今日はブルーシートのリサイクルのお話。先日も大きな地震がありましたが、地震や台風、豪雨など災害の際にも活躍するのがブルーシート。なんとなく、当然リサイクルされているんだろう、と思っていたのですが、意外にも今まではリサイクルされていなかったのです。そこで・・・。
「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」!!今日2月22日(月)は、『意外と難しいブルーシートのリサイクル。めざすは、水平リサイクル!』というテーマで取材しました。
★年間使用量は東京ドーム8500個分!!
そんな中、国内最大手ブルーシートメーカーがリサイクルを目指して動き始めました。
その会社、「萩原工業株式会社」産業資材事業部・営業部長の三宅啓介さんに、ブルーシート・リサイクルの現状を伺いました。
- 三宅啓介さん
- 「年間にですね、東京ドームでいえば約8500個分くらいのシートを日本国内で消費してますので、今までは、より長い期間使えるシートを販売することで廃棄物の量を減らすという考えで進めてきたんですが、やはり作る責任ということで、作って回収するということに今回着目しました。使い終わったシートを回収して、それをリサイクルするという技術が非常に難しくてですね、いままで手をつけてませんでした。ペットボトルの場合は、飲み終えたらすぐ回収、ということは樹脂の劣化が進んでませんので、リサイクルしやすい素材かと思います。ブルーシートの場合は、屋外で長期間使用しますので、洗うことと傷んだ素材をいかにして新品同様に回復させるか、やはりその辺が違ったところになりますね。」
日本国内で、年間に東京ドーム8500個分も使われてるんです!すごい量ですね。ブルーシートは、災害時だけでなく、建設・土木・農業などの分野で安定的に使われていますからね。およそ4万3000トン以上のシートが使われ、それがほぼ廃棄されています。
萩原工業は、長く使える高品質のシートを作り廃棄物の削減に取り組んできました。しかし、ついに、廃棄物自体を減らさねば!とリサイクルに着手しました。目指すは水平リサイクル=ブルーシートをリサイクルしてブルーシートにする。ペットボトルと同じです。
しかしこれが簡単じゃないんです。
★再生の過程で、劣化した樹脂の改質をする技術を!
使ったシートを、洗って、原料の樹脂に戻して、新品に作り直す、のですが、どの工程にも課題があるのです。
- 三宅啓介さん
- 「使用済みのブルーシートになりますので、土などの汚れとあと紫外線による劣化などが激しいので、樹脂がもうボロボロになってます。シートの中に入ってる織物の繊維が延び切って、つないだ手が離れていくというようなイメージですかね。プラスチック同士の手が離れることによって、要は穴が開きやすくなるっていう状態になっているのが使用品ですね。で、この、もう一回手をつなぎ直すことが、非常にいま、難しいです。その中でですね、樹脂を溶かして再生する過程で、要は樹脂の改質を行う技術を、いま目指してます。あと、もう小さい砂ぼこりでも混ざりましたらリサイクルができない、というのが課題ですね。レジャーシートくらいの大きさであれば家庭でも洗って頂けるんですが、やはり大型サイズになりますので、そこの完全なる洗浄っていうのが難しいですね。」
洗うだけでもひと苦労なのです。萩原工業は劣化していない、汚れていないものから、元のブルーシートにリサイクルする技術は確立できています。
ただ、日光や風雨にさらされたシートは、製品を溶かして樹脂に戻した時に、原料として劣化しているので、品質要件を満たさないシートにしかならない。
そこで、溶かして再生する過程で、劣化した樹脂のグレードを上げる、という技術の研究に、横浜の企業と提携し、乗り出しました。「プラスチック同士の離れた手をつなぎ直す」技術に、期待が高まります。
ただ、これは非常に難しい技術で、3~5年くらいの時間を要する、と三宅さん。
★回収システムの構築も難しいんです!
まだ少し時間がかかりはしますが、この技術ができれば!と思ったのですが、もう一つ課題があるんです。
- 三宅啓介さん
- 「この技術の確立と同じくらい回収というのが難しいと我々は思ってるんですが、ペットボトルのように使用頻度が多ければ、コンビニさんとかで回収ができるんですが、そこまで流通してない、というのも回収の難しい電になります。我々の販売先、各地のホームセンターさん、あと建設会社さんなどの全国のネットワークを活かして、あとは、やはり自治体さんと災害時にブルーシートを円滑に供給できる協定を結んどりまして、災害が収まったあとに自治体さんが回収されたものを我々がリサイクルすると。一年くらい前からお声がけはしてるんですが、「難しいな」「やったことがない」というのが大半の声でした。やはり、販売先さんのご協力なしでは、我々一社だけでは出来ないこのシステムだと思ってますので、粘り強く交渉しながら、やっていきたいと思ってます。」
回収のシステムの構築も、大きな課題です。使用後のボロボロになったシートは今までは業者が分別して産廃に回っていましたから、それを捨てずに戻してください、というのは、手間もかかるし難しい、と思われるようです。
しかし、今までの売りっぱなしを返上する働きかけを粘り強くやっていきます、と。
国内ブルーシートの使用量のうち、萩原工業の比率は1割弱。自社のものを中心に、海外のものも含めて回収し、年間5000トンを目指すそうです。
災害時などに強い、高品質の萩原工業のブルーシートは、日本国内だけでなく、全世界で販売されています。その会社が初の技術で水平リサイクルを成功させることは、重要な責務、と三宅さん。なんとしても確立していかなければ、と話していました。
使う時は大変ありがたいと思って使っているブルーシートですが、今度は使い終わったらそのまんまでは、申し訳がたちません。ですから、このリサイクルへの回路というものをできるだけみんなで協力して作ってほしいですね。