★葛飾区の町工場集結!「町工場見本市」
2月14日(火)と15日(水)の2日間、東京国際フォーラムで開催されている、葛飾区主催の「町工場見本市」を取材してきました。
★町工場の数は激減…
葛飾区を中心とした66の町工場が、新製品の展示や、最新技術を実演。商談に結びつけることを目的としたイベントです。
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「第3回町工場見本市」…葛飾区を中心とした66の町工場が、新製品の展示や、最新技術を実演。商談に結びつけることを目的としたイベントです。
会場には葛飾区以外からも多くの企業関係者が来場していました。埼玉県のガスライター工場の社長さんは、イベントに来た目的をこう語っていました。
- ガスライター工場の社長(埼玉県)
- 「私町工場なんですけど、製造業がどんどん減っちゃってて、うちがお願いしている協力工場さんも少なくなっている。途中工程の資材も、研磨工程や金属メッキだとかは、後継者がいなくて、大量生産で安いものは全部海外にいっちゃう。もう閉まる一方なので、同じような業種で、新しく見つけられればと思って来ました。」
後継者不足や、海外にお客さんを奪われたりして、町工場の廃業は相次いでいます。ガスライターの開発と設計を行うこの会社では、設計から先の“ものづくり”の部分を依頼できる工場が少なくなっていることに、危機感をもっているようでした。また、「独立独歩で物を作るだけでなく、発展させるための横のつながりが大事。自分の地域では業界を超えた交流が少ないので、葛飾を参考にしたい」と言っている方もいました。
★JAXAも採用!町工場のメッキ技術
そこで今回は、今まで付き合いのなかった分野のお客さんとのつながりを広げ、新規分野に参入した町工場に注目。まずは、新たな技術を習得したことで、日本の宇宙開発を担うJAXAから仕事の発注を受けた、有限会社 港メッキ工業所の田口洋輔さんのお話です。
- (有)港メッキ工業所の田口洋輔さん
- 「普段は、ホテルとかレストランで使う銀食器の銀メッキをメインに行っている。でも、銀食器一本だと、すごく忙しい時期と暇な時期で波がある。何か新しい新機軸もやらなきゃなと考えていた時に、「部分メッキ」という技術に着目しました。通常メッキは「メッキ槽」というでかいタンクみたいなものに、品物をドスンと入れるんですが、「部分メッキ」は、メッキ槽を使わずに自分で塗るようなイメージ。JAXAに関しては、大きな畳1枚分位の平板があって、その表側だけに金メッキしたいという要望でした。」
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「部分メッキ」の実演を行う、港メッキ工業所の田口さん
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部分的に剥がれてしまったメッキも…
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田口さんの技術で、輝きを取り戻しました
この「部分的にメッキを施す技術」というのは、アメリカの企業が開発したもので、日本ではほとんど広まっていなかったそうです。そこにJAXAが目をつけ、港メッキに声がかかったとのことでした。
まだ銀食器の修理だけを扱っていたころは、顧客であるホテル業界の閑散期に依頼が殺到。つまり結婚式がなく食器をあまり使わない夏季に仕事が集中し、反対に秋ごろには激減していたそうです。ところが部分メッキを始めてからは、JAXAやガス関連事業、液晶ディスプレイの仕事も増え、安定して仕事を回せるようになったということです。
★オール葛飾で製造した、深海探査機「DO・BON1000」
さて、町工場の技術の活用は宇宙だけではありません。昨日の見本市には、深海探査の装置「DO・BON1000(ドボン セン)」が展示されていました。どういうものなのか、プロジェクトリーダーを務める、株式会社杉野ゴム化学工業所 代表取締役、杉野行雄さんに聞きました。
- (株)杉野ゴム化学工業所 代表取締役 杉野行雄さん
- 「数年前に、「江戸っ子1号」という水深8000mまで行ける探査機を製造しました。すると、水深1000m付近の川の中を見たいという方が多く出てきたので「DO・BON1000」の開発にいたりました。漁船に積んでもらえると、どんな魚がいるかを確認しながら漁ができる。使い勝手も色々あるので、できるだけシンプルで低価格を目指しました。全5社のオール葛飾で、町工場の人達の協力を得て、通常5000万~1億円かかるものが、500万を切る価格で提供できるようになりました。」
8000m潜れる「江戸っ子1号」は以前このコーナーでも取り上げましたが、もう少し浅い場所を見たいという問い合わせ※があり、「DO・BON1000」の開発に着手したということです。
※秋田県の田沢湖や滋賀県の琵琶湖などから引き合いがあった
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「DO・BON1000」…大きさはバレーボール程。ガラス球の中に4台のカメラが内臓されていて、四方向を一度に撮影できます。
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ガラス球とモニターがケーブルで繋がっているので、映像は船上でリアルタイムに確認できます
中身は、もちろんオール葛飾。カメラは、内視鏡など特殊なカメラを扱う町工場が既製品をカスタマイズ。他にも、ステンレスやゴムの企業まで、まさに葛飾の町工場の技術が結集してできた探査機です。
★新製品を開発し、下請けから脱却!
でも杉野さんの専門分野はゴムのはず…。どうして「深海」という全くの異分野に参入しようと思ったのか?その狙いを聞きました。
- (株)杉野ゴム化学工業所 代表取締役 杉野行雄さん
- 「ゴム産業は、バブル時は葛飾区だけで500社を超えていたほど、世界的に有名な地域だったんですが、今会社として残ってるのは200社弱。半減してます。仕事が無い仕事が無いって喘いでもどうにもなんない。下請け体質でいるといずれ仕事が徐々に減って絶えてしまう。我々はその下請け体質から脱却するためにも、自己製品を開発して、挑戦していくというやり方を選んだわけです。」
ゴム産業の枠にとらわれない新たな製品開発。しかも、ただ作るだけではなく、製品のPRや売り込みも、葛飾の広告企業が加わっています。「DO・BON1000」は、来年の販売開始を目指しているということです。
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田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!