今回は、いま話題の観光スポットに行ってきました。千葉県君津市にある『濃溝(のうみぞ)の滝』。
ご存じの方も多いかと思います。房総半島のほぼ中央、山と森林に囲まれた渓流にある小さな滝で、最近の大人気スポットなのですが・・・。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!今日8月15日(火)は、レポーター近堂かおりが『人気急上昇の観光スポット”濃溝の滝”。ホントの名前は?』をテーマに取材しました!
★ハート型の光!ジブリのような!神秘的な光景!!
つい1年前はあまり訪れる人のいなかった滝ですが、お盆休みのきのうは、お天気が不安定だったにも関わらず、大変な人出。結構遠くからもいらしていました。
- ●「栃木です。2時間ぐらいじゃないですか。木更津はきたことがあるんですけど、あ、こんなのがあるんだと思って。初めて知りました。」
- ●「名古屋から来ました。光が注いでハート型になっている形を母親が見たいと言ったので家族みんなできました。」
- ●「岐阜からです。ツアーに入ってたから、ジブリに出てくるような写真が撮れるということで。いやあ、すごいですね。」
- ●「地元(君津)です。地元だけど、たぶん地元の人は”こんなのあったの?”というぐらい、 1~2年ぐらい前までは全く知らなかった。駐車場も今は第3、第4まであるでしょ。前は本当にそこだけ。びっくりしてますね。」
ツアーでいらしている方も多かったです。昨日も観光バスがひっきりなしに来ていました!でも、地元の方にも知られていなかった、知る人ぞ知るスポット。渓谷の岩肌に掘られた人工のトンネルの円の中を流れる水と木々の緑。川面にその緑が鏡のように映りこんで、全体的に緑がかった光景は、まるでジブリアニメの映画のワンシーンにできてきそうな神秘的な風景。季節によってはトンネルに差し込む光が川面に反射してハート型にみえるんです!実は、このトンネルは、U字型に蛇行した川の水をショートカットするために、江戸時代に掘られたもの。水を引き、新しく田んぼを作るために作られたそう。
★ここ、亀岩の洞窟というんです!
インターネットにアップされた1枚の写真から去年、火が付いたのですが、実はそのず~っと前からこの場所の写真を撮って、PRしていた方がいたのです。それは地元出身の伊原弘晃さん、69歳。伊原さんは、地元の良いところが10年以上かかって突如観光スポットになったことを喜びつつも、実は戸惑ってもいました。
- 伊原弘晃さん
- 「平成14年に洞窟の中に亀に似た岩が見つかったんですよ。それでそれを写真に撮って。そしたらまずお寺さんが、うちのお寺は亀につながりがあると。それから近くの神社に行ったら、うちは妙見様といって亀が守護神だぞと。それから写真をずっと撮りましたね。SDカードが何十枚あるだろう。それがSNSで広がって、その時の人は何も知らないから”濃溝の滝”って流したんです。そしたらそれがずーっと
広まっちゃったんです。でも私なんかは”亀岩の洞窟”でずっとやってたから、それが大間違いでね。困ってるんですよ、本当は(笑)。」
いま日本全国から大勢の人が押し寄せて写真を撮っている場所は、伊原さんたちが10年前に名付けた”亀岩の洞窟”。本物の”濃溝の滝”は、その亀岩の洞窟から50メートルほど離れたところにある。でもそちらに足を向ける人は、きのう見ているとほとんどいない?ちらほら。インターネットにこの場所をアップした人が”濃溝の滝”と紹介したため、またたくまにそちらの名前が広まったというわけ。
★名前はどうしましょうか・・・。
伊原さんも初めのうちは、ようやくわが地元のすばらしい場所を多くの人に知ってもらったということで喜んでいたが、だんだん『でも、本当は亀岩…』という思いが膨らんできた。そしてついに、君津市役所が関係者を集めて、一躍、君津イチの人気スポットになったあの場所の名前をどうするか、話し合いの場を持った。
君津市役所観光課の竹森麻樹さんのお話。
- 竹森麻樹さん
- 「4月から、市が発信する観光情報等の表記につきましては、滝自体がある公園の名称を用いました『清水渓流広場(濃溝の滝・亀岩の洞窟)』と併記するということで、地元の方々に同意をいただきました。今までずっとあそこを見てくれた地元の方々にすれば本当の名前でということはあろうかと思いますので。といいながら、この名前でいろんな方に知っていただいているという意味では、この名前を使ってPRしていたというところもあるにはあるんですけども、なかなか今まで考えたことのなかった悩みといいますか、SNSを通じて一瞬にして拡散していったところの問題でもあると思っています。」
市役所としてもこれだけ人気スポットになった”濃溝の滝”という名前を今さら訂正して、検索されにくくなったらどうしようという心配もあるだろうな、と私も思うので、気持ちも分かります。でも、せっかく知られていくならば、正しい名前で!という気持ち、これも分かります。ということで、とりあえず『濃溝』と『亀岩』を併記することにしました。
★濃溝は、本当は農溝なんです・・・。
伊原さんもひとまずはこれでよしとしたかったのですが、実はもう一つ問題がありました。それは”濃溝”の『濃』の字が、本当は違うというのです。伊原弘晃さんのお話。
- 伊原弘晃さん
- 「水車を回すための農業用の溝を掘ったので「農溝」ですね。その農溝のすぐ近くにあった滝を”農溝の滝”と言ったんです。あれは農業用の溝なので、”さんずい”がないんです。その水車小屋も…、今はないですよ―、そこにけもの道があって、みんなそこまでお米を背負って行ったんですよ。そうするとおふくろに『一緒に来い』といって連れて行かれて、そこで精米をした。ここに電気が入ったのが、昭和31年の終わりごろ。それまでは電気がなかったんですね。そうすると精米というと水車が主で、水車はいっぱいありましたよ。」
ひと文字の表記は小さいことかもしれないですが、”農”のひと文字からは、忘れられた地域の歴史や暮らしが見えてきます。表記も大切だけれど、むしろこうしたことを語りつぐチャンスを広げることが、地域の魅力の発信になるのではと思いました。ハートの光は、そういうかつての生活の川面に出来ているんですものね!
(ちなみにハートの光の写真が撮れるのは3月と9月、朝早い時間が狙い目です!)