★「勤務間インターバル制度」って?
今の国会で「働き方改革」の一つとして議題となっている「勤務間インターバル制度」。私たちの働き方に関わるものですが、まだよく分からないという方が多いのでは?そもそも「勤務間インターバル制度」とはどんなものなのか?取材しました。今年から勤務間インターバル制度を導入した、IT企業AGS株式会社の人事部担当、及川和裕さんに聞きました。
- AGS株式会社 人事部担当 及川和裕さん
- 「勤務間インターバル制度と言うのは、前日の終業時間=帰った時間から翌日の始業時間=仕事を始める時間までの間に、最低11時間の休息時間=インターバルを設ける制度です。この業界はどうしても、システムに障害が起きた時は解決するまで、極端に言うと翌朝まで仕事を続けるというケースも出てくる場合もあります。そういうのを少しでも是正できればと始めました。パソコンのログイン・ログオフの時間を管理して、実際の勤務簿と時間を比較して、前日遅く帰った人が、翌日までインターバルをとったかどうか、一目で分かるような仕組みを作っています。」

AGS株式会社 及川和裕さんに話を聞きました。
「勤務間インターバル制度」は、文字通り、勤務と勤務の間にインターバルを設ける制度で、EU加盟国ではすでに義務化されています。
AGSの場合、通常の始業時間は9時。11時間の休息をとるには、遅くとも22時には帰らなければならない計算になります。仮にシステム障害の対応などでどうしても23時までかかってしまった場合には、翌日は1時間遅らせて10時に出社することになります。就業時間は、パソコンのログイン・ログアウトと連動して記録され、仮に長時間労働が続いた場合は、産業医との面談や上司との面談を行うことになります。
★勤務間インターバルは効果アリ!でもコストもある
では、実際にAGSで働く社員の方は、勤務間インターバル制度の導入で何か変化はあったのか?システムエンジニアの松崎真さんに聞きました。
- AGS株式会社 システムエンジニア 松崎真さん
- 「今、保険会社のシステムに関する部署に携わっているのですが、顧客が21時頃迄仕事しているので、自分たちは22~23時にならないと仕事できないんです。これまでは、こうした場合でも、次の日の出社時間は変わらず9時だったんですが、今ではインターバルを11時間とって、10時~10時半の出社になります。次の日が結構ラクな感じになりました。部署としても、ただ『残業を減らせ』と言われるだけだと、目の前の仕事をどうしたらいいのかというのがありますが、今は、パートナーさんや派遣の方を増やしているので、仕事を振れる人が増えてきています。」
今のところは、AGSの社員ほぼ全員が11時間以上休めているとのことで、効果はあったようです。松崎さんは睡眠時間が5時間から6時間に増え、朝食の時間もゆっくりできると話していました。
ただ、この制度を導入するには、コストと工夫が必要です。仕事の量が減るわけではないので、会社側は、人員を増やして分業によって労働時間を短縮。また、今までは朝9時から定例の会議に出席しなければならなかったところ、出勤時間が遅くなる日は、後で議事録を確認しておけばOKにしたり、いろいろな工夫があるようです。
実は、この勤務間インターバル制度、日本で導入している企業は全体の2%。いずれも大企業で、結局、人を新たに雇い入れるコストを確保できる、体力がある会社でなければということかもしれません。
★業務間インターバル制度について街の本音は?
そこで現在、中小企業で長時間労働している人に、11時間インターバルがとれそうか?聞いてみました。
- ●「間違いなく難しいですね。一応会社では8時間以上は働かないでくれとなってるんですけど。現場的にはそれは困るとなって、うちの仕事は納期を守れないと違約金が発生してしまう。そこはもう死ぬ気でやってくれという感じ。現場ではそういわれて。会社では早く帰ってくれと。」
- ●「うちは、働き方改革で、システム全体が22時までしか使えない。朝も9時にならないと鍵が開かない。皆、諦めてフラストレーションがたまった状態で帰っていますが、仕事はたまっているので、翌朝から悶々とやるという感じ。期日通りにやらないといけなくて、ギリギリ回っている。余裕がある状態ではない。」
- 電通で、22時にビルを消灯させてはいるが、実際には隠れて仕事してるんじゃないか?と言われている事例と少し似ているかな・・・とも思いましたが、締め切りを守るためには、労働時間を減らせない実情もあるようです。結局「働き方改革をやれ!」と号令はかかっているようですが、改革はできていない状況なんですね。
★働き方改革で重要なのは・・・
一方、インターバル制度を掲げているわけではありませんが、長時間労働が見直され働き方改革ができている方々の声も聞けました。いったいどうやったら改革できたのか?上司、部下の立場それぞれの声です。
- ある上司の証言
- 「定時に部下を返さないと僕らの成績が悪くなるんです。みんな17時半に帰ってますよ。チームとしての最大のアウトプットを出すために、誰に仕事を割り振ったほうがいいかを判断するのが僕達の役割。今この人に集中してるなと思ったら引っぺがしてでも他の人にやらせることを心掛けて、効率化してます。」
- 別会社の部下の証言
- 「僕ら小売りなので、お店の外で普段仕事してるんですけど、どうしても事務作業も出てくる。その内容が慣習的で面倒くさい。例えばメモ書きは、紙で残したのにパソコンでも残したり、もう一個別で残してとなってしまう。そういうムダな作業は減らして、パソコンに統一したら、30分は時間が削減できました。社長もそういう声は拾って、変えてくれるので、その面でやりやすい会社です。」
- お二人が話してくれたのは、職場内で仕事を分担していくこと。また、なるべく無駄な仕事時間を減らすこと。両者とも、上司が現場を見た上で改善を進めている事例でした。
- 結局、仕事の量が減るわけではないので、コストをかけるのか、工夫してムダを減らすのか、というのが現場から見た働き方改革と言えそうです。ただ単に「○時に帰るように」と指示するだけでは、改革は進まないようです。

田中ひとみが「現場にアタック」でリポートしました!