国土交通省が、交通事故につながる恐れがある「危険なバス停」の数を発表しました。横断歩道などがバスの死角になるなどのケースなのですが、関東では、神奈川県が732箇所でワースト1位。全国で見ても、静岡についで2番目に多い事が分かりました。
この問題、どうしたらいいのか?6月9日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で竹内紫麻キャスターが取材報告しました。
危険なバス停の数が多いという問題。当然、神奈川県にとっては衝撃的だったのですが、それは危険なバス停が多かったからだけでなく、他の県よりも危険なバス停対策に取り組んでいたということもあったようです。横浜市営バスをを管理する市の交通局自動車本部営業課長の小島健治さんのお話しです。
★市営バスは「危険なバス停」対策をしていた
- 横浜市交通局自動車本部 小島健治さん
- 「神奈川県警察の方で、平成30年11月に安全対策が必要な停留場っていうのを公表しまして、これを対象に対策を進めてきました。こちらは令和2年度末までに、全て対策を終えることができています。平成30年8月に、市営バスを降りた小学生はですね、道路を横断した際に、対向の軽ワゴン車にはねられて死亡するという事故がありました。この事故が発生した場所はですね、バスが停留所に停車した際に車体が横断歩道にかかる状態だったんです。こうしたことからですね、安全対策が必要な停留所、その全ての停留所で、停留所の移設等の対策をですね、講じています。」
そもそもなぜ、こんな危険なところにバス停があるかというと、バス停のあとで住宅開発が進んで、後から横断歩道ができたケース、あるいは、住民の利便性のため、狭い道に作らざるをえなかった、など理由はさまざまあります。
ただ、そのバス停の位置によって、バスが停車した時に横断歩道が死角となり、実際に事故が起きてしまった、そのため、県警と協力してバス停の移設などに取り組み、昨年度には、一応、対策を終えたとしていたそうです。
ところが、国土交通省の発表では、県内に732箇所も危険なバス停があり、そのうち115箇所は、市営バスの停留所だったそうです。
全部対策をしたはずなのに、115箇所も危険なバス停が残っていたのはなぜか?再び小島さんに伺いました。
★なぜ「危険なバス停」が増えたのか
- 横浜市交通局自動車本部 小島健治さん
- 「県警察の方は、バスが停留所に停車した際に横断歩道に近接する停留所が対象となって居ます。一方のですね、国土交通省の調査で対象となっていますのは、横断歩道に車体がかかる停留所に加えまして、横断歩道の前後5mの範囲に車体がかかる停留所、それから、交差点に車体がかかる、あるいはですね交差点から5mの範囲に車体がかかる停留所も対象となっています。非常に多くの場所が対象となっていますので、これまで取り組んできた経験を活かして、なるべく早く、対策を高じていきたいと考えています」
県警の基準より、国の基準の方が厳しかった、そのため、「ここも危険バス停ですよ!」と指摘されてしまったようです。
確かに比べてみると、県警は、バスが横断歩道に近接しているところだけ。
一方、国は、横断歩道の前後5m、さらに交差点に近いところも危険だとして改善対象。歩行者としては、こちらの方が安全に感じます。
今後は改善が必要ですが、バスの停留所を移設や設置をする際、その場所の前にある住宅や店舗など、地権者やその場所の住民の了承を得る必要があります。例えば騒音やごみのポイ捨て問題などを危惧して断られるケースも多く、適切な移設先を探すのも簡単ではない。その上でまた交通管理者、道路管理者の了承も必要。時間はかかるようですが、小島さんは「なるべく早く」としていたので、改善が待たれます。
ただ、この一方で、もう一つ解決に向けて重大な点があるとの指摘も。交通関係に詳しい東洋大学 教授 岡村敏之さんのお話しです。
★バス停を移動すればいいわけではない!
- 東洋大学 教授 岡村敏之さん
- 「今高齢化が進んでいますので、バス停まで歩いていく道のりが短い、またバス停から降りて目的地まで行く道のりが短いと、これとても大事なことなわけです。危険なバス停というのは別な言い方をすると、そこにバス停があると大変バス停の利用者にとって良いと、だから実はそこにバス停があるわけですね。それを置いてきぼりにしてどっか遠くでしましょうと、これは本末転倒ということも、これは今後起こりかねない。今までバスの側また乗客の側が問題がある。だから気をつけてくださいね。バス停を移設しましょうでしたが、事故のほとんどは、バスを追い越そうとする、または対向する自動車によって引き起こされている。ですので、次の段階は、地域の人やドライバーさんも含めて何とか対応していくということが大事かなと思っています。」
利便性とリスクのバランスをどうするか?県警の基準と国の基準の違いも、このバランスの違いにあるのかもしれません。
もちろん、危険を放置せず改善する必要はありますが、地権者の許可が取れた場所が遠い場所だったとなると、高齢化社会の足としては不便になるので注意が必要。また最終的には、バス停で後ろからの自動車が追い越すケースを注意しないと事故は無くならない。
「ただ動かす」だけでない対策が必要で、自治体、バス会社、ドライバー全体の協力が必要になってきているということでした。
本来、横断歩道付近に停車しているバスを追い越す際は一時停止するのが道交法のルール。ドライバーの皆さんは注意が必要です。