忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」
(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)
7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」。本日3月11日(金)はレポーター近堂かおりが『東日本大震災から5年。もう5年、まだ5年、どちらですか?』をテーマに取材しました。
現場にアタックレポーター:近堂かおり 取材の着眼点とインタビューでの表現力に定評あり。 |
東日本大震災から今日で5年を迎えますが、この5年は、「もう5年」なのか、「まだ5年」なのか、みなさんはどのように感じますか?私などは「もう5年も経つんだなぁ」と感じますが、被災地の方々はどう思っているのでしょうか?宮城県・気仙沼市でお話を聞きました。金曜日恒例サラリーマンの声・気仙沼編。
「東日本大震災から5年。もう5年、まだ5年、どちらですか?」
★3・11から「まだ5年」と感じる時の流れ
- まだ5年かな。とうのは復興が遅れている感じがする。埋め立ての嵩上げの工事がまだ、ここの岸壁も見てください、まだまだね。もう何十年かかるか分かりませんよ。
- まだ5年ってとこですかね。復興が遅れているせいもあって、来たお客さんにも何人かには言われているんで、気仙沼一番遅いよって。南三陸とか高田みたく町が一回全滅して再建するのは早いんですけど、半分残って半分被災したところだとそういうのが再建のネックになっているみたい。だからまだ5年かな。
- まだ5年かなって感じ。周りの建物がまだ建たないのかなって。まだ仮設に入っている人達もかなりいるので、公営住宅も建っていることは建っているけど、入るとしても結局家賃が発生してくる。皆、年取ってくから震災の時は若くても5年経った時には職がないという人も中にはいるので、そうするとお金の面倒がね。もう5年と言いたいとこですけど、まだ5年ですね。
★3・11から「もう5年」と感じる時の流れ
- もう5年の方が多いかな。早い。ちょうど私の娘たち二人、双子なんだけど、中学校3年で受験だった。それで、家も半壊で、海には流されないけど地震で半壊しエライめにあった。それでそこから1年くらい業者さんに断られて、やっと1年後に半分直して、その2年後にお祖父ちゃん亡くなって、もう5年あっという間だった。今度は今、おばあちゃんの介護をしながら仕事してるから本当にあっという間。
- もう5年ですね。日々の生活というか仕事にしても、復興とか言うよりもとにかく今、自分の仕事を精一杯、それに一生けん命になりすぎた。鮮魚の卸ですね。震災後にとにかく商売が出来ないっていうので魚の水揚げがないと。それでヤマト運輸で物資の配給をやっていたんですよ。その仕事を3か月やって。食べるためというか、とにかく家にじっとしてても何も始まらないというので、当然お給料の問題もあるだろうし、あと、自分が仕事を再開するためにも体がなまっちゃうというのがあった。とにかく一生懸命やってる中でのもう5年。
★気仙沼市唐桑で100年続く牡蠣養殖を営む女将の苦悩
- ちょうど東日本大震災の一年前にチリ地震で、半分の筏がダメになった。カキとかホタテを吊るしてある筏。あれがチリで起きた影響で10センチしか変動なかったけど水位はね。海の中のエネルギーってすごくて、ホタテとかカキとか、アンカーがみんなごっちゃ混ぜに、ゴチャゴチャになってしまって、それがもう出荷出来ない状態。水揚げ出来ない状態なので、第一線で廃棄処分、全部。
だから、私たち、本当にそれで撃沈して無利子でお金を借りて、また筏を作り直して、それも1年かけて作ってそこにまたカキとかホタテを全部仕込んで、そういう風にコツコツとやって、やっと最後の筏が出来上がったのが3月10日だったの。一年後の3月10日、前日!前の日に、お父さん、これで筏これで最後だよね、この筏を設置してこれにカキをまた仕込んでこれで借金はしたけども、また元に戻ったってビールで乾杯したのを覚えています。
3・11の前に、2010年のチリ地震の影響も受けていたんですね。それがやっと元に戻せたのが2011年の3月10日・・・。その翌日にまた津波の被害にあったのです。3階まであるご自宅は屋根と柱だけになり、できたてだった筏は40台、三ヶ所あった工場も壊され、船も二艘流され・・・みんな失ったのに、借金だけが残ってしまったそうです。しかし、学生ボランティアさんたちに支えられて少しずつ家を片付け、その縁で、いまそのご自宅は「つなかん」という民宿に生まれ変わりました!牡蠣の養殖も少しずつ回復し、私も泊まらせていただきましたが、牡蠣が本当に美味しかった!女将さん曰く、
- 「冬のもの、というイメージがあるかもしれないけど、春の牡蠣が一番美味しいの!」
★牡蠣とホタテ一筋だった女将の新しい出会い
- 無我夢中。無我夢中で見るもの聞くもの全てが初めてだったので、色んな人達が来てくれるので。
私、今までは2時に起きて本当にカキ剥きばっかりもくもくとしてて、12時までカキを剥いて12時からは船に乗って、次の日のカキを揚げに行く、6時まで。朝2時から夕方6時まで延々と。会話の相手はカキとホタテ、時にはワカメっていう生活を25年間。だから、民宿始めて見るもの聞くもの全てが新鮮だし、こういう世界もあるんだって感じだったので、もう無我夢中。
必死に必死に生きてきたらもう5年も経ったんだっていう感じで昔を思い起こすと頭の中には、あの津波のあと、80過ぎたじーちゃんばーちゃんが泥の中から一所懸命カキ剥きナイフとかロープを拾ってた時を思い出す。この頃やっぱり5年目にして、そうする、ちょっとあぁって思い出したりしてね、ウルっと来たり。あれからもう5年経ったなって。それまでは振り返ってはいけないって思ってた。とにかく前進あるのみ、前にススメ、前に向かって歩こうって頑張ってきたので、やっと5年目にちょっと振り返る余裕が出来たのかな。
泥の中から牡蠣養殖の道具を掘り出していたじーちゃんとばーちゃんの前向きな姿が、私のがんばる気持ちの原点、と、目に涙を浮かべながらも明るい声で話す女将さんは、本当にたくましい。その強さにまた心を打たれました。 女将さんに会いたい方はぜひ『つなかん』におでかけください!『唐桑御殿つなかん』宮城県気仙沼市唐桑町です!
今回気仙沼に行ってひとつ気になったのは、さすがに瓦礫は無くなって新しく家が建ち、重機が動き、大型ダンプが多く行き交っており復興に向かっている様子もありましたが、一方で、更地になっただけで、工事待ちのような広い土地が多かったこと。手付かずのままの土地のあまりの広さに驚いてしまいました。しかし同時に、お話を聞いた方々、みなさん大変な中でも日々生きていくためにやらねばならないことを懸命にやって、前を向いているんだ、と強く感じた取材となりました。
(取材・レポート:近堂かおり)
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