感染爆発で、2度目の緊急事態宣言へ…となってしまったコロナ禍。長引くコロナ禍で生活苦に陥る人が増え続けている現状について、1月7日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
困窮者している方々の実態はどうなのか?この年末年始、支援活動を行なったという一般社団法人「つくろい東京ファンド」の代表理事、稲葉 剛さんに聞きました。
★想定外の人数が押し寄せた「年越し大人食堂」
- 一般社団法人つくろい東京ファンド・代表理事 稲葉 剛さん
- 「12月31日に池袋で臨時の相談会を屋外で開催。1月1日、3日に「年越し大人食堂」とネーミングし、弁当の配布や、生活や医療、法律の相談会を開催した。相談に来た人の話を聞くと、失業して半年が経ち、食事も2日に1回という方や、お子さん連れで来た方は、子供にご飯を食べさせるのが精一杯で自分も食べる物に苦労している方もいた。残念ながら、日本の国内で飢餓が広がっている状況。」
年末年始は、役所の窓口が閉まっていたり、日払いの仕事も休みに入ってしまうので、元々、困窮する人が増える時期でもあります。それに加え、今回の年末年始はさらにコロナの影響で困窮している人が急増している状況なので、首都圏の支援団体同士がネットワークを組み、各地で集中的な支援活動を行いました。
実際、想定以上の人数が訪れたそうで、大晦日に池袋の屋外で行われた相談会には、およそ100人が参加。また、年明けに四ツ谷の教会で行われた「年越し大人食堂」には、1月1日は270人、1月3日には300人を超える人がやってきたそうで、生活苦からの相談件数はリーマンショック以上ということです。「飢餓が広がっている」「社会の底が抜けてしまった」 と、稲葉さんは、ショックを受けていました。
★若年層も困窮
また、支援を求める人にも変化があって、深刻化しているようです。
- 一般社団法人つくろい東京ファンド・代表理事 稲葉 剛さん
- 「コロナ以前は路上生活者の支援活動を展開。60代以上の高齢者の方が主な支援対象者だったが、昨年春以降は20〜40代の若い世代の相談が急増。第一弾は、春の緊急事態宣言でネットカフェにいる人たちが路上に押し出されたが、秋以降は不況が長期化した結果、家賃が払えなくなり追い出され、路上生活になってしまう。生活困窮者の相談件数の増え方が、コロナの感染者数の増え方に比例している。そして更に緊急事態宣言が発出されることが確実になったので、貧困の現場でも一番大きな波が来ている状況になっている。」
コロナ以前は路上生活の方が中心。
コロナ後、最初は、住む部屋がなくネットカフェに寝泊まりしていた人たちが、緊急事態宣言でネットカフェが休業要請されたことで、路上に追い出されてしまいました。
それが今は、住む部屋があったのに、生活苦になって部屋を追い出され、路上生活に陥ってしまう人が出てきているそうなんです。建設業を中心に日雇いや派遣の仕事が減ったのに加え、飲食店やホテルで働く、非正規労働者。さらには、スポーツジムのインストラクター、学習塾の講師、タクシードライバー、コンビニの店員など、あらゆる職種の人が、苦しんでいる状況でした。
★生活保護の問題
ただ「それならば生活保護があるのでは?」と気になったので、これについて聞いてみました。
- 一般社団法人つくろい東京ファンド・代表理事 稲葉 剛さん
- 「最後のセーフティネットである生活保護が使いづらい状況。生活保護には「水際作戦」という問題があり、一部の自治体で相談に来た人を追い返したり、たらい回しにするとことが頻発してきた。例えば「住まいを作ってから来てください」、「若い人は受けられません」と嘘の説明をして追い返す。ただその違法の運用が上司から部下に代々伝えられていて、役所によっては法律よりも慣習の方が実質上になってしまっている。そうすると、どうしても入口で堰き止めようという動きになっている。」
この「水際作戦」とは、役所が、保護費を抑えるため、相談窓口でなにかと口実をつけて申請を受け付けない行為です。
では、なぜこんなことになっているのかと言うと、「生活保護の不正受給」を防止しようとして、役所が窓口の対応を厳格化したのが始まりで、2013年の改正生活保護法に保護費の抑制が盛り込まれると、この不正受給の防止を口実に、正しい申請も受け付けないような妨害へと悪化していったということ。もちろん、憲法で保障された生活保護を受ける権利の侵害で、裁判で「違法」となっています。
稲葉さんによれば、生活保護の申請は、必要としている人の2〜3割に留まっていて、その背景にはこうした水際作戦があり、さらには、生活保護を受ける人への社会の冷たい視線もあるそうで、こうした生活保護の環境を変えていかないと、と話していました。