今月6日、オランダの「ルー・オッテンス」さんが、94歳で亡くなりましたした。どういう方かというと、この方、カセットテープの発明者!音響機器メーカーフィリップス時代に開発したというカセットテープは、音楽の聞き方を変え、世界で累計1千億本も売れた、と言われていますが、きょうは、ここ数年、人気が復活しているカセットテープについて、3月18日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
カセットテープ人気、さらにここへきて、価格や売られ方に変化が出てきました。中古用品店、「ハードオフ」奈良橿原店(かしはら)の副店長、五十嵐海里さんに聞きました。
★1本1万円超のメタルテープも
- 「ハードオフ」奈良橿原店・副店長 五十嵐海里さん
- 「特に「メタルテープ」の価格が高騰していて、1本2〜3千円で出してる物や、中には1万円を超えるテープもある。当時発売されたときは、1本200〜300円の物もあった。それが、メタルテープが2001年に販売、製造終了していて、そこから価格が高騰して今の値段に。1ヶ月の間で、100本ほどメタルテープが売れている。これほど売れてるっていうのは(人気が)再燃していると感じる。」
![森本毅郎スタンバイ!](http://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2021/03/IMG_3868-533x400.jpg)
こちらは「ノーマル」のカセットテープ
カセットテープは大きく分類すると「ノーマル」「ハイポジション」「メタル」の3種類あり、音質が異なります。中でも、上位規格の「メタル」は、当時、若者の憧れにもなりましたが、国内製造が終了しているので、手に入れたければ中古品を買うしかありません。
この店舗では今年に入り、未使用のメタルテープを70本、入荷(たまたま個人のお客さんが大量に持ち込んだそうです)。TDKなどのメタルテープを、1本およそ3千円で販売。さらにソニーなどのレアものになると、1本2万円近い価格で販売している店舗もあるようで、それでも、比較的若い人が見にきたり、実際に売れ行きも好調のようです。
★プレイリストを書き込んだインデックスカードはそのまま
この店のように、中古のテープは「未開封」で売られている事がほとんどなのですが、一度誰かに使われた、正真正銘の中古テープを売っている全国でも珍しい店が、渋谷にありました。「DESIGN UNDERGROUND SHIBUYA-BASE」の店長で、家電蒐集家の、松崎順一さんのお話です。
- 家電蒐集家・松崎順一さん
- 「テープに入ってる音は、著作権が発生するので、一度全部、音を消去して、中古だけどブランク状態にして販売。ただ、当時使ってた方の「書き込み」や「ラベル」はそのまま販売している。当時は、一曲一曲ダビングしていたので、非常に拘って一本一本作っていた。好きな曲順に並べてライブラリを作ったり、市販のミュージックテープレベルまで綺麗にタイトルを書いたり、熱量が伝わってくる。それを見て盛り上がっているお客さんも、結構いる。」
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「DESIGN UNDERGROUND SHIBUYA-BASE」(東急ハンズ渋谷店1Bフロア)。カセットテープや、整備済みのラジカセや、中古のミュージックテープなどを販売
カセットを使う人は高価なレアなものを求めるマニアの方ばかりではなく、今でも、音楽を録音したり、歌や演奏を録音したり、あるいは家族の話を録音したり、ニーズはあるようです。しかし生産量は、最盛期の50分の1とも言われ、カセットテープは貴重になってしまいました。そこで出てきたのが、中古の、音を消した「生カセットテープ」。
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一度誰かが使った、カセットテープの中古品。新品未開封で売っている中古ショップが多い中、こうした形で販売するのは全国でも珍しい。
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著作権の問題があるため、音声は消去されています
ユニークなのは、カセットのラベル、インデックスカードはそのまま売っていること。
「カーペンターズベスト」と書いてあっても、ベスト盤のレコードのベストではなく、前の所有者が自分で選んだベスト集だったりして、見た人は「自分と同じ好みだ!」など楽しめる。書き方も凝っている人もいて、私はMD世代ですが、CDのジャケットと同じ絵をラベルに描いたり、凝る方だったので、共感するものもありました。
実際にお店に行って、一本、買ってきました。1本のテープの中に、「中島みゆき」「森繁久弥」「北島三郎」。元所有者のカオスなこだわりを感じます。
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「中島みゆき」「森繁久弥」「北島三郎」3人のベストアルバムになっていました
★「聴き放題」へのアンチテーゼ
でも不思議なのは、今は、スマホがあれば、サブスク=定額制サービスのアップルミュージックや、スポティファイなどで音楽は「聴き放題」。何かを録音するとしても、スマホがあれば十分な時代ですが、なぜ、今カセットテープなのか。松崎さんは、こう分析しています。
- 家電蒐集家・松崎順一さん
- 「好きな曲を簡単に聴けるようになった「アンチテーゼ」のようなものを感じる。海外のアーティストが、カセットテープで、アルバムや楽曲をリリースする方が、ここ4〜5年増えている。アルバムを最初から最後まで聴かないといけない。「こう聴いて欲しいと」いう思いがアルバムに入ってるので、ストレートにリスナーに届けるには、レコードやカセットテープが一番じゃないかと、アーティスト自体が再認識しているのでは。」
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家電蒐集家の松崎順一さんに聞きました
レディー・ガガなど、人気アーティストがカセットテープで作品を発表しています。曲順もそのままに、作者の意図をそのまま聞いてもらえるというので、アーティストが使い、ファンも受け止める、そうしたところから、カセットテープが再び広がっているようです。