暑い日が続く中、冷房が欠かせなくなっていますが、以前番組でも取り上げた「クールビズで推奨されている28℃という数字には明確な根拠が無い」という話題の、その後の動きについて、8月2日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
5月に行われた環境省の会合で、クールビズの元担当課長がしたとされる「28℃はなんとなく決めた」という発言。今まで何だったの?と物議をかもした一連の騒動を受け、環境省が「皆さん、誤解してませんか?」と、ホームページにある文章を掲載したんです。どんな内容なのか、環境省・地球環境局・国民生活対策室長・増田直文さんに聞きました。
★「28℃」にはちゃんと理由があります!
- 環境省・地球環境局・国民生活対策室長 増田直文さん
- 「環境省のクールビスのサイトが元々あるんですが、≪どうして28℃≫というタイトルにしてリニューアルしました。“28”という数字は建物に関する法律の中で決まっています。ですが、“28℃”が一人歩きしている部分もあって、よく誤解されるのが『エアコンの設定温度を28℃にすればいい』と思われがちなんですけども、あくまでも目安として28℃というものを考えてくださいということです。しかも、エアコンの設定温度ではなく『室温を28℃目安』で、というお願いなんです。」
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/08/0d40a5e4a645fc6b96e767d64ac0878e-600x364.png)
環境省ホームーページ≪どうして「28℃」?≫
「28℃」は決してなんとなく決めた数字ではなく、「建築物衛生法」という法律に基づいているそうです。この法律は、「室内の温度を17℃以上・28℃以下に管理」するよう定めているもので、“28”という数字はここから来たということです。
それから、「28℃はエアコンの設定温度ではなく、室温である」と説明していました。例えば、エアコンを28℃に設定しても、日当たりが良かったり広い部屋だったりすると28℃以上になってしまうので、部屋の温度計を確認しながら冷房を低めに調整してくださいね、という意味です。私もこのホームページを見るまで28℃は冷房の設定温度だと思っていましたが、環境省の調査でも「知らない」という人が全体の7割だったという結果が出たので、これを真摯に受け止めて、今回ホームページで改めて説明するとともに、温度計機能付きのマグネットを配布するなどして周知を図っているそうです。
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/08/IMG_4872-536x400.jpg)
環境省がイベント等で配布している、温度計カード。裏がマグネットになっています。ちなみに、今日のTBSのスタジオ付近の温度は26℃でした。
★「室温28℃」は果たして快適なのか?
「エアコンの設定ではなく室温が28℃」。ちょっと楽になったかなという印象ですが…、みなさんどう思うか。街でビジネスマンに聞きました。
- ●「私金融機関にいるんですけども、自分たちのいる部屋は28℃と言われてます。現実にはもっと下げますけどね。パソコンとか機械があるから、放熱で部屋自体は余計暑いですから、快適ではない。」
- ●「28℃だと暑い、という意見が多かったので、26℃までの変更は可能になったんですけど、暑くはないですけど環境としてはちょっと難しい場面もありますよね。」
- ●「うち美容院なんですけど、温度・湿度が分かるやつを置いてるんですよ。大体25℃位になってますね。28℃だと暑いですよね。」
- パソコンなどの電子機器が多い部屋だと熱が放出されますし、美容室だと動き回ったりドライヤーを使ったり…。職場の環境にもよるのかもしれませんが、昨日聞いた中では、「室温が28℃でも暑い」という声が多かったです。
★法律上「28℃は推奨すべきでない」?
さらに別の観点からも、「28℃で本当にいいのか?」という指摘があります。先ほど環境省の増田さんが言っていた、28℃という数字の元になっている法律。「これを根拠にするのは無理があるんじゃないか?」という意見です。早稲田大学・建築学科・教授、田辺新一さんのお話です。
- 早稲田大学・建築学科・教授 田辺新一さん
- 「『ビル管法』=『建築物衛生法』と言われるんですけど、この元になった報告書を見ると『決してこの温度を推奨するな』って書いてあるんですね、その報告書にも。28℃を超えないようにしなさいっていう法律なんです。たぶん当時環境省がその上限の温度だったら省エネにもなるし、そこを推奨すればいいという風にされたと思うんですけど、推奨するという所に無理があったんじゃないかと思いますね。」
先ほども少し触れましたが、「建築物衛生法」では室温設定の範囲を「17℃以上28℃以下に」と定められています。環境省は今まで、少しでもCO2の排出量を減らすために、上限の“28℃”を採用してきたのかもしれないけれど、28℃は目指すべき目標というよりは、この法律上のレッドラインで、推奨すべき数値ではない、と書いてあるそうです。それなのに「28℃を推奨」と言うのは問題なのではないか、と田辺さんは仰っていました。
★官僚の皆さん、室温28℃で無理してませんか?
さらに、田辺さんはこんな指摘もしています。
- 早稲田大学建築学科教授 田辺新一さん
- 「僕もよく霞が関の役所に打ち合わせとかで行くんですけど、本当に暑くてね、日本の中枢を担う人たちが我慢して働いているように思えたんです。僕は、無理のない範囲で冷やしすぎない室温管理をすれば、官僚の人達もよく働けるんじゃないかと思うんですよ。
その中でも省エネの手法はたくさんあるので。例えば照明をLEDに変える。あるいは大きなデスクトップでたくさん発熱しているパソコンをノート型に変える。快適になるような工夫はもっとありますから、もう一回クールビズを見直しても良いんじゃないかと思います。」
田辺さんから見ると、室内温度28℃をきっちり守っている官僚の皆さんが、我慢しているように映ったということでした。ですから必ずしも28℃にこだわらず、それぞれの職場環境に合った設定でエアコンを使い、省エネについてはエアコン以外の部分で進めたら良いのではないかと言っていました。
![田中ひとみ](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2016/09/sump_tanakahitomi-400x400.jpg)
田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!