埼玉県内の介護事業所でのクラスターが相次いでいます。11日にも、越谷市で、市内の通所(通って利用する)介護事業所で、従業員と利用者、計10人が感染したことがわかりました。事業所でクラスターが相次ぐ事態を他の事業所はどう受け止めているのか。11月18日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で取材報告しました。
神奈川県の介護事業所「よりどころ和泉」の取締役、長谷川大矩さんに伺いました。
★通所介護事業所の感染リスク
- よりどころ和泉 取締役 長谷川大矩さん
- 「今回、埼玉でのクラスターを受けて、私も正直危機感を感じています。介護サービスって色々種類があるんですけど、老人ホームみたいな住むサービスのところであれば、利用者さんを外出させなければ、ある程度感染を抑えられます。だけど、デイサービスってなると、利用者さんも外に出ますし、職員ももちろん外に出ますし、老人ホームに比べると感染リスクって非常に高いんですね。私達も同じような事業形態だったので、そう言ったところで、前より危機感を感じているって所です。どうしても、接近せざるを得ない仕事なので、3密は正直守れないって言うのが現状です」
埼玉県、神奈川県と県は違いますが、今回クラスターが発生した越谷の事業所と同じような事業形態であるため、危機感を持ったと。結局、デイサービスは「通う」形態なので、職員も利用者も、出入りが多く、どちらも媒介者になり安い。さらに介護の仕事はおトイレやお風呂など「密」が避けられない。どうにも防げない環境なので、危機感は強いそうです。また、大変な時期を乗り越えたかに見えた今だからこそ、よりショックを受けたという面もあるようです。再び長谷川さんのお話です。
★利用者だけではない、職員側の葛藤も
- よりどころ和泉 取締役 長谷川大矩さん
- 「4月5月ですね、職員側からは「辞めたい」っていう話があって、利用者さんにうつしてしまうかもしれないとか、もしうつした時に自分がバッシングされちゃうとか、どうしてももう辞めたいと。で、私たちがその利用者さん投げ出したら誰が見るの?そこは一緒に足並みに揃えましょうよ?というところで、しっかり納得してもらって今も就労してもらっています。利用者さん側からも、利用しませんという形でデイサービスお断りされるケースが結構あったんですね。そうすると私たちも収益が20%ぐらい落ちて、何とか資金繰りを今までやってきたっていうところです。それが、9月10月になってコロナの新規感染者っていうところも減ってきたので、じゃぁここからやって行こうっていうところで第3波があったので、またかというのが正直な印象。」
職員からは、泣きながら「辞めたい、自分が利用者にうつしてしまったら、この先どう生きていけばいいのか」と相談があったと。ただ、それで皆辞めてしまったら、体が不自由な一人暮らしの高齢者は誰も面倒見る人がいない。「最後の砦として我々がいるんだ」と説得して、退職の危機を乗り越えたそうです。
一方、収入では、一時は売上が20%減りましたが、この割合だと国からの補助金が出ない。貯金を取り崩してこちらもなんとか乗り切りかけた時に、この第3波。またかという気持ちもよくわかります。
この第3波の中で行政に何を求めるかと聞いたところ、「事業所を続けた方がいいのか、休業した方がいいのか、その判断を事業所の自己責任ではなく、統一的な指示を出して欲しい」と。勝手に休業したら高齢者を放り出した事になる、自主判断で継続して感染者を出したら「なぜ休業しなかった」と批判も来かねない辛い状況にあるわけです。
では、国や自治体はどうしたらいいのか?自身も社会福祉士で、介護に詳しい淑徳大学社会福祉科の結城康博教授に伺いました。
★今こそ支援を
- 淑徳大学結城康博教授
- 「まずデイサービスとかホームヘルプとか、高齢者のサービスをストップしてしまうのはまずいと思います。最初の感染が出始めた時に介護サービスを使わないことによって認知症の度合いが進んでしまって、未だに状態が戻らないという状況になっていますので、第3波によってサービスをまた使わないことで、さらに状態が悪化することを懸念しています。介護業界の経営が悪化してしまうと、介護サービスから撤退する事業所がかなり増えるんではないかと非常に心配しています。国や自治体は介護事業所を、補助金を増やして、サービスを撤退させない措置をとった方がいいと私は思います。」
事業を休業する、ましてや廃業に追い込まれる事態はダメだと。高齢者もコロナを避けて利用を控えると却って健康悪化する。といっても感染対策をしながら事業を続けるのは、お金もかかりますし、また人手も普段以上に必要。そこを支える必要があります。
そもそも介護業界はコロナ以前から経営難や低賃金、人材不足が指摘されていました。問題は、コロナではなく、今まで放置して来た国ともいえます。これを機に、本格的な支援体制が必要かもしれません。