしてと言われた場合は?)いまデジタルだとカラーで撮ってしまうので、白黒に変換しなければならないんです。1人1人、手間がかかってしまう。(お店としては白黒とカラーどっちが良いんですか?)圧倒的にカラー。なぜ白黒にしなければいけないのか疑問です。よく履歴書にも使いたいという方が多いのですが、 履歴書の方がカラー写真という指定が圧倒的に多いので、白黒というパスポートになると、2回撮る、もしくは1度フォトレタッチという作業を入れなければならないので、コストが上がってしまう。かなり面倒なことをしてくるなという感じですね。」
入江さんによると、履歴書に使い回したいなどの理由で、現状はカラーが大半で白黒の写真を撮る方は稀なケースだそう。また写真館などでのデジカメ撮影の場合、カラーで撮って白黒に変換することが一般的なので、この作業がメインになるのは困ることだということでした。
中矢邦子の「現場にアタック」
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TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」
月~金 6:30-8:30 放送中。
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