今回は、ここ最近急増している「架空請求詐欺」の新たな手法について、11月20日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
「架空請求」というと、これまではパソコンや携帯電話にメールで送られてくるもの、というイメージを持っている方も多いと思いますが、ここ何ヶ月かで、「ハガキを使った架空請求詐欺」が急増しているそうです。国民生活センターの大槻祐子さんに聞きました。
★急増!「ハガキ」による架空請求詐欺にご注意
- 国民生活センター 大槻祐子さん
- 「最近、『民事訴訟管理センター』と名乗る機関からハガキが届いた、という相談が多数寄せられています。いままで架空請求というとメールが多かったんですが、ここ最近は、ハガキが急増。ハガキには相談窓口の電話番号が記載されており、そこに電話するよう誘導しています。今年の3月下旬から急増し、これまでに約1万4800件の相談が寄せられています。」
このハガキは、ポスティングでランダムに投函されるチラシのようなものではなく、宛名(名前・郵便番号・住所)が記載され、完全に個人宛です。
「総合消費料金 未納分訴訟最終通知書」と書かれた下には、“未納料金に関する訴訟が起こされたので、期日までに電話しないと、あなたの財産を差し押さえますよ”と言った内容の文章が記載されています。
「裁判取り下げ最終期日 ●月●日」と共に、「民事訴訟管理センター」の住所・電話番号・受付時間の案内も書かれています。
ちなみに、通常、裁判所からの通知は、「特別送達」という、受け取り印や署名をして受け取る特殊な郵便で送られるてくるので、ハガキや普通郵便で送付されることはないそうです。
あたかも公的機関のような「民事訴訟管理センター」なる組織名を名乗り、期日で焦らせて、問い合わせ先に電話をかけさせるように誘導してきます。
★電話はダメ!プリペイドカード購入の被害に繋がります
では「民事訴訟管理センター」に電話をかけてしまうとどうなるのか?再び国民生活センターの大槻さんのお話です。
- 国民生活センター 大槻祐子さん
- 「ハガキにある連絡先に電話をすると、『弁護士に相談しなさい』と指示されます。言われたとおり紹介された弁護士の電話番号に電話すると、今度は弁護士を名乗る人が出てきて、『裁判の取り下げのためにお金が必要なので、コンビニでプリペイドカードを買う』よう指示される、という流れです。実際に、プリペイドカード30万円分買うように指示されて、カードの番号を伝えてしまった例もある。」
詐欺グループにとって足が付きにくい「プリペイドカード」を使った詐欺が多いそうです。ひとたびプリペイドカードの番号を教えてしまうと、その分の金額は取り返すことはできず、購入した後に追加で買わされるケースもあったそうです(実際に、実際お金を騙し取られるといった被害が出ている)。また、「民事訴訟管理センター」以外にも「法務省」などの公的機関を名乗る場合もあるそうです。
★街の声「メールよりもハガキの方が信じやすい」
ただ、こうした手口は、これまでメールでは頻発していました。メールからハガキになったことで、印象は変わるのか。街で、メールとハガキに違いがあるのか聞いてみました。
- ●「変なメールが来たりするけど、ハガキだと住所を知らないはずなのに届くから、そっちの方を信じてしまいますね。」
- ●「近所でそういう話があった。法務省だったかな、『支払いが未納ですよ』というハガキがダイレクトメールで届いたのが、実際は詐欺だったというもの。権威のある名前を使われるのは、結構信じてしまう。」
- ●「役所から来るのはメールじゃなくてハガキだし、ハガキで来た方が信用する。」
- ●「いまどきハガキを使うのは非常に珍しい。詐欺グループも頭が良くなっているのでは。メールはあふれているし、ハガキを書くような面倒くさいことはしないだろうと。したがって、信憑性が高い。我々ももう少し賢くならないといかん、という事ですね。」
自分の住所や名前が書いてあったり、“それっぽい”名前を使われると信じてしまうという方が多かったです。また、「いまどきハガキで架空請求は来ないだろう」という先入観から、ハガキの方がメールよりも信じやすい、という意見がありました。
★手間もコストもかかる「ハガキ」で送ってくる訳
ハガキだと信じてしまう方がとても多いという結果でしたが、最後に、国民生活センターの大槻さんは、こんな話をしてくれました。
- 国民生活センター 大槻祐子さん
- 「一般的に考えると、メールのほうが詐欺業者にとってはコストがかからないし、効率はいいかと思うのですが、なぜかハガキ。ハガキだと用意しないといけないし、郵便代金もかかりますが、そうまでしてでも送付しているので、トラブルにあって支払ってしまってる方がいるのかもしれないですね。消費生活センターに相談していない方もいると思うので、こういった手口があることを知ってもらい、こうしたハガキが届いたときに、焦らず消費生活センターや警察、周りの方に相談してほしい。」
被害に遭うる人が多いため、わざわざ手間のかかるハガキを利用し続けているかもしれないという分析でした。もしも類似のハガキが届いたら、本当に裁判所からの通知なのかどうか、電話帳や消費生活センターなどで確認して下さい、ということでした。
■国民生活センター
「『民事訴訟管理センター」からの架空請求ハガキは無視してください!」
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170501_1.html