「GOTOトラベル」を420万人が利用した、というニュースがありましたが、きょうは旅行業界の生の声について、8月27日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。
新型コロナウイルスで苦しんでいた旅行会社は、この「GOTO」で、現状少しは助けられたのか、株式会社HISの執行役員、赤尾昇平さんに聞きました。GOTOトラベルで回復の傾向はありますか?
★やっぱり全然「GOTO」していなかった
- 株式会社HIS・執行役員 赤尾昇平さん
- 「中々ほど遠い感じだと思います。みんな感染しないように予防している中で、積極的に旅行に出るという雰囲気はありませんし、実際に起きていることと、政府が打ち出していることには、相反している動きがあると思います。各県知事が毎日、報道で発表をしているのを見た時、積極的に旅行に行こうという雰囲気にはなれないのが実情なのでは。タイミングをもう少し遅らせる、少しずらして9月10月、そして感染者数が上がっているときには、それを減らすと言うことを、分けてしっかり対策をすることが必要だった。」
GOTOトラベルは無理があると本音を漏らしていました。
まず、コロナの影響で言えば、HISは、海外旅行の扱いが多いので大打撃なのですが、一方、GOTOトラベルが助けるはずの国内も、なかなか「みんな旅行に行くマインドにならない」と。近くへの旅行は少し動きがあるものの、結局、距離があるところに行くのは躊躇する人が多い。やはり、もう少し、感染者数が収まるのを待ってからでも良かったのでは、、、と厳しい指摘でした。
GOTOトラベルで回復できないならどうするのかと思ったのですが、HISグループは、旅行ではない、別の分野に力を入れていました。それは電気。電力自由化で参入した新電力「HISでんき」で勝負しているということです。
★「電気」のきっかけはハウステンボス
でも、どうして旅行会社のHISが「電気」なのか。ずいぶん唐突だと思ったので聞きました。
- 株式会社HIS・執行役員 赤尾昇平さん
- 「ハウステンボスが経営危機を迎えた中で2010年、我々が再生として入ったが、お客さんを呼んで売上は上がったけどコストが膨れ上がった。その中の一つに「電気代」があって、ハウステンボスのテーマパーク内のエネルギーコストの削減に、まず着手していった。それから確か15〜20%位は徐々にコストの圧縮ができるようになってきて、これは一般の方々にも広げて行こうと。安くてお得に、今までと違う電気を利用してもらうビジネスが大きくなったのが始まり。きっかけは、ハウステンボスの再生でした。」
赤字続きだった長崎県のテーマパーク「ハウステンボス」の再生で、目を向けたのが、園内の「電気代」。そこで「HTBエナジー」という電力会社を設立し、九州電力から、自分の電力に切り替えた結果、およそ15%、大幅な電気代の節約に成功したそうで、それならばと、今度は「HISでんき」というブランドで全国にも広げて、儲けようとして始まったという流れでした。
実際いくら安くなるかは、HISでんきのHPでシミュレーションできる仕組みになっています。また、現在は「GOTOトラベルキャンペーン」ではなく「0円でんきキャンペーン」として、新規契約で、いくつか条件を満たせば、電気代が「1ヶ月0円」になるそうです。
▼「HISでんき」料金シミュレーションはこちら
https://htb-energy.co.jp/simulation/
赤尾さんは現在、HTBエナジーの社長も兼務して電気を売っているそうですが、旅行会社に就職して電気を売るとは思っていなかったということでした。
★「観光立国」のリスクが顕在化
では、肝心の旅行はどうなのか?GOTOトラベルはともかく、回復するのか?聞いたところ、赤尾さんは「いつか必ず旅行は復活する、人は戻る!」と強く断言していましたが、一方で、こんな危機感もあるようです。
- 株式会社HIS・執行役員 赤尾昇平さん
- 「今まで90%以上旅行ビジネスに頼っていたので、もう少し分散させる。「新規ビジネス」のアイデアを社員から募って立ち上げていこうという動きが、盛んに行われている。でも、これが生まれてくるというのは、最大の「危機感」。もしかしたらこの先1年位旅行が戻らないかもしれない。最大の危機感の表れが、この動きになっているんじゃないか。私自身はHISに籍を置きながらエネルギー事業の担当なので、この分野で大きく成長させて、サポートできるよう成長させなければいけないと思っている。」
結局、新型コロナウイルスが収束しても、また新しい感染症が出て同じことになるかも。観光産業は、レジャー1本のところが多く、各社、苦労しています。先日出た鉄道大手の4~6月期の連結決算では20社すべてが最終赤字でしたが、鉄道・ホテルなど結局「レジャー」一本であるための大打撃。ついこの前までは「観光立国」と言っていましたが、一本足打法からの多角化が進むかもしれません。