9月の3連休、全国各地の神社で秋の例大祭が行われていましたが、けさは神社の歴史ある文化や貴重な資料を保存していくための、ユニークな取り組みについてです。9月19日(火)は、レポーター中矢邦子がTBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で『神社のユニークな資金調達法』について取材報告しました。
★「鹿島神宮クレジットカード」でポイントを寄付
まずは、茨城県の鹿島神宮の権禰宜、檜山真一さんのお話です。
- 鹿島神宮 檜山真一さん
- 「鹿島神宮では今年の1月より、年会費の一部や、買い物等でたまったポイントの一部を鹿島神宮に寄付をして頂くというクレジットカードの導入を決定しました。神社界では初めての試みです。この年会費の一部やポイントなどは、12年に1度、午年に鹿島神宮で行われる“御船祭”の催行や、鹿島神宮の所有する文化財や記念物などの保護や修繕へ充てさせていただきたいと思っています。」
機能は至って普通のクレジットカードですが、特徴的なのはポイントの仕組みです。年会費5000円の一般カードは200円買い物する毎に1ポイント、年会費1万円のゴールドカードは100円で1ポイントが貯まります。このポイント、普通であれば買い物をした私たちに還元される仕組みだと思うのですが、鹿島神宮の場合は5000ポイントが貯まると自動的に5000円が鹿島神宮に寄付されて、お祭りの予算などに積み立てられる仕組みになっています。
…となると私達は何の得もしないのかというとそうではありません。例えば普段は近づくことが出来ない樹齢およそ1300年の大木の前まで案内してもらえたり、境内の杉で作られた銘々皿をもらえるなど、特別な体験ができるカードになっています。
★氏子の減少で、寄付額が安定しない・・・
それにしてもなぜ鹿島神宮では、神社界で例が無いというクレジットカードに目を付けたのか。再び檜山さんに聞きました。
- 鹿島神宮 檜山真一さん
- 「前回の三船祭は平成26年に執り行われました。その際、記念事業など含めて約20億の費用がかかっています。地区の皆様、氏子の皆様、崇敬者の皆様から寄付を頂いて集めた状態でした。ただ、かなり神社離れをしていると思う部分があって、実際私が宮司を務めているお社でも少しずつ氏子さんが地元から離れてしまって家が絶えてしまっています。少しでも安定的な寄付の仕方はないかと考えて、このようなカードの仕組みに取り組んでいます。」
御船祭は豪華な装飾の100艘以上の船が、鹿島から川を渡って千葉県の香取神宮へ向かう水上のお祭です。それにしても20億…すごい額ですが、船だけではなく祭りに合わせて建物の修復や境内の整備なども行ったことで20億円がかかったということです。その資金を賄うために、元々の貯蓄や、国や県の補助金のほか、先祖代々その地域に住み、鹿島神宮を支援する“氏子”の寄付も重要。
ですが最近、核家族化や都心への人口流出などで氏子が減ってしまい、次回2026年の御船祭は今まで通りの規模で開催できるのかという懸念も出ています。しかし、2000年ものすごく長い歴史がある御船祭を縮小させる訳にいかない!ということで、新たな支援者を増やすため、今回クレジットカードを導入しました。
★徳川家康の甲冑修理にクラウドファンディングを活用
一方、鹿島神宮とは違った方法で資金を集め、既に成果を挙げている神社もあります。静岡市にある久能山東照宮の権宮司、姫岡恭彦さんのお話です。
- 久能山東照宮 姫岡恭彦さん
- 「昨年11月10日~今年2月5日まで久能山東照宮の博物館では徳川家康公の甲冑を修復することに関してクラウドファンディングを行いました。400年経っているので悪くなるのが当たり前。紐で各部分を繋いでいるけど紐がボロボロになり、手で持つと崩れるような状況を少しずつ修復している。募集は500万円を目標として行いましたが、683万5000円が集まりました。いま、修復したものを展示しているので、それでお見えになった方も多くいらっしゃいます」
久能山東照宮は、徳川家康を祀った日光東照宮よりも早く出来た最初の東照宮です。甲冑を始め徳川家ゆかりの収蔵品が2000点もあるそうですが、江戸時代から400年経った今、それらの収蔵品はだいぶ劣化しているそうです。ですが、建物の維持管理や、山に囲まれているので土砂災害への対応などにもお金がかかり、修繕に回すお金がなかなか確保できませんでした。
そこで今回クラウドファンディングを活用して幅広く支援を募り、返礼の品として甲冑が印刷されたポスターやトートバッグ、葵の紋が入った帽子、湯飲み、日本酒など様々用意したところ、416口・約683万の支援が集まりました。
★「徳川15代将軍の甲冑揃い踏み」を目指して・・・
さらに姫岡さんは、今後も次なる展開を考えているそうです。
- 久能山東照宮 姫岡恭彦さん
- 「久能山東照宮には家康公はじめ歴代将軍の甲冑が63領残ってるんですね。先祖の人達がせっかく守ってきたものを私達の時代になって受け継いで、今度は次の時代に伝えていかなきゃいけないんですが、63領のうち9~11代の甲冑が修復できていないものもある。今後そういうものも修復しながら、2代将軍の甲冑は日本に私ども久能山東照宮の博物館しかない。15代将軍揃い踏みというのをやってみたい。そういう意味で新たなクラウドファンディングを行えればと思っております。」
“徳川15代将軍の甲冑揃い踏み”を実現するために、今回の第1弾に続いて第2弾のクラウドファンディングにも意欲を示していました。