変化の激しい時代にあって「長く変わらないもの」が改めて評価される出来事がありました。「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!今日5月10日(月)は、『長く変わらないもの。変えない、に込めた思い。』というテーマで取材しました。
★96年変わらない「救心」!
変わらないもの。まず一つ目が医薬品の「救心」。実はこの「救心」という商品名が「2020年日本ネーミング大賞・優秀賞」を受賞しました。そこで、救心製薬が「変わらない」ことに込めている思いについてのお話を伺いました。救心製薬株式会社・代表取締役社長の堀厚さんです。
- 堀厚さん
- 「大正14年に、特に心臓によく効く薬として「救心」を開発しまして、元々は「堀博愛薬房」という名前の会社だったんですけれども「救心製薬」に変えたという。もう本当に、弊社にとっては、商品が受け取ったというよりは、もう会社全体で受け取ったっていうくらいにありがたいことだなと。まさしく一体になった商品であり会社ですね。もともと、この救心っていうのは生薬でできたものなんですけれども、この生薬自体、もう二千年近く使われ続けてきている伝統的なものですので、そういったことも含めて、製造であったり、パッケージであったり、名前に関しても同様に「救心」という名前を大切に育ててきて、サウンドロゴの「♪救心、救心♪」っていうのが加わったことによって、よりイメージが定着して。そうですね、やはりそういう意味ではやはり名前は大切で、同じものを同じように作り続けているという安心感も一つなのかなと思いますね。おそらく最初の頃は、試行錯誤で変えたいと思った時期もあったとは思うんですけれども、やはり粘り強く、これは良いと信じて、繰り返し繰り返し浸透させていくっていうのも、大事だったのかなとは思いますね。」
創業は1913年!その当時万能薬として作っていたのが「ホリ六神丸」。これが心臓に特に効くと言われ、創業者の堀正由さんが、処方を改良し、1925年、大正14年に生まれたのが「救心」。
以来96年間、広く慣れ親しまれていること、「どうき・息切れ・気つけ」という「薬の効能」が一目瞭然の名前であること、などが評価され、ネーミング大賞・優秀賞を受賞しました。「救心」ができて社名も「救心製薬」となったため、今回のネーミング大賞は、非常に感慨深いものがある、と堀社長はおっしゃっていました。
同じものを同じように作り続ける。変えないことで安心を伝え、伝統を守っていく、まさに老舗の矜持を感じます。
★60年変わらない、あのコマーシャル
もう一つは、こちら。
カステラの文明堂のテレビコマーシャル。子熊のラインダンスのCM、これもずっと変わらないですよね。カステラの文明堂は、今年で東京進出100年目ということで、その半分以上の60年をこのCMと共に歩んでいます。株式会社文明堂東京・広報担当の長谷川拓也さんのお話です。
- 長谷川拓也さん
- 「1962年から放送しているものになりますね。5匹の子熊が当時はモノクロでダンスしていたものだったんですけれども、それがカラーのテレビに変わった時代に、ベージュの子熊ちゃんになってみたり、紫色の子熊ちゃんになってみたり、あとはペンギンになってみたり、実はちょこちょこマイナーチェンジをしていますが、1994年に変えて、カラー版でリメイクバージョンをやって、それ以降は全く変わっていないんですけども、やっぱりお客様から、変えないで欲しいっていうお声が、あの子熊が踊っているCMを見ないと子供が寝ないから、だったりとか、あのCMが見たい、っていうお声が上がってきたっていうのが一つですね。」
少し変えると、お客さんから「変えないで!」と声が上がるのです。そこで、もう1994年からは全く変えていません!
そして、もう一つの変えない理由は、実はカステラは今も昔も原材料は変わらない。そういう安心安全な素材で作って届ける、という気持ちは変わっていませんという、メッセージでもあるそうです。
★年賀状みたいなものなんです!
しかし、時代は変わりSNSで売れるものもたくさんあるし、文明堂も新商品だって発売します。コマーシャルを新しくして、お客さんの新規開拓した方が売り上げが上がりそうではないですか?と長谷川さんに聞いてみました。
- 長谷川拓也さん
- 「今、100年、まもなく東京進出から経とうとしていますけれども、そのさらに100年を見据えたときに、新しく開拓していくというのは間違いなく必要なことなので、それはそれでやりつつも、いま来ているお客様っていうのが私たちはメインではあるので、そういったお客様を大事にするっていうところは、絶対外してはいけないことという意味合いを持って、「変わらない」という選択肢を取っておりますね。そもそも「このCMを見たから買いました」っていうのは分からないというのが正直なところで、とはいえこのCMを手放したくないのは、今のお客様とのつながりを大事にしたいと言うところが第一なので、そういう意味では、そこは売り上げとはまた別の視点で見るものだな、という風に考えていますね。」
売り上げに直結しなくても、新商品が出ても、あのCMは変えない。あの音楽とあの子熊で文明堂と分かってもらえる、ある意味すごい浸透です。老舗だからこそ、長い付き合いの手をしっかり握る、あのCMは「年賀状みたいなもの」。慣れ親しんだ方へ「元気にやってますよ」みたいなものが伝わると嬉しいと、長谷川さんは話していました。
「救心」という名前も、文明堂のCMも、長いこと変えないで「同じものを同じように作り続ける」。この強みというものがあるんだな、と改めて感じました。